ベセスダ・ソフトワークスより発売中のXbox Series X|S/PC(Steam)用ソフト「Starfield」のレビューをお届けする。

目次
  1. SF好きの心をつかむリアルな世界観
  2. 最高に盛り上がる宇宙戦闘とカスタマイズ
  3. 壮大な宇宙の探索と育成は楽しいがテンポの悪さはネック
  4. 広大な宇宙を自由に生きるロールプレイの楽しさは唯一無二

「The Elder Scrolls」シリーズや「Fallout」シリーズをリリースしてきた、ベセスダ・ソフトワークスが手掛ける新たなオープンワールドRPG「Starfield」。発売から約1ヵ月が経過し、すでに本作をやりこんだプレイヤーも多いだろう。発売から時間は経ったものの、改めて本作について振り返ってみたい。

SF好きの心をつかむリアルな世界観

本作の舞台となる西暦2330年は、人類が本格的な宇宙進出を果たし、さまざまな惑星に移住した未来の世界。ともに未来を舞台にしておりながらも、核戦争によって荒廃したポストアポカリプスの世界を描く「Fallout」シリーズとは雰囲気が異なる。

遠い未来の世界でありながらも、現代の世界の延長としてのリアリティを感じられる。SF的な世界を舞台にしたタイトルなら、派手な武器や特徴的なガジェットが登場することも多いが、本作はゲーム的なインパクトや変化を重視したガジェットのようなものはあまり出てこない。ある程度ゲームを進めると、プレイヤーだけが使える「パワー」と呼ばれる超常の力が使えるようになっていくという要素はあるものの、全体として地に足のついたハードSF的な世界観を追求したこだわりが感じられる。

そういった要素はストーリーにも反映されており、SFというテーマに対して非常に真摯に向き合っている印象だ。特に、コンステレーションの一員となって宇宙の謎を解き明かすメインクエストをはじめ、随所にさまざまな古典的なSF作品のエッセンスが詰め込まれている。

個人的に印象に残ったのが、自我を持ったAIに対する処遇を決めるサブクエスト。依頼人の要望通りにAIを消去するか、AIを生命と認めて依頼人を説得するか、それとも力づくで依頼人を排除するのかといった選択肢が出現し、その結果によってクエストが変化する。映画や小説などで幾度となく描かれたSFのテーマに対し、登場人物の1人として干渉できるのは、インタラクティブ性のあるゲームならではの魅力と言える。

なお、メインクエストをクリアすると、一部の要素を引き継いでゲームを再度最初からプレイできる。ストーリーのネタバレになってしまうため詳細は伏せるが、ただの「強くてニューゲーム」ではなく、1周目とは異なる体験が新たに用意される。1周目を深くプレイしていたほど2周目の面白みも増すようにはなっているので悩ましい所だが、2周目をやらないまま本作のプレイを終えてしまうのはあまりにももったいない。1周目で全てのクエストを遊び尽くそうとするよりは、ある程度のタイミングでメインクエストをクリアするのが個人的なオススメだ。

最高に盛り上がる宇宙戦闘とカスタマイズ

本作では銀河に存在する膨大な星系と、星系内に存在する惑星を探索することができるのも特徴だ。惑星内では「Fallout」シリーズのようなFPS視点(TPS視点への切り替えも可能)で進行するのに対し、星系内では宇宙船を直接操作して探索を行う。

個人的に特に優れていると感じたのが、本作の特徴とも言える宇宙船に関連した要素だ。宇宙船での戦いというと、遠方から多数の艦隊同士が撃ち合う光景をイメージしがちだが、本作の宇宙船同士の戦いは、戦闘機同士のドッグファイトに近いスピード感で行われる。発射されたミサイルを回避するために速度を変えて旋回したり、攻撃を受けにくい背後に回り込んだり、フライト系のシューティングに近いシステムにもなっている。

実際に操作する宇宙船にはさまざまなバリエーションがあり、クエストを進めることで報酬として船が手に入ったり、パーツを購入して宇宙船を自由にカスタマイズしたりできる。惑星を探索して入手した資源は宇宙船のコンテナに収納されるので、できるだけ収納を増やしたいところだが、そうなると重量が増して機動力が落ちてしまう。今度はエンジンを増やしたらコアの出力が足りなくなったり、見た目のバランスを整えるためのパーツを増やしたりと、あれこれ悩みながら組み替えるのが非常に楽しい。

ただ、惑星内の探索と比べると宇宙は遊びの要素が少なく、最終的にはあまり操作する機会がなくなってしまいがちで、宇宙船を生かした展開がもっと欲しかったのが正直なところ。せっかくカスタマイズで凝りに凝った宇宙船を作っても、移動する倉庫としての運用が主になりがちなのがもったいない点だ。

