2026年9月19日に川口総合文化センター リリア メインホールにて「幻想水滸伝」シリーズ歴代作品を演奏するオーケストラコンサート「Symphonic Poem from 幻想水滸伝 Voyage」が開催された。

本公演は30年の歴史を持つ「幻想水滸伝(以下、幻水)」シリーズの、ナンバリングタイトルや外伝作品、8月にリリースされたばかりのモバイルゲーム「幻想水滸伝 STAR LEAP(以下、幻水SP)」の楽曲まで一挙に演奏したオーケストラコンサートだ。
※以下、ナンバリング作品は「幻水I」~「幻水V」と表記。
「幻水I」「幻水II」を手掛けた東野美紀さん、「幻水SP」のサウンドを担当した蒲地あかりさんもゲストに迎え、ゲーム内の時系列をベースに歴代の名曲が届けられた。
まずは「アコーディオンとオーケストラのための序曲『Symphonic Poem from 幻想水滸伝 Voyage』」と題し、アコーディオン奏者として杉山卓さんが参加。「幻水IV」の世界観をベースとした「Rhapsodia~ラプソディア~(以下、Rhapsodia)」の「輝ける海よ!空よ!」から「シーサイド・スプリング(幻水IV)」「大河を駆ける(幻水V)」「さざなみの港町~陽光~(幻水SP)」「囚われた街(幻水II)」「あひるぼっこ(幻水III)」「美しき黄金の都(幻水I)」と、旅情を誘う曲が彩り豊かに並ぶ。




ちなみに、本公演のキービジュアルでは歴代の天魁星たちが吟遊詩人を思わせる楽器を手にした姿が描かれている。ステージ上でも彼らが手にしたアコーディオンやタンバリン、リュートなどの多彩な音が前面に押し出され、物語の情景をより鮮やかにしていたのが強く印象に残った。


続いて「幻水IV」と、その前日譚となる「Rhapsodia」の楽曲へ。ゲーム内で描かれている太陽暦の中で、最も古い時代を描いたタイトルだ。第一楽章では「罰の紋章」を宿した者が辿る凄惨な宿命や、重厚なドラマを管弦楽の豊かな響きで紡いでいく。「Rhapsodia」はジャンルがシミュレーションRPGということもあり、歴代シリーズとはかなり異なるバトル画面の映像も見どころのひとつだ。

第二楽章は「幻水IV」のオープニングムービーを彩った「La Mer」から始まる。ゲームハードの進化と共に表現できるサウンドの幅が飛躍的に広がっていった時代にあっても、アコーディオンを軸とした楽曲をゲームのメインテーマに据えたアプローチは珍しい。しかし、一度聴いたら耳から離れない柔らかでノスタルジックな旋律は、広大な海を往く群島諸島での冒険譚や、作中で描かれる幾多の悲しみへどこまでも優しく寄り添う。さらに「幻水IV」とのフレーズの繋がりを感じさせる旋律の数々が、情感豊かに届けられた。


「幻水V」ではエスニックなニュアンスも含んだ、重厚かつ切ない旋律が観客を包み込む。「ファレナ女王国」の所有する「太陽の紋章」が生み出した悲劇から始まり、劇的な物語のクライマックスまで波乱に満ちた旅路を彩る音色が心を強く揺さぶった。


東野さんと蒲地さんが連弾で参加した「4手ピアノとオーケストラのためのセレナーデ『幻想水滸伝』」では、「静寂の郷(幻水SP)」「星眠る郷(幻水SP)」「芽吹きの広野(幻水SP)」「月夜のテーマ(幻水I)」「Orizzonte(幻水II)」を披露。繊細かつ美しい演奏後、わずかな時間ながらトークコーナーが設けられた。


