ドイツのインディーゲームスタジオであるSlow Bros.が手掛けたPS5/Xbox Series X|S/PC(Steam)用ソフト「Harold Halibut」が2024年4月16日より配信中だ。本稿では、そのプレイレポートをお届けしよう。

目次
  1. ストップモーション・アニメで展開される唯一無二のビジュアル
  2. ゲーム的要素を排したことで際立つ世界観とストーリー
  3. ユニークで人間味あふれる住人たちとの交流が物語を彩る

ストップモーション・アニメで展開される唯一無二のビジュアル

「Harold Halibut」はストップモーション・アニメ風のビジュアルで展開されていくSFアドベンチャー。250年前に地球を脱出したという巨大な宇宙船フェドラ1を舞台に、主人公の青年ハロルドと個性豊かなキャラクターたちが織りなすハートフルな人間模様を楽しめる。

ストップモーション・アニメとは、人形などの物体を少しずつ動かして1コマずつ撮影し、それらがあたかも動いているかのように見せる映像技法のこと。映画などで長く使われてきた伝統的な手法で、古くは「キングコング」「アルゴ探検隊の大冒険」、近年では「オオカミの家」などが有名だ(いずれも映画作品)。

手間さえかければ誰でも作ることが可能で、プラモデルやフィギュアなどを使った個人制作の作品をYouTubeなどで見たことがある人も結構いるだろう。ただ、本格的な映像を作るとなると多大な時間と労力がかかり、本作も彫刻や模型製作などを駆使して10年以上もの歳月をかけて制作されたという。

SFアドベンチャー「Harold Halibut」をレビュー:ストップモーション・アニメの映像が生み出すハートフルな人間ドラマの画像
SFアドベンチャー「Harold Halibut」をレビュー:ストップモーション・アニメの映像が生み出すハートフルな人間ドラマの画像

このストップモーション・アニメを駆使したレトロテイストの映像が非常に見応えがあるのだ。キャラクター、宇宙船内の建物、機械類、室内の小物など、ゲーム内に登場するすべてのモノが実際に作られたであろう精巧な彫刻や模型で、手作りのジオラマを思わせる世界になっているのだが、作り物のような違和感はなく、独特のリアル感を醸し出している。

特に、主人公のハロルドをはじめとするキャラクターたちの描写は秀逸で、見た目は人形のようでありながら歩いたり走ったりする動作は自然そのもの。さらに、瞬きや目線の運びなどの細かな表情の動きまでしっかりと描かれており、そこには生き生きとした生命感がみなぎっている。

他のゲームでは味わえない唯一無二の映像となっていて、これらのビジュアルが生み出す世界に思わず引き込まれてしまうことだろう。

SFアドベンチャー「Harold Halibut」をレビュー:ストップモーション・アニメの映像が生み出すハートフルな人間ドラマの画像
SFアドベンチャー「Harold Halibut」をレビュー:ストップモーション・アニメの映像が生み出すハートフルな人間ドラマの画像
SFアドベンチャー「Harold Halibut」をレビュー:ストップモーション・アニメの映像が生み出すハートフルな人間ドラマの画像

ゲーム的要素を排したことで際立つ世界観とストーリー

そんな本作だが、いわゆる“ゲーム的な要素”は皆無に近い。反射神経を必要とするようなアクションも、頭を悩ますような謎解きも、展開が大きく変わるような選択肢もまったくないのだ。ちょっとしたパズルや乗り物の操作、会話時の選択なども一部存在するが、基本的に特定の場所に行ったり指定された人に会ったりなどのタスクをこなすだけでストーリーは進んでいく。

そして、すべきことをすべてクリアしたら、あとは自室のベッドで眠ればいいだけ。今何をすべきかがいつでも確認できるようになっているので、詰まるような箇所はほとんどない。同じ箇所を何度も挑戦し直したり、謎解きで頭を悩ませたりする必要がないので、時間さえかければ誰でもクリアまで到達できる。

つまり、ゲーム的な要素がほぼ削ぎ落とされているわけだが、ゆえにストレスなくストーリーを進めることが可能で、よりゲームの世界に没入しやすくなっていると言える。ゲームというよりも長編ドラマを見ている感覚に近いのだが、それでいてハロルドを自分で操作することによる感情移入の効果は大きく、その意味でやはり本作はゲームなのだ。

非常にチャレンジブルなだけに万人向けとは言い難く、ゲーム的な刺激を求めるタイプのユーザーはあまり魅力を感じないかもしれない。それでもSteamでのユーザーレビューは、発売から1週間が経過した4月23日の時点で78%が「好評」となっており、プレイした人に強い印象を与えていることがうかがえる。

SFアドベンチャー「Harold Halibut」をレビュー:ストップモーション・アニメの映像が生み出すハートフルな人間ドラマの画像
SFアドベンチャー「Harold Halibut」をレビュー:ストップモーション・アニメの映像が生み出すハートフルな人間ドラマの画像
SFアドベンチャー「Harold Halibut」をレビュー:ストップモーション・アニメの映像が生み出すハートフルな人間ドラマの画像

そのキモとなっているのが、しっかりと作り込まれたSF的世界観と染み入るようなストーリーだ。フェドラ1は都市に匹敵するような巨大な宇宙船で、250年前に絶滅の危機にあった地球を脱出。居住可能な新たな惑星を目指して宇宙を放浪するが、陸地を持たない水の惑星に不時着してしまう。以来、異星の海中に沈んだフェドラ1の船内で乗組員たちは生活し続けてきた。

