ブシロードより発売中の、Nintendo Switch/Steam用ビジュアルノベルゲーム「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 トキメキの未来地図」(にじちず)のプレイインプレッションをお届けする。
目次

突然ではあるが、お気に入りメンバーのエマの楽曲について語る(余談)
「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」(ニジガク)は、オールメディアで活動する「ラブライブ!」シリーズのひとつとして、2017年から活動を開始。東京・お台場にある虹ヶ咲学園を舞台とした物語を描いており、ゲームやアニメをはじめとして、ライブイベントなども展開。「ラブライブ!」シリーズのなかでも、ソロ活動をコンセプトとしているのが特徴となっている。

そんなニジガクについて、冒頭からいきなり余談で恐縮だが、筆者のお気に入りメンバーはエマ・ヴェルデで、なかでも好きな曲に「哀温ノ詩」というソロ曲がある。しっとりとした和風バラードソングで、エマ特有とも言える高く澄んだ歌声で心に響き、染みいるような楽曲となっている。
この曲は単にエマのソロ曲というだけではなく、ニジガク誕生のきっかけでもある、2023年まで配信されていたスマートフォン向けゲームアプリ「ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル ALL STARS」(スクスタ)のなかにあるエピソードに紐付いた曲。筆者はたしなむ程度ではあったものの、サービス終了時のランクは131というぐらいに「スクスタ」はプレイしており、「哀温ノ詩」にまつわるエピソードも感動的だったこともよく覚えている。それゆえに、曲を聴く度にそのことを思い出して今でも目が潤んでくるところがある。
ほかにもこの曲で思い出されることといえば「異次元フェス アイドルマスター★♥ラブライブ!歌合戦」において、東京ドームという大舞台で歌われたときには涙が止まらなかったとか、もちろんほかにもエマのソロ曲も語りたいところがあり、TVアニメ1期挿入歌の「La Bella Patria」は明るい気持ちになれる軽快な楽曲で、エマが指でぐるぐるとするところや手を差し出す振り付けが印象的であるとか、映画「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 完結編 第1章」における挿入歌の「Cara Tesoro」は、作中の舞台でもある沖縄で出会った赤嶺 天とのコラボ曲で、沖縄文化を象徴する楽器「三線」の音色をふんだんに取り入れつつも盛り上がれる楽曲で、そのエピソードも含めて何度聴いてもいいとか、ほかにもエマのソロ曲はいい曲ばかりなので語りたいところもあるが、冒頭から話がそれすぎているので本題に戻したい。
筆者が「にじちず」を進めていくなかで、「哀温ノ詩」に関わるエピソードを目にして少し興奮しつつも、“あなた”がどうもそのことを覚えてない様子を見て「そっか……」と思ったことが、最初の率直な感想だったことをまず触れておきたい。

“あなた”の記憶を取り戻すため、ニジガクメンバーと紡ぐ新たなストーリー
「にじちず」は、「ニジガク」初となるビジュアルノベルゲーム。前述した「スクスタ」における世界観をもとに、その後にあたるオリジナルストーリーとなっている。

主人公である“あなた”は、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の部長となっており、かつて廃部の危機にあった同好会を救ったこと、そして突如として記憶から抜け落ちてしまうことが冒頭で語られる。


現在は記憶喪失になりメンバーたちのことを忘れてしまっているため、再びメンバーたちと交流を深めて、過去の記憶を取り戻していくというのが本作の概要となる。
あなたが記憶喪失でメンバーのことを知らないという状態であることから、メンバーがそれぞれ自己紹介を行う場面があるため、ニジガクを初めて知るような方でも、メンバーがどのような人物なのかをここで知ることができる。その際には他のメンバーとのやりとりもあり、関係性も伝わるようになっている。



