日本ファルコムより2023年9月28日に発売されるPS5/PS4/Nintendo Switch向けアクションRPG「イースX -NORDICS-」のプレイレポートをお届けしよう。
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本作は1987年に1作目が発売されてから、現在に至るまで続く「イース」シリーズの最新作。各タイトルが「冒険家アドル・クリスティンが遺した百余冊にのぼる冒険日誌のうちの一篇」という設定になっており、知っていれば楽しめる繋がりもあれど、過去作を知らなくても、どの作品からプレイしても問題ないという特徴を持っている。
ゲームのナンバリングと時系列が対応していないのも特徴のひとつで、「イースX」のアドルは「イースI&II」に次いで若い、17歳の設定。直近のシリーズよりもずいぶんと初々しいアドルと、同い年の少女・カージャのふたりを操作して、大海原を股にかける冒険をくり広げることになる。
筆者は「イースVIII -Lacrimosa of DANA-」のSwitch版ではじめてシリーズに触れてそのおもしろさに魅了され、前作である「イースIX -Monstrum NOX-」も、それに勝るとも劣らないお気に入りタイトルとなった。
シリーズファン歴は短いが、近年の「イース」シリーズに共通する開発思想や、ナンバリングごとに行われる革新については、かなり好意的に捉えているファンと言って間違いないだろう。そうしたファンのひとりとして、「イースX」がどのように映ったのか、参考にしていただければ幸いだ。
なお、今回のプレイにはPS5版を使用。プレイ範囲は第1部~第3部の終盤までで、ここまで進めるのに掛かった時間は6時間ほど。また、あまりゲームで初プレイ時にデフォルトの難易度を変更しない筆者だが「イース」シリーズは以前から難易度ハードでプレイしており、今回も同じようにハードでプレイした。それで問題なく楽しめたので、難易度調整は、直近2作のものを踏襲していると思ってよいだろう。
ストーリーの直接的なネタバレは避けているが、まっさらな状態で「イースX」をプレイしたい人は注意して読み進めてほしい。
粗暴ながら強く気高いカージャは性別問わず人気を集めるキャラクターになりそう
旅に出たアドルと相棒のドギ、そして医師のフレアは、とある事情でグリア地方の港町“カルナック”へとやってくる。本来、ロムン帝国支配下の地域にありながら、北の地からやってきた荒くれ者たちにより結成された組織“バルタ水軍”が実質的に取り仕切っているという複雑な状況下に置かれているカルナック。町の人々はバルタ水軍を恐れる一方で、彼らのおかげでロムン帝国による支配を免れているといった恩恵もあるようだ。
今回、アドルの冒険のパートナーとなるカージャは、このバルタ水軍に所属し“海賊姫”と恐れられている人物。部外者には過激に見えるものの、バルタ水軍には彼らなりの流儀があり、カージャもまた、この流儀に従い行動している。時として荒事も厭わず、初登場時からRPGのメインキャラクターとしてはなかなかショッキングな行動を取る姿が強く印象に残った。
カージャなりに筋の通ったやりかたを重んじており、粗暴な態度の内側に秘めた優しさも持ち合わせている。だが、たとえば「乱暴だけどそれは不器用さの裏返しで、本当は心優しい女の子」のようなありがちなヒロインとして描かれるのではなく、アドルたちとは異なる文化の中で価値観を育んだ人物として“綺麗事だけでは済まさない”塩梅が、筆者には非常に好ましく感じた。
徐々に育まれていくアドルとの爽やかな信頼関係も、「こういう男女バディが見たかった!」と感じる人は少なくないはず。声優を務めるLynnさんの演技も、カージャの強さ、気高さをいっそう引き出している。性別を問わず人気を集めるキャラクターになるのではないかと、いまから発売後のプレイヤーの反応が楽しみだ。
カルナックの街や、のちに訪れることになるほかの場所で出会う人々も、個性的で魅力的な人物ばかり。それぞれに日々の生活があり、なんだかんだで縁が続いていて、互いを気遣い合う幼馴染や、価値観や利害の不一致による確執を抱えた人間関係も。前述のバルタ水軍を中心とした複雑な事情がさまざまな問題をもたらしている中でも、夢や目標を持っている者もいる。
アドルたちが立ち向かうことになる困難を退けるには、彼らの協力が必要不可欠になりそうだ。彼らとの親密度が上がることによるイベントの発生など、キャラクターたちの魅力を引き出し、愛着を湧かせてくれるゲームシステムは、今回も健在となっている。
そんなアドルやカージャにとって新たな脅威となるのが、不死身の存在・グリーガーだ。このグリーガーたちについてはネタバレを考慮して詳細を控えるが、こちらもアドルたちの好敵手として、とても魅力的な者が揃っているということは間違いなく言えるだろう。