フェドラ1の内部はチューブと呼ばれる有料の移動用システムで各区画が繋がっている。このチューブを運営するオールウォーター・コーポレーションという会社が現在のフェドラ1を実質的に取り仕切っており、船体を再び離陸させて地球に帰還することを目指している。このように見た目は少しユルいが、実はかなり設定のしっかりした本格SFで、本作の魅力のひとつになっている。

SFアドベンチャー「Harold Halibut」をレビュー:ストップモーション・アニメの映像が生み出すハートフルな人間ドラマの画像
SFアドベンチャー「Harold Halibut」をレビュー:ストップモーション・アニメの映像が生み出すハートフルな人間ドラマの画像

主人公のハロルドは、そんなフェドラ1で暮らす青年で、保護者であるジャンヌ・マロー教授の助手をしているが無気力で覇気がなく、空想にふけるだけの退屈な日々を送っていた。しかし、フェドラ1が宇宙空間に向けて通信衛星を打ち上げたのを機に彼を取り巻く世界が変わり始める。そして、ハロルドは人生を変える出会いを果たすことになるのだ。

ネタバレを避けるため核心部分を避けて紹介しているのだが、ネタバレ込みでもストーリーは非常に淡々としていて、これといった起伏がないまま緩やかに進んでいく。なかなか物語が動き出さないので最初は少しじれるかもしれない。

しかし、序盤から中盤にかけてのちょっとした出来事の数々が、フェドラ1という閉鎖空間でのハロルドのかわり映えのない日常を浮き彫りにし、同時に彼の感じている閉塞感をプレイヤーも実感できるようになっているのだ。

そして、ストーリーを進めていくと、とある出来事をきっかけにハロルドの世界は広がっていく。そこで得られる解放感はかなりのもので、作中のハロルドと同様に大きな感動を得られることだろう。

背筋が凍るようなサスペンスも、手に汗握るようなスリリングな展開も一切ないのだが、ユーモアを交えつつも情緒的でありながら哲学的な深みがあり、それこそがこのストーリーの妙と言えるだろう。

SFアドベンチャー「Harold Halibut」をレビュー:ストップモーション・アニメの映像が生み出すハートフルな人間ドラマの画像
SFアドベンチャー「Harold Halibut」をレビュー:ストップモーション・アニメの映像が生み出すハートフルな人間ドラマの画像

ユニークで人間味あふれる住人たちとの交流が物語を彩る

フェドラ1で生活する多彩な住人との交流も大きな魅力になっている。

ときに厳しく、ときに温かくハロルドに接する母親的存在のマロー教授。ハロルドと仲の良い饒舌な科学者サイラス。かつてハロルドと付き合っていたサイラスの娘サニー。ぶっきらぼうなゲームセンターの店員ラフィ。生意気だけど憎めない子供たち。いずれの人物もはっきりとした個性を持っており、キャラクターの造形やストップモーション・アニメでの動きの演出もあいまって、それぞれの人となりをしっかり理解できるようになっている。

さらに見逃せないのが、キャラクター同士のセリフの応酬。住人たちとの交流は会話をメインに進めていくのだが、一言二言のやり取りで終わることはほとんどない。会話の内容に厚みがあり、セリフの数々を通して彼らの性格をうかがえるようになっているのだ。

しかも、住人たちはちょっとヘンだったり、おかしなこだわりを持っていたりするが、基本的に根は善人で、気づけば彼らに好感を持ってしまっていることだろう。

ちなみに、住人たちとのやり取りはサブストーリーになっているものが多く、これらを発生させなくてもメインのストーリーを進めていくことが可能になっている。しかし、ときにクスッとさせられたりホロリとさせられたりと、住人たちとのやり取りはとても楽しく、彼らのことをもっと知りたくなるはず。

さらに、住人たちとの交流を重ねることでメインのストーリーもより深く理解できるようになっているなど、物語に厚みを持たせるのにも一役買っているのだ。

SFアドベンチャー「Harold Halibut」をレビュー:ストップモーション・アニメの映像が生み出すハートフルな人間ドラマの画像
SFアドベンチャー「Harold Halibut」をレビュー:ストップモーション・アニメの映像が生み出すハートフルな人間ドラマの画像

ややテンポが悪く感じる部分もあるが、細部までこだわった世界観と生き生きとしたキャラクターたちが生み出す魅力は他のゲームにはないもので、いい意味でオリジナリティに満ちている。

なお、公式によるとメインストーリーだけならクリアまでだいたい12時間くらい。サブストーリーも含めたら18時間くらいかかるとのことだ。セリフなどをスキップしていけばもっと短縮できるだろうが、上でも述べたようにここが本作の一番の見どころになっている。英語での声の演技も自然で聞き応えがあるので、ぜひともカットせずにプレイしてみてほしい。

SFアドベンチャー「Harold Halibut」をレビュー:ストップモーション・アニメの映像が生み出すハートフルな人間ドラマの画像
SFアドベンチャー「Harold Halibut」をレビュー:ストップモーション・アニメの映像が生み出すハートフルな人間ドラマの画像

繰り返しになるが、本作は決して万人向けではなく、プレイする人を選ぶゲームである。しかし、ここで紹介してきたストーリーや画像などを見て少しでも興味を持ったなら、ぜひプレイしてみることをオススメする。細部まで作り込まれたレトロアートの世界と深みのあるストーリーを存分に堪能できることだろう。同時に、ゲームの表現の広がりを感じさせてくれる独自性あふれる一本だ。

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

コメントを投稿する

この記事に関する意見や疑問などコメントを投稿してください。コメントポリシー

Harold Halibut公式サイト