7月22日~24日にかけて、パシフィコ横浜 ノースにて開催のゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2026」。本稿では22日に行われた「『GRANBLUE FANTASY: Relink - Endless Ragnarok』のバトル制作事例 ~最高のキャラゲーを目指して~」のレポートをお届けする。

「GRANBLUE FANTASY: Relink - Endless Ragnarok(グランブルーファンタジー リリンク:エンドレスラグナロク)」は、7月9日にリリースされた大型拡張コンテンツだ。「グランブルーファンタジー リリンク」では、モバイル向けターン制RPG「グランブルーファンタジー」を原作としつつ、コンソール向けの本格3Dアクションゲームとして展開されている。
最大の魅力は、2Dイラストの独創的な世界観をそのまま立体化したかのようなグラフィック表現だ。原作ファンも納得のビジュアルとモーションでキャラクターが躍動し、アクション初心者へのサポート機能も徹底されている。さらに新システム「召喚」なども登場し、これまで以上に幅広いプレイヤーが楽しめる仕上がりとなった。
本セッションの登壇者は、Cygamesの三木達氏、平手聡氏。ゲーム全体のコンセプトを「最高のキャラクターゲーム」に定め、これを実現するためにバトルの指標を「アクションを通じてキャラの魅力を体験できる」と「アクションゲームに不慣れな人でも楽しめるようにする」の2軸にしたという。

3Dアクションゲームのバトルの制作現場では「仕様書の通りに作ってみたものの、何だか面白くない」という問題が起きやすい。そこで効率化を図るため、イテレーション速度を重視した制作フローを作成。試行錯誤をできるだけ素早く繰り返し、チームとしての経験値や精度も高めていくのが狙いだったそうだ。
まず、キャラクター企画のネタ出しの段階でディレクターやプランナーだけでなく、エンジニアやアーティストを含むチーム全員が参加。「何が面白いキャラクターなのか」という共通認識を作り、言語化することで作業者の目線を合わせていった。そして議事録ベースで仮実装を開始し、最速で30点を叩き出すことを目指したという。
こうして試行錯誤を何度も繰り返してディレクターへ確認し、合意が取れたら正式な仕様を起こしていく。ネタ出しの段階で目指す体験を言語化していたため、差別化不足による手戻りは概ね防げたそうだ。


そしてユニークな性能に特化した強化要素「マスタースタイル」では28キャラクター×3の全84種という膨大な物量へ効率的に対応するため、設計段階からバトルパートとサイクルパートのプロジェクトが合同で進行された。キャラクターのアクション要素は、共通化できるもの、キャラクター固有のユニークなものに分類。固有のユニーク要素は、多種多様な制御が必要となるが、共通化できる部分があるはずという前提でプログラムの制御方法ごとに整理し、アクションという単位でデータをまとめて量産効率を担保していったという。

続いて「グランブルーファンタジー」として馴染み深い要素を継承しつつ、3Dアクションならではの体験を感じられるよう、仲間同士の連携アクションを軸に据えたバトルシステムを目指したことが語られた。これには4種類の連携アクションを用意し、戦闘全体を通じて共闘感を味わえるように設計したとのこと。
なかでも高頻度かつ小規模の「リンクアタック」は、派手な演出が繰り返されるとゲームのテンポを損なう懸念があったため、演出はカメラのアニメーション制御のみとシンプルな構成に。プレイヤーの映り込みやカメラへの遷移量が大きくなるといった課題は4種類のカメラデータを用意し、発動時の敵とカメラの位置関係に応じて使い分けることで解決した。

大規模な必殺技が連続発動する「奥義チェイン」では味方の戦闘を阻害せず、いかに迫力ある演出を実現するかが大きな課題となった。専用フィールドに飛ばしたりせず、その場でシームレスに奥義を放ちたいという要望も挙がったため、発動時の敵との位置関係を計算し、敵を中心として最適なポジションをリアルタイムに検索する仕組みを構築。マルチプレイへの影響を鑑み、敵の正面方向を優先して発動者がワープするという仕様が採用された。

仲間AIの仕様は方針として、強く頼もしい戦闘能力を持ち、賢く連携するAIを目指したという。そこで実際にキャラクターをコントロールするキャラクターAIと、ゲーム全体を俯瞰してキャラクターに指示を出す、いわゆるメタAIの2つの軸で実装を進めていったそうだ。

キャラクターAIはキャラクターの制御を担当し、移動や通常攻撃などは他のプレイヤーの状況を考慮せず、自身で完結させる仕様とした。キー入力のエミュレートで実現し、例外的なAI調整がしやすいよう各キャラクターの実装担当エンジニアがAIの実装も兼任するという体制が取られた。
キャラクターAIは、大まかな意思決定をBehaviourTree(※AIの試行をツリー形式で管理する仕組み)で行い、攻撃などのキー入力を伴う処理は個別のFSM(※有限状態機械(Finite State Machine)の頭文字から取られた言葉で、待機や歩きなどの状態を条件に応じて管理する仕組み)で実装。コストを抑えるために敵の攻撃が当たった瞬間に当たらなかったことにして回避を行う、という力技などで課題を解決していったという。物量の壁として「マスタースタイル」が立ちはだかったが、FSMの拡張のみで対応できる仕組みを構築して乗り切ったそうだ。
メタAIは、プレイヤーや敵の情報をリアルタイムに収集し、各キャラクターAIへ的確な指示を出す司令塔の役割を担う。アビリティの無駄打ちは発動時の条件チェックを追加、AIが奥義に参加してくれないケースは距離制限を無視するなどして課題に向き合っていったという。
また、本作の原作となる「グランブルーファンタジー」はモバイルプラットフォームで楽しめるターン制RPGのため、ゲームジャンルが大きく異なる。コンソールゲーム機で遊んだことのないファンのため、根幹的なアプローチが必要だと考えたという。
そこでアクションゲームが苦手でも楽しめるよう、補助機能として操作の簡略化や自動化でサポートする「アシストモード」「フルアシストモード」を実装。アシストモードの仕組みは攻撃ボタンの入力を適切な操作に置き換えるというもので、フルアシストモードではスティックの移動入力が各種アクションも兼ねている。トリガーとなる入力方法こそ異なるが、内部の基本的な仕組みは同一だ。

仲間AIの挙動とは異なり、意思決定にBehaviourTreeではなくFSMを使用したという。移動周りをユーザー自身が操作するため、仲間AIほど複雑な制御は必要ないと判断。そこで本作は意思決定を行う部分と、実際にキー入力のシミュレートをする部分をFSMによる階層構造で構築しているそうだ。

だが、アシストモードならではの課題として、同じ最適行動を繰り返していると安っぽく見えてしまう点があったとのこと。そこでAIとは別のアシストモード専用の攻撃コンボFSMを構築したが、実装コストが非常に重く、仕様変更に弱い。そのため、開発の後半から作り始めたほうがいいとアドバイスを送ったというエピソードも語られた。
プレイヤーキャラクター以外を操作する特殊なミニゲームには専用対応を行う必要もあったが、これには開発現場での恩恵もあった。1つはゲームが正常に動作するかを検証する際にアシストモードを活用できたこと。もう1つは、気づきにくいAIの不具合発見につながったこと。これにより、結果としてゲーム全体の完成度を高められたとしている。今後もアイデアと技術で最高のゲーム体験を追求し続けるとしてセッションは締めくくられた。


なお、各講演は8月4日(月)10時までタイムシフト配信での受講も可能だ。詳細は公式サイトで確認してほしい。
CEDEC2026公式サイト
https://cedec.cesa.or.jp/2026/
(C) Cygames, Inc.
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