本作では、平日となる月曜日から金曜日まで学園生活を送り、休日にはニジガクメンバーたちと一緒にお出かけをするのが大まかな流れ。その平日は、登校時にメンバーと挨拶しつつ、午前と午後で「学園MAP」から行きたい場所を選択するシステムとなっている。そこにいるメンバーも表示されているので、気になるメンバーがいたらその場所を選んで、会話をしながら交流を深めていく。



なお行く場所によっては、近江彼方の妹である近江遥や、三船栞子の姉である三船薫子をはじめとして、メンバーに関わりのある人物や、おなじみの白い子猫「はんぺん」の姿を見かけることも。



また学園から帰宅した夜には、メンバーからスマホにメッセージが届くこともある。筆者がプレイした限りにおいては、学園で交流したメンバーから送られるものと思われる。そのやりとりも、メンバーと一歩仲良くなっている実感が持てるものとなっている。

休日では、前述のようにニジガクメンバーたちと一緒にお出かけ。複数のメンバーとの軽妙なやりとりで進行するもの。あるときは、休日らしく観光やショッピングに出かけをし、にぎやかに過ごす。




またあるときは、なにやら現実とは違う世界にいざなわれたようなストーリーが展開されることも。



はたまたメンバーと合宿に行くシーンもある。あなたとメンバー、そしてメンバー同士の仲の良さを感じさせるとともに、みんなで楽しく過ごす感覚を味わえるものとなっている。


メンバーとの会話のなかでは、選択肢が出てくることもある。そのメンバーがより喜んだり心に響くような会話の選択を選ぶと、メンバーとのキズナを深めることができる。そのときには特別な演出もあるので、わかりやすく表現される。


交流を重ねてストーリーを解放。メンバールートも目指す
メンバーとの交流をしていくなかで、「メンバーイベント」と「キズナエピソード」が解放されていく。
「メンバーイベント」は、メンバー個々の魅力をより深く味わえるようなエピソードが展開。“あなた”とメンバーが新たに刻む思い出となる、特別な時間を楽しめる内容となっている。


「キズナエピソード」は、あなたの記憶から抜け落ちてしまっているメンバーとの思い出となるエピソードが垣間見えるもの。見る人が見れば、かつての出来事を思い出させるものとなっている。


そして本編のほうにおいて、メンバーとのキズナを深めていくことにより、そのメンバーとの「メンバールート」に入る。エンディングに向かっていくクライマックスとして、個々のメンバーが抱いているあなたに対しての思いと、お互いのキズナを感じさせるものとなっている。


ちなみに、エンディングでは本作の主題歌である新曲「Eternalize Love!!」が流れる。通常は、エンディングを迎えたメンバーのソロバージョンとなるが、12人全員とのエンディングを迎えると、12人が歌い踊る3Dライブを見ることができるという。
なお、解放されたメンバーイベントやキズナエピソードなどは、タイトルにある「エクストラ」から閲覧可能。何度でもその話を見返すことができる。

ニジガク初見でも楽しめ、知っているとよりエモーショナルな気持ちにさせてくれる内容
ビジュアルノベルゲームという性質上、複雑な操作を要求されるものではなく、基本的にはストーリーを楽しむタイトル。「学園MAP」から行き先を選択するときも、メンバーがわかりやすく表示されており、また、好きなところでセーブやロードできる機能、ログから過去の会話に戻る機能も用意され、選択肢前にすぐ戻ることもできる。さらに1度見た会話や選択肢については、テキストの色が変わっていることもありわかりやすくなっている。

内容としては前述のように、ニジガクを初めて知るような方でも楽しめるようになっている。また、本作に興味を持っている方であれば、なんらかの形でニジガクを知っている方も少なくないと思われるが、アニメで知ったという方から見れば、ニジガクのメンバーの姿や会話をあなたの視点から楽しめるというのは、アニメとは違った感覚になれるものとなっている。