「シンプルで爽快」に“クロスアクション”で奥深さが増した、集大成的バトルアクション
「イース」シリーズといえば間口が広く、爽快なアクションが大いなる魅力のひとつだ。「イースX」では好評だった「イースVIII」「イースIX」をベースとしながらも、さらなる変化が加えられている。
バトルアクションにおいて、より強く意識して設計されたと思われるのが、さまざまなアクションの“使い分けの重要性”。これにより、めまぐるしく変化する状況にあわせて適切なアクションを叩き込んでいく戦略性が向上しており、上手くキマったときの興奮も大きくなっていると感じた。
ここからいろいろと解説していくが、こと難易度ノーマルでのプレイならば、これらすべてをしっかり覚えて、適切に使いこなすほどの練度は必要ないだろう。くり返しになるが、奥深さはアップしているものの、間口の広い難易度調整という持ち味は、過去作をしっかり踏襲してくれている。
バトルにおける編成は、前作までの「操作キャラクター + NPC2名」によるパーティー戦闘から大きく変化。「操作キャラ=アドル、NPC=カージャ(もしくはその逆。ボタンひとつで交代可能)」の“ソロモード”と、アドル&カージャのコンビネーションをプレイヤーがまるごと操作する“コンビモード”を切り替える、新機軸の“クロスアクション”を導入。スピーディに動き回れるソロモード、強力な連撃&ガードでゴリゴリに攻めていけるコンビモードの使い分けがバトルを有利に進めるカギと言える。
実際にプレイして少々イメージと違ったのが、そもそもコンビモードは、ガード時に押し込むボタン(PS5版なら“R2”)を押しっぱなしにしている間中、発動し続けるという点だ。つまり、敵の攻撃から身を守るためにガードしたのなら、そのままスムーズにコンビモードによる威力の高い連撃やスキルがくり出せる。発動条件自体が攻防一体の戦闘スタイルということになる。
ガードの話題が出たところで、“敵の攻撃を防ぐ手段”についても詳細に言及しよう。過去作でタイミング良く入力すれば発動した“フラッシュガード”と“フラッシュムーブ”は決まると非常に爽快だったが、この2種類の使い分けがやや判然としていなかった。
「イースX」では敵によって通常攻撃のほか、攻撃前に赤いオーラをまとう“パワーアタック”と青いオーラをまとう“スピードアタック”を放ってくることがあり、パワーアタックはコンビモードの発動条件でもあるガードで防ぎ、スピードアタックはソロモードでダッシュをしていれば自動回避が行われる。ガードと回避の使い分けが、かなり意識的にシステムへと盛り込まれているのだ。
いずれも成功させれば敵にこのときしか使えない強烈な追撃をお見舞いするチャンスとなり、とくにガードをタイミングよく成功させたときに発生する“ジャストガード”後の追撃は非常に強力。ボス戦などでは、カットイン演出付きの一撃がくり出せる場合もある。いろいろと性能は過去作から変化しているが、こういった部分の手触りの良さにシリーズファンなら“これぞ「イース」シリーズ!”と改めて惚れ直すのではないだろうか。
なお、どちらかのHPがゼロになって倒された場合は、操作対象がもう一方のキャラクターへと強制的に変更される。倒れたキャラクターに近づいてボタンを長押しすれば、HPを分け与えて復活させることが可能だ。パートナーの復活は何度でも行えるので、劣勢の場合、全滅によるゲームオーバーを防ぐためには敵の様子をうかがいつつ複数回にわたり実行することになるはず。ただ、アイテムがなくなり回復手段がない場合、当然分け与えるHPも徐々に少なくなっていく。こういったジリ貧に陥らないための立ち回りが重要と言えるだろう。
レベルが上がることで新たに習得する“スキル”は、使用時に“SP”を消費する攻撃手段。習得したら、プレイヤー自身がいずれかのボタンにセットすれば、そのボタンを押すことでくり出せるようになる。
SPのゲージはアドルとカージャで別々に設定されていて、ソロモードで放つ個別のスキルのほか、ふたりともSPを消費するぶん、より強力なコンビモード専用スキル(コンビスキル)も用意されている。コンビモードでガードを成功させるほど“リベンジゲージ”が上昇し、ゲージが貯まっているとコンビスキルの威力が最大で2倍になるというシステムもある。最大威力のコンビスキルは効果絶大で、本作のバトル最大の華と言えるだろう。
敵にスキルでとどめを刺す“スキルフィニッシュ”なら消費SPが半分になるなど、カッコよくキメることがゲームシステム的にもアドバンテージになっている辺りは、過去作から引き継がれた部分だ。
ソロモード時にアドルとカージャのどちらをメインに操作するかは、少なくとも序盤は割と気分で決めてもいい印象だったが、突き詰めればいくつか判断の指標になるものがあった。ひとつは、一方でスキルを連発してSPが減っているならば、このSPが時間経過で回復するまでもう一方に交代するといった運用。これは過去作にもあったものだ。