数多くのファンの記憶に刻まれる音楽の制作当時について聞かれると、東野さんはスケールの大きな作品だが音声がない分、音楽での表現が強く求められたと振り返る。そのため場面ごとに曲を作るのではなく、全体の物語を見渡しながら、どのような音楽が、どこに必要なのかきちんと設計したうえでの音楽作りを大切にしたという。
東野さんが作曲した音楽は、最新作「幻水SP」にも受け継がれている。本作の魅力について聞かれると、技術の進歩によって実現した生演奏ならではの心地よい響きを挙げた。歴代シリーズでは作り手の熱いこだわりが詰め込まれてきたが、そうした“幻水イズム”と呼ぶべき感覚は「幻水SP」にも確かに継承されていると感じたそうだ。
ファンからの応援が制作スタッフの大きなモチベーションとなり、次の作品を生み出す力へと繋がっていく――そうした温かな循環を願うメッセージは、会場に集まったファンの胸に深く響いたはずだ。
一方、自身も「幻水」音楽の一ファンだと語る蒲地さん。「幻水SP」ではBGMだけでなく、SEや環境音などサウンド全体で歴代シリーズへのリスペクトを表現したかったとの思いを明かした。それと同時に「幻水SP」で初めてシリーズに触れたファンにも楽しんでもらえるよう、サウンドチームやさまざまなクリエイターと試行錯誤の末に生み出されたと話す。
原点である東野さんの唯一無二のサウンドから始まり、幾多のクリエイターがその想いを引き継ぎながら紡いできたシリーズの歴史を噛みしめながら、「幻水SP」も長く愛されるタイトルになればと万感の思いを挨拶に込めた。
「幻水SP」の舞台は、太陽暦453年。「幻水V」と「幻水I」の間から物語が動き出し、今後はさらに多様な広がりへの期待も高まっている。本公演ではメインストーリー第1章、そして第2章1話までの楽曲を披露。リリースからわずか2カ月足らずという驚異的なスピードで実現したのは、本公演の演出を手掛けるMetroberry代表の山本和哉氏がゲーム本編のレコーディングや作・編曲にも携わっているからだ。実際にゲーム内の音源を演奏した奏者たちもこの場に参加しているそうで、原曲のニュアンスを再現しつつ、生演奏ならではの豊かな響きが会場へ鮮やかに広がっていた。
第一楽章から第五楽章では、謎の武装組織に襲撃されて故郷の里を失った主人公が復興を遂げるまでの軌跡を追う。「幻水I」の舞台として馴染み深い赤月帝国の首都「グレッグミンスター」、のちの解放軍へと繋がるオデッサとの邂逅、さらにはシンダル族が継承したと伝えられる「変化の紋章」を巡る新たな戦乱。往年の名曲アレンジと、「幻水SP」独自の楽曲が新たな歴史の始まりを鮮烈に告げる。スクリーンに映し出されたオープニングアニメーションと主題歌「カンパニュラ」のオーケストラアレンジが重なり合い、壮大な物語の幕開けを告げる高揚感が会場全体を包み込んだ。


続く第六楽章では、仲間を募るキャラクター獲得(ガチャ)の場面を彩る曲や、釣り&収穫など「幻水」シリーズには欠かせないミニゲームのBGMが会場の雰囲気を軽やかに一変させる。第七楽章では、敵の手がかりや新たな戦力を求めて「ファレナ女王国」へ。かつて「太陽の紋章」による悲劇に見舞われながらも、たくましく復興を遂げた「ロードレイク」の姿が情緒豊かに表現されていく。さらに本作は同一のロケーションでも昼夜で楽曲の表情が変化するため、夜の装いを纏ったムーディーで大人びたアレンジもオーケストラで堪能することができた。
第三部では、「幻水」の世界をさらに広げた外伝作品をピックアップ。「森の小径(幻想水滸外伝Vol.1 ハルモニアの剣士)」「枯れた大地(幻想水滸外伝Vol.2 クリスタルバレーの決闘)」は、リマスター版「幻想水滸伝 I&II HDリマスター」を経た今だからこそ、歴史の隙間に紡がれた物語として改めて愛おしさが込み上げてくるテキストアドベンチャーだ。とくに「枯れた大地」は「幻水II」の原曲も含め、シリーズの代名詞とも言える民族的なサウンドが光る名曲。それがフルオーケストラという圧倒的なスケール感で奏でられ、今なおファンに愛される“幻水の音楽”の持つ魅力を再認識させられた。