そして「スクスタ」から知っている“あなた”であれば、「スクスタ」であった出来事とともに、その後のお話を楽しめるもの。また、「スクスタ」のキズナエピソードを含むストーリーについては、YouTubeの「【スクスタ】ストーリーアーカイブ公式チャンネル」にアーカイブとして残っているものの、“抜け落ちた記憶”の一部を思い出すかのごとく、「にじちず」としても触れられることは、感慨深いものだと思えた次第だ。

【ネタバレ注意】エマ・ヴェルデの“らしさ”あふれるストーリーと印象的なシーン
前述のように、ニジガクはソロ活動がコンセプト。12人が一体となって盛り上がるストーリー展開はありつつも、個々の魅力も掘り下げており、ゲーム内で交流していくなかで、お気に入りのメンバーを見つけて、愛着を持って接していくという楽しみ方をしてみるのもいいだろう。
筆者のお気に入りメンバーは、冒頭で触れたようにエマ・ヴェルデ。虹ヶ咲学園の3年生で、スクールアイドルにあこがれてスイスから単身で来日。抜群の包容力を持ち、みんなを支えてくれる心優しい女の子であり、歌で癒しを届けたいという癒し系スクールアイドルだ。
※なお、ここからの紹介では、エマのエンディングにおけるネタバレは避けているものの、エマに関するストーリー展開や、メンバーイベントとキズナエピソード、そして終盤のエマルートについてや周辺情報にも言及しているところがあるなど、ネタバレの要素を多分に含まれているため、あらかじめその点を留意いただいたうえで読み進めていただきたい。


ストーリーのなかでは、エマらしいと感じさせる場面が随所に描かれている。まずは“食べ物”。食べ物の匂いに反応したり、イタリア語で“美味しい”を意味する「ボーノ」と口にしながらおいしそうに食べたりと、食欲旺盛な一面をうかがわせるもの。プロフィールには「好物は日本のパンの耳」とあるように、パン屋さんへ一緒に行くシーンもある。
常に相手に気を配る姿もあり、あなたやメンバーに対しての気遣いも細やか。心優しさを感じるところでもある。
そんなエマの気遣いとして、お約束なのが「間をとって私が……」というシーン。あくまでも周りが困っていたり迷っているなら……というエマらしい気遣いではあるが、積極派な一面を感じさせる。



エマの特徴として忘れてはいけないこととして、膝枕もある。メンバーにもエマの膝枕は人気があり、いつも眠そうで気が付いたら寝ているというぐらいのメンバーである、近江彼方もお墨付きというぐらいのもの。そして、ストーリーのなかでは、エマがあなたに膝枕をするシーンも。
また、メンバーのなかでも3年生の朝香果林と仲がよく、エマが気遣ったり、世話をやいているようなシーンもところどころで見かける。
ほかにも、出身であるスイスについて触れることもあり、家族に向けて手紙を書くという家族思いなところや、飼っていた仔ヤギの“ネーヴェちゃん”のことを語る一幕も。
何より、歌うことが大好き。歌いたくなる、そして実際に歌おうとしている場面も見かける。また、歌っていると子どもたちが集まってきて、一緒に歌おうとするという姿も。
そんなエマのエンディングにつながるエマルートでは、子どもたちに人気者となっているエマに依頼が届き、子どもたち向けのコンサートを行うことになる。


エマはあなたに相談をもちかけ、子どもたちのためのコンサートだからと、童謡を歌う考えを伝え、あなたは子どもたちから歌ってほしい曲のリクエスト募集を提案。そうしたやりとりのなかで、エマがどのようなスクールアイドルになりたいかを、あなたとともに考えていたエピソードが語られていき……。
ここから先のお楽しみとさせていただきたいのだが、エマとあなたとの間にある確かなキズナが感じられるとともに、エマの安心感を与えるような魅力と、心があたたかくなるような歌声の持ち主ということが伝わるものとなっている。
筆者が実際にプレイしていて印象的なシーンもいくつかある。まずは、夜更かししているあなたに対して、子守歌を歌ってあげることをメッセージで伝えるところ。エマの気遣いや歌が好きな気持ち、そして癒しを与えたい気持ちが現れていると個人的に感じるし、本当にあなた思いという気持ちが伝わるところでもある。