宇宙から惑星に着陸するにはファストトラベルを行う必要があり、直接着陸の操作ができないのも惜しい。

壮大な宇宙の探索と育成は楽しいがテンポの悪さはネック

実装されたありとあらゆるコンテンツの物量が凄まじいのも本作の特徴だ。

総数では100星系、1000以上の惑星が存在するとのことだが、一つ一つの惑星も結構な規模があるため、全ての惑星を探索し終えようと思った場合、どれほどの時間が必要となるのか想像もつかないほど。

メインクエストのほかに、コロニー連合や宇宙海賊・紅の艦隊などの組織に焦点を当てた勢力クエスト、惑星ごとの固有のサブクエスト、ランダムで発生する遭遇イベントなど、豊富な種類が存在し、常に何らかの目標が発生するようになっている。全てのクエストクリアを目指すと、途方もない時間が必要になるだろう。

キャラクターのレベルアップとスキル修得、ハクスラ的な装備収集、資源を採取するための惑星の拠点建設、クラフト可能なアイテムの種類を増やす研究など、育成できる要素も非常に膨大。とくに「Fallout」シリーズなどでもおなじみのレベルとスキルツリーによる成長要素は、スキルを修得するごとに遊びの幅が広がっていくのがしっかりと実感できるのが楽しい。新しい発見やクエストをクリアするごとに経験値が加算されレベルも上がるので、キャラクターを成長させるためにも探索を進めたくなる。思わずやめ時を失いそうになるサイクルがしっかり確立されている。

その一方、難があると感じたのがゲームプレイのテンポだ。本作ではクエストをこなす際、惑星間の移動をかなり頻繁に行うことになるが、その度にロードが発生する。一つの惑星内でも、ダンジョン的な空間だけではなく、一部の店や施設を利用する際にエリアチェンジのロードを挟む必要があるなど、ロードの発生頻度は低くない。星図・星系・惑星という三層でマップが作られている構造上、ファストトラベルで行く先を選ぶ際には「星図→星系→惑星」という流れで複数回画面遷移が発生したりと(クエストの目的地は直に指定可能)、プレイが停止する場面が頻繁に入ってくる。

大きな街の一つであるネオンを舞台にしたクエストでは、何度も建物を出入りする関係上、かなりの頻度でロードが挟まってしまう。

また、惑星は数が多いだけではなく、個々の広さもかなりのもの。探索のやりがいも十分あるのだが、ただ走っているだけの時間が長いのも気になるところだ。特に本作は、次々と新しい惑星に移動して探索を進めていく構造上、いくらゲームをプレイしても、ファストトラベルポイントを発見するまでの移動が発生し続ける。移動速度を早める乗り物が存在しないのも手伝って、段々と移動が快適になっていく実感も得られにくい作りとなってしまっている。

広大な宇宙を自由に生きるロールプレイの楽しさは唯一無二

いくつかの問題点はあるものの、宇宙を舞台とした壮大なキャラクターとして自由に生きるロールプレイは、あらゆる要素が詰めこまれた本作だからこその楽しさがある。個人的に好きなのが、時折クエストで発生する、宇宙船同士での戦闘で敵船を行動不能にし、内部に乗り込んで敵を制圧するシチュエーション。SF映画のド派手な戦闘を自らの手で操作しているような感動を味わえる。

記事内でも触れた通り、宇宙船を動かす時間はある程度限られている。にもかかわらず、それだけでゲームが1本作れそうなほどの細かなシステムが用意されているのが、本作のスケールの凄まじさ。「Fallout」や「The Elder Scrolls」シリーズ同様、ストーリーと直接関係がない、施設やNPCの背景が分かる情報が用意されていたり、本作は1本のゲームとして見た際、ちょっと過剰だと思ってしまうほどの“やりすぎ”なコンテンツがたくさんある。しかし、この“やりすぎ”があるからこそ、その世界が本当に存在しているかのようなリアリティを生み出せているのも間違いない。

ゲーム開始時にキャラクターの出自や設定を考えておき、それに沿ったロールプレイを意識してみるのも面白い。

本作は「2023年の技術で、超広大な宇宙を舞台に自由度の高いオープンワールドRPGを作ったらどうなるか」という挑戦作でもあり、ゲーム好きならプレイする価値はあると断言できる。あらゆるプレイヤーが満点をつけるタイトルではないかもしれないが、SF的なストーリーや世界観に魅力を感じるプレイヤーなら、120点、130点に感じられる面白さが詰まっている。本記事執筆時点ではまだ配信されていないが、今後のアップデートでは、「食べる」ボタン、HDR調整メニュー、FOV(視野)スライダーの追加などのアップデートや、公式のMODサポートも予定されており、今後さらに良いタイトルになっていくことに期待したい。

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