併せて「幻想水滸伝ティアクライス」から「出撃の烽火」「司書との激闘」、そして「幻想水滸伝 紡がれし百年の時」より「行く手を阻む敵」が披露された。これらは「百万世界」と呼ばれる無数の並列世界を舞台に、ナンバリングとは異なる歴史を描いたタイトルだ。そのサウンドはいずれも屈指の名曲揃いながら、コンサートなどで取り上げられる機会は極めて稀。筆者を含め当時これらの世界を旅したファンにとって、ナンバリングの枠を超えたシリーズへの愛が提示された選曲には胸が熱くなったことだろう。

ここからは「幻水I」「幻水II」「幻水III」にスポットを当てた楽曲へ。「幻水I」では、生と死を司る紋章“ソウルイーター”によって犠牲となった者たちへの鎮魂、そして新たな時代を切り拓く人々の力強い躍動が伝わってくる。「幻水II」はジョウイとの友情と決別、狂皇子・ルカやネクロードなど強烈な存在感を放つ宿敵との死闘を想起させる構成に。


「幻水III」では第一楽章でヒューゴ、クリス、ゲドの運命が交錯する瞬間、第二楽章では立ち塞がった“彼”の孤独な信念と辿り着いた結末を描き出す。ここまで音楽を通して辿ってきた旅路は、真の紋章がもたらしてきた途方もない犠牲と争いの歴史そのものだ。その果てに彼が抱いた願いは、さらなる犠牲を伴うものだったが、これをただの悪と切り捨てるのは難しい。未だに「その悲壮な運命を乗り越えようとした人々の希望を目の当たりにしていたはずなのに、どうして……」と胸を締めつけられる思いも拭えずにいる。


シリーズが刻んできた壮大な歴史を巡る旅も、ついにひとつの終着点を迎えた。そして鳴り止まない盛大な拍手に押されるようにして、再びステージへと奏者たちが姿を現す。アンコールでは「幻水SP」の楽曲や、杉山卓さんのアコーディオンを交えた「Avertuneiro Antes Lance Mao~戦いは終わった~」「エピローグ ~La passione commuove la storia(~情熱は歴史を動かす~)」などが披露され、会場全体が深い感動に包み込まれた。