ちなみに「にじちず」とは関係ないのだが、エマの子守歌を堪能できる動画というものがラブライブ!シリーズ公式YouTubeチャンネルに存在している。「【ぐっすりおねんね企画】あなたにエマのおやすみソング集」と題した動画では、彼方に対して子守歌を歌うエマの歌声と姿が収録。彼方が“エマちゃんの子守唄を一人で享受するのは人類の損失”とまで絶賛する、エマの子守歌の素晴らしさを感じられるもの。と同時に、今でも筆者はこの企画の第2弾を待ち望んでいることは付記しておきたい。
また、ストーリー本編において、エマが“はめつのししゃ”という悪者として登場するシーンも印象的。なぜ悪者なのかは実際に見てほしいのだが、悪役というわりには親切であったり、約束を守ろうとしたり、“わんちゃん”を大切にしようとするなど、悪者なのにエマの心優しい気持ちがにじみ出た姿がほほえましかったところがある。


エマが“メイド”として登場するシーンもある。エマがあなたの作曲を手伝いをするためにメイドさんとしてお仕えをした思い出を語り、あなたを驚かせる。それだけにとどまらず、エマも懐かしくなってしまい、後日メイド服を着たエマが登場。あなたにお仕えしたいとお願いをする。
とあるキズナエピソードを解放すると、当時作曲の手伝いであなたにお仕えしたエマの姿も垣間見ることができる。本当にお世話好きなエマの姿がそこにあるとともに、お世話されたいと思わせてくれるような光景になっている。


ちなみに「にじちず」では触れられていないのだが、このとき作曲した曲は、エマのソロ曲「いつだってfor you!」となっており、楽曲とともにそのエピソードが語られている動画も残されている。
そして最も印象的……というより、忘れたくても忘れられないところは、解放されたエマのとあるメンバーイベントにおいて、エマがスクールアイドルを志すきっかけを語るシーン。小さいころ留守番をしていて心細いなか、1本の動画を見てスクールアイドルの世界に引き込まれたという。その後エマは来日し、その思い出の本人には会えていないそうだが、その楽曲と思いを引き継いだ人に出会い、現在はエマが引き継いで歌っているということがわかる。
エマが出会った人物というのは、夏川マイのこと。実家の夏川写真館を継ぐためにスクールアイドルを卒業し、代々継承されていた歌をエマに託した。実は本編にもマイは登場し、あなたと写真撮影について話す場面がある。


解放されるキズナエピソードでは、このときの記憶となるエピソードも描かれており、エマがスクールアイドルを目指すきっかけとなった曲を歌っている方を探していたことや、マイはエマの思い出の曲を先輩から受け継いていたのだが、写真館を継ぐためにスクールアイドルを引退することを決めていること、そしてマイの最後のライブでエマにこの曲を託すシーンを見ることができる。
「にじちず」のあなたはこの曲を覚えていないようで、歌う姿も見たいと思っているようなのだが、この曲こそが冒頭に触れた「哀温ノ詩」となっている。歌っている姿については、ラブライブ!シリーズ公式YouTubeチャンネルに残っているものがあるので、そちらを参照いただきたい。目引く髪型や着物風ステージ衣装をまとい、扇子を巧みに扱いながら歌っている。楽曲も姿も和風という雰囲気を醸し出すなか、伸びやかに響く歌声は心の染みいるもので、何度見ても目が潤んでしまう。
歌を聴いていてもそうなのだが、やはりこのエピソードに触れるだけでも涙腺を刺激するぐらい、筆者にとっては当時から印象的であり忘れられないエピソードであると、「にじちず」で触れて改めて思えた次第だ。
(C)2022 プロジェクトラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 (C)bushiroad
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