もうひとつが、本作で新たに取り入れられた“耐久値”を削るための運用だ。耐久値はボス、中ボス級の強敵が持ついわゆる“シールド”のようなもので、これを削り切らなければ、HPに直接ダメージを与えることができない。HPを削るときの攻撃力は“STR(おそらくStrengthの略)”のパラメーターが影響するが、耐久値を削るときの威力は“BRK(おそらくBreakの略)という別のパラメーターが影響する。そしてこのBRKのパラメーターは基本的に、アドルよりもカージャのほうが高いようなのだ。
一方のSTRは、アドルのほうがやや高い模様。したがって「耐久値を削り切るまではカージャをメインに操作し、HPを削れるようになったらアドルで攻める」といった運用が有効になる。耐久値は一定時間で回復する場合もあるので、これにあわせてアドルとカージャを入れ代わり立ち代わり操作することになった。ここにソロモードとコンビモードの使い分けも関わってきて、強敵との戦いでの目まぐるしく変化する状況への対応は、アクションゲーム好きの筆者には堪らない楽しさがあった。
ちなみに、各スキルにもSTR、BRKが個別に設定されているため、アドルの固有スキルにもBRK値が高いものが存在する。筆者の場合は「BRK値が高いスキルはアドルとカージャで同じボタンにセット」して、どちらで耐久値を削る状況になっても、有効打を混乱することなく叩き込めるようにした。プレイヤーによって工夫の仕方にも違いが出るかもしれない。
レベルアップ時に“マナポイント”で能力を解放する“レリーズライン”というキャラクター育成における新システムは、活用法次第ではアドルとカージャの役割が逆転、もしくはほぼ対等にすることもできそうだと感じた。このあたりはさらにゲームを進めれば、プレイヤーごとに大きく異なる運用になる可能性を秘めており、まだまだ試行錯誤のし甲斐がありそうだ。
ソロモードとコンビモード、ガードとダッシュ、アドルとカージャ、STRとBRK……このように「イースX」のバトルアクションは、性質が分かりやすく異なるさまざまな“二択”の“使い分けの重要性”が強調されている。それぞれの判断が重なり合う状況も多々あり、すべてを完璧にマスターする必要はないものの、より良いプレイを目指したときの奥深さは、相当なものであると言えるだろう。
“マナアクション”でバトル・探索・謎解きのすべてがパワーアップ
本作にはバトルアクションに加え、縦横無尽な移動やフィールドギミックへの干渉など、さまざまな局面のゲームプレイに関わってくる新要素として“マナアクション”がある。ここからは、マナアクションのバリエーションとそれぞれのプレイフィールを、体験できた範囲で紹介していく。
“マナストリング”は、ターゲットのアイコンが表示された場所にマナでできた糸を引っ掛けて、遠くの足場に飛び移れる能力。また、敵に対して放てば一気に距離を詰め、攻撃に転じるといったこともできる。前作「イースIX」の“クリムゾンライン”に近いアクションだが、足場を移動する場合、マナストリングはスイングするように移動するのが特徴で、勢いを付けることでより遠くに着地できたりと、「イース」シリーズとしては新鮮な操作感が楽しめた。
“マナライド”はボードに乗って高速で駆け回れる能力。かなりの速度が出るが、非常に扱いやすい操作性で、気持ちがいい。水上を進めたり、“マナの流れ”に乗ることで、通常の移動ではたどり着けない場所を探索する手段にもなる。高速移動で敵の脇をすり抜けて進めたりと、バトルを避けて目的地に行きたいときなどにも活用できそうだ。
“マナバースト”は攻撃ボタン長押しでアドルなら炎、カージャなら氷をまとった強力な一撃を放つ能力で、バトルでも活用できるほか、ステージギミックを解くために使い分ける局面もある。
ほかに、普段は見えないものが見えてギミックを解くのに役立つほか、強化すると時間の流れをスローにする“マナセンス”という能力があることも明かされているが、こちらは今回プレイした範囲では解禁されなかった。「イースIX」の“ザ・サードアイ”に近い能力と思われる一方、バトルへの活用も可能になっているようで、ゲームプレイにどのような変化をもたらすのか、楽しみだ。
「イースIX」をプレイした人ならピンと来ると思うが、マナアクションは「イースIX」の“異能アクション“を、今作のコンセプトにあわせてアレンジした要素と言える。ひとつの大きな都市を舞台とした「イースIX」と異なり、縦方向も含めた立体的な移動の自由度は低めだが、工夫の凝らされた島々やダンジョンにおいて、バトル以外の探索・謎解き部分も含めた楽しさや工夫のし甲斐はパワーアップしていると感じられた。
