小児医療の理解を広めるためのシリアスゲーム「はじめての児童発達支援」「はじめての感染対策」などを出展の“エムテラス”レポート&インタビュー【TGS2024】

東京ゲームショウ2024
0コメント 小林白菜

千葉・幕張メッセにて9月26日~29日にかけて開催の「東京ゲームショウ2024」。長野県小児在宅医療支援センターエムテラスブースのレポート&インタビューをお届け。

東京ゲームショウ2024の会場をまわっていると「医療をゲームする」、「ゲームで学ぼう新生児医療」といったキャッチコピーで異彩を放っていたのがエムテラス(Mテラス)ブースだ。

小児医療の理解を広めるためのシリアスゲーム「はじめての児童発達支援」「はじめての感染対策」などを出展の“エムテラス”レポート&インタビュー【TGS2024】の画像

エムテラスは医療(Medical)の視点から情報を発信し、人が集まれる場所(Terrace)を作ることを目指し、小児科医と医学生らが共同で運営しているグループだという。情報発信の方法は多岐にわたり、ゲームショウに出展していたゲーム開発もその一環。ほかには、VTuberによる啓発動画の公開なども行っている。

現在ブラウザやスマホアプリで誰でもプレイできるゲームとして公開されているのは、NICU(新生児集中治療室)の見学を行う内容の「はじめてのNICU」、医療従事者が院内感染への標準予防策を学べる「はじめての感染対策」、児童発達支援センターの実習体験を通して療育や医療的ケアについて学べる「はじめての児童発達支援」の3作。

いずれも医療について学んでいる学生や、患者およびその親御さんへの理解を促すことを想定したゲームだが、より理解が広まる可能性を踏まえ、一般公開されているようだ。これらに加え、医療関係者・妊産婦支援者が多職種連携を学ぶための「Circle of Support」というゲームも公開されている。

小児医療の理解を広めるためのシリアスゲーム「はじめての児童発達支援」「はじめての感染対策」などを出展の“エムテラス”レポート&インタビュー【TGS2024】の画像
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これらは「社会の諸領域の問題解決のために開発・利用されるゲーム」である、“シリアスゲーム”と呼ばれるゲームだ。シリアスゲームの詳しい定義や歴史については、筆者が約2年前にCEDEC2022の講演をレポートした「シリアスゲーム最新事情」の記事を参照してほしい。

東京ゲームショウ2024が終わってから、筆者もPCのブラウザからエムテラスが手掛けたこれらのゲームをプレイしてみた。ゲームジャンルで言うならノベルゲームの形式をベースに、ポイント&クリック、フィールド探索などの要素により、ある程度自分の興味関心に従って項目を選択しつつ、それぞれの知識が学べるようになっていた。

アクション要素などのプレイヤースキルは不要で、ゲームに慣れていない人でも気軽にプレイできる。また、いずれも1時間程度の短い内容であることに加え、ブラウザからのプレイでもセーブ機能に対応している。スキマ時間で少しずつプレイできる点も忙しい人にはありがたいことだろう。

「はじめてのNICU」
「はじめてのNICU」
「はじめての感染対策」
「はじめての感染対策」
「はじめての児童発達支援」
「はじめての児童発達支援」

なぜ、これらのゲームが生まれたのか? ブースにいたエムテラス代表・三代澤幸秀氏に話をうかがってみた。

エムテラス代表・三代澤幸秀氏インタビュー

――なぜエムテラスでシリアスゲームを開発するようになったのでしょう?

三代澤:私は新生児を専門とする小児科医なのですが、長くこの仕事を続けているうちに、赤ちゃんの問題だけでなく、社会的に孤立した妊婦さんや障がいを持って退院するお子さんをサポートすることが必要だと感じるようになったんです。その手段として、気軽に触れられるゲームという媒体を思いついたのがきっかけです。

その後、所属している大学からの要請もあって、生徒たちと協力して各種専門分野の知識が学べるゲームを作っていくことになりました。

――生徒の皆さんはどういった形でゲーム開発に関わっているのでしょうか?

三代澤:ひとりはシナリオ、ひとりはイラストやデザイン、ひとりはプログラミングと、私も含め素人ではありますが、得意なことを活かして制作しています。

――「はじめての児童発達支援」では児童発達支援センターをテーマにしていますが、やはり偏見などが少なくないのでしょうか?

三代澤:近年ではそうした声は少なくなってきましたが、それでも親御さんにはこうした施設に預けることを躊躇する方もいらっしゃいます。でもそれは「どんなことをしているのかよくわからないから不安」という部分が大きいのだと感じます。

当事者にならないと行く機会がない施設を気軽に疑似体験できれば、そうした不安がある程度は解消されるのではないか? というのが本作を開発した動機です。もちろん、これらのゲームだけでその分野のことがすべて分かるわけではないのですが、知識を得るきっかけになればいいなと思って制作しています。

――では、主にプレイヤーとして想定しているのはお子さんを持つ親御さんなのでしょうか?

三代澤:基本的にはそうですが、医学生や看護学生、医療関係者志望の中高生の方にもプレイしていただいています。中高生の方からも好意的な反応をいただけたのはうれしかったですね。

――今後も新作のリリース予定はあるのでしょうか?

三代澤:いまは「はじめての妊娠」という、妊娠から出産までの経過を疑似体験するゲームを作っていて、来年の春くらいに出せればいいなぁと思っています。その次に作ろうと思っているのは「はじめての退院支援」というゲームです。なにかしらの障害があるお子さんが入院してから家に帰れるようになるまで、どんな支援があるのかを疑似体験できるものを考えています。

――このインタビューはゲームメディアに載ることを想定したものです。この場で読者に伝えたいことがあればお願いします。

三代澤:さまざまな職種を疑似体験してもらうのにゲームは有効なツールだと思っているので、とくに教育分野などでは今後もっと注目していただけたらと思っています。公開しているゲームを教育ツールとして活用していただけたらうれしいです。

また、いままでは私と生徒たちが自力で開発から公開まで行ってきましたが、ありがたいことに今回の出展で企業さまからもたくさんお声がけいただいております。もし共同の事業にできれば、ワンステップ上のものが作れるかもしれないと期待しています。ご興味がある企業さまからのご連絡をお待ちしています。

ゲームをプレイしてみようと思ってくださった方には、お知り合いの方といっしょにプレイしていただけたりしたら、意見交換もできてより学びが深まるのではないかと思います。ぜひ気軽に触れてみてください。

エムテラス公式サイト
https://msserious.com/

深淵なるゲームのおもしろさを探求しながら「アイカツ!」シリーズや「プリキュア」シリーズ、「プリティーシリーズ」などの女児アニメの魅力を広める活動にも力を入れている。 X(旧Twitter):https://twitter.com/Kusare_gamer

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