それに、マナアクションの多くが「バトルにも活用できるもの」になっているのもポイントだ。バトルアクションと移動関係のアクションが完全に切り離されている印象を受けるゲームもある中、本作はその融合にも挑戦しており、この点でも一定の成功を達成していると思う。
退屈とは無縁、新鮮な要素がさまざま待ち受ける、帆船による大海原の航海
「イースX」の目玉となる新要素のひとつである、帆船“サンドラス号”による航海。これについては第3部の時点ではまだそこまで多くの要素は解禁できなかったのだが、その一端を味わうことはできた。広い大海原を探索するとなると、少々手持ち無沙汰になりそうな印象があったのだが、さまざまな工夫により、そういったこととは無縁だった。
まずは“船上会話”のバリエーションがかなり用意されており、登場人物の関係性や、世界設定の深掘りにつながっている。これをどういったタイミングで聞くか、それとも聞かないかというのはプレイヤーの自由。会話の途中で目的地に付いたりした場合など、あとで冒険日誌から聞き逃した部分をチェックできる親切設計も備えている。
船上会話に耳を傾けながら航海していると、海上に素材アイテムがあったり、船の速度が上がるエリアがあったりと、気になるものがいろいろ視界に入ってくる。これらをチェックしているうちに、退屈するヒマなどないまま、目的地についた。
海上に敵船がいた場合は“海戦”がはじまる。セオリーとしては、威力が低く致命打にはなりづらいが広い範囲で敵船を自動的にターゲットロックしてくれる“通常弾”を複数回撃ち込めば、敵船の移動速度を著しく低下させることができる。この間に敵船へと近づき、こちらの船の左右の狭い範囲に大ダメージを与える“EX兵装”をお見舞いしていくというものになる。
船体が大きく、そこまで機敏に動けるわけではない帆船で敵からの砲弾をかわしつつこれらをこなすには、敵との距離や互いの移動方向をきちんと考える必要があり、シンプルながらなかなかおもしろい駆け引きが楽しめた。強力な敵船には、耐久値を削ったあとにサンドラス号を近づけ、直接乗り込んでアドルとカージャで通常バトルを行う“アボルダージュ”を行う状況が発生することもあった。
サンドラス号はゲームを進めることで性能を強化したり、弾数制限のある“特殊弾”を装備することも可能になる。また、序盤ではストーリー上、必ず発生するイベント戦闘のようなものがほとんどだったが、海上の探索からシームレスに発生する海戦も増えていくと思われ、航海を刺激的なものにしてくれそうだ。これ以降のゲームプレイの拡張性に期待したい。
今回のプレイでは航海できる範囲に制限が加えられており、メインストーリーに沿っていくつかの島を行き来するだけだったが、これは「イース」シリーズがゲームにあまり慣れていないプレイヤーも快適に楽しめる体験を目指しているためだろう。移動範囲の制限は徐々になくなっていくものと思われるので、自由に気になる島を目指して航海するといった寄り道ができるようになると、この魅力はさらに増していくはずだ。
快適性の追求も抜かりなし。さらなる進化への挑戦を続けたシリーズの到達点
本稿では筆者がプレイしてきた「イースVIII」「イースIX」と比較しつつ、「イースX」に導入された新たな要素が、どういったゲームプレイをもたらしているかを中心に書いてきた。
一方で、制限なく全回復できる“刻印石”がチェックポイントとして絶妙な場所に配置されているとか、武器の強化や回復アイテムの作成などに必要な素材は、わざわざ収集のために駆け回らなくとも、基本的にストーリーを進めていれば十分な数が手に入るといった、これまでの「イース」シリーズが大事にしてきたユーザーフレンドリーでストレスフリーな設計もまた、バッチリと継承されている。“釣り”ももちろん楽しめるし、“迎撃”、“グリムワルドの夜”に替わる“奪還戦”にも期待できそうだ。
総合すると、「イースVIII」のゲームサイクルをベースにしつつ、「イースIX」で導入されたアクションの拡張性をアレンジして導入、そして根幹となるバトルアクションをさらに“深化”させ、大海原の航海というさらに異なるレイヤーの遊びもプラスした――というのが現時点での「イースX」の印象になる。
“シンプルで爽快”という点で過去作のほうが好みという人もいるかもしれないが、シリーズを重ねるたびにさらなる進化への挑戦を続ける「イース」シリーズの姿勢を、筆者は心から歓迎したい。
最後に、ネタバレ対策のために詳細を伏せたストーリー部分も、きっと多くのプレイヤーが驚きや興奮をもって楽しめると思う。この点にも大いに期待して、発売日を待っていてほしい。
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※画面は開発中のものです。
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