過去の作品に思いを馳せ、最新作へとつながる息吹を体感できた今回のオーケストラコンサート。かつてゲーム画面の前で一喜一憂した全てのプレイヤーにとっても、かけがえのない贅沢な約4時間となったはずだ。
本公演のパンフレットや演奏楽曲をダウンロードで楽しめるカードなど、販売された関連グッズはオンラインでも購入可能。併せて「幻水I」「幻水II」のオリジナルサウンドトラックに収録されている全楽曲を生演奏アレンジで書き下ろし、コンサートホールなどで新規音源を収録したという「幻想水滸伝 I&II 30th Anniversary Orchestra Arrangement Soundtrack」(6枚組)の発売も決定したので、続報を楽しみに待とう。
「Symphonic Poem from 幻想水滸伝 Voyage」公式サイト
https://metroberry.jp/genso-voyage/
「Symphonic Poem from 幻想水滸伝 Voyage」プログラム
第一部
●アコーディオンとオーケストラのための序曲『Symphonic Poem from 幻想水滸伝 Voyage』(Accordion:杉山卓)
輝ける海よ!空よ!/「Rhapsodia~ラプソディア~」より
シーサイド・スプリング/「幻想水滸伝IV」より
大河を駆ける/「幻想水滸伝V」より
さざなみの港町~陽光~/「幻想水滸伝 STAR LEAP」より
囚われた街/「幻想水滸伝II」より
あひるぼっこ/「幻想水滸伝III」より
美しき黄金の都/「幻想水滸伝」より
●「幻想水滸伝IV」&「Rhapsodia~ラプソディア~」より
・第一楽章
この世にあらざる生命/「Rhapsodia~ラプソディア~」より
昔、ラズリルという街で/「Rhapsodia~ラプソディア~」より
大海の王者/「Rhapsodia~ラプソディア~」より
失ったもの/「Rhapsodia~ラプソディア~」より
Rune of Punishment ~呪われた紋章をめぐり~/「Rhapsodia~ラプソディア~」より
・第二楽章
La Mer/「幻想水滸伝IV」より
出航/「幻想水滸伝IV」より
戦闘/「幻想水滸伝IV」より
丘をのぼって/「幻想水滸伝IV」より
輝ける海よ!空よ!/「幻想水滸伝IV」より
宿命の対決/「幻想水滸伝IV」より
罰の紋章/「幻想水滸伝IV」より
・第三楽章
大陸の風/「Rhapsodia~ラプソディア~」より
血族の誇り/「Rhapsodia~ラプソディア~」より
群島の精鋭/「Rhapsodia~ラプソディア~」より
この時がくるまで/「Rhapsodia~ラプソディア~」より
消滅した邪気/「Rhapsodia~ラプソディア~」より
もうひとつの世界/「Rhapsodia~ラプソディア~」より
●「幻想水滸伝V」より
帰還
遥かなる旅路
強大な敵
絶望と希望
大河と太陽
闇に哭する光
108の星々がつむぐ物語の果てに
第二部
●4手ピアノとオーケストラのためのセレナーデ「幻想水滸伝」(Primo:東野美紀、Secondo:蒲地あかり)
静寂の郷/「幻想水滸伝 STAR LEAP」より
星眠る郷/「幻想水滸伝 STAR LEAP」より
芽吹きの広野/「幻想水滸伝 STAR LEAP」より
月夜のテーマ/「幻想水滸伝」より
Orizzonte/「幻想水滸伝II」より
●「幻想水滸伝 STAR LEAP」より
・第一楽章
清き水の郷
郷の木漏れ日~本拠地の日常01~
苦難を越えて
迫る死線
兆し~行く手を阻む者(幻水III)幻水SPアレンジ
流転の紋章
涙が止まるまで
・第二楽章
静けさの中に(幻水II)幻水SPアレンジ
芽吹きの広野
未だ見ぬ頂~ダンジョンBGM01~
魔物たちとの対決(幻水I)幻水SPアレンジ
美しき黄金の都(幻水I)幻水SPアレンジ~陽光~
なごみBGMⅠ(幻水II)幻水SPアレンジ
美しき黄金の都(幻水I)幻水SPアレンジ~星明~
三華繚乱!乱凛天戦
・第三楽章
神聖なる誓い
最強の敵(幻水I)幻水SPアレンジ
黒き盤上の策謀
若き勇者たち(幻水II)幻水SPアレンジ
臨界点突破
苛烈なる交響
・第四楽章
知略を尽くして
作戦(幻水II)幻水SPアレンジ
幻想の世界へ(幻水I)幻水SPアレンジ
拭えぬ疑念
常闇から出づる影
ふるさと、灰の記憶
・第五楽章
郷は再び花開く
戦旗を掲げよ!
鉄騎の進軍
禍は祓えず
ただひとりのために
カンパニュラ
・第六楽章
未来への一歩
宿星の誓い~ガチャSR~
宿星の祝祭~ガチャSSR~
ルアー・スウィング!
ベジ・バンバン!
レッツ・クッキング!
・第七楽章
さざなみの港町~陽光~
大河を駆ける(幻水V)幻水SPアレンジ
ロードレイク再興(幻水V)幻水SPアレンジ~陽光~
ようこそロヴェレ学園へ~陽光~
兆し~修闘
激突!修闘
ようこそロヴェレ学園へ~星明~
第三部
●「幻想水滸伝」外伝作品より
森の小径/「幻想水滸外伝Vol.1 ハルモニアの剣士」より
枯れた大地(オープニングテーマ)/「幻想水滸外伝Vol.2 クリスタルバレーの決闘」より
出撃の烽火/「幻想水滸伝ティアクライス」より
司書との激闘/「幻想水滸伝ティアクライス」より
行く手を阻む敵/「幻想水滸伝 紡がれし百年の時」より
●「幻想水滸伝」より
失われた日々
Penpe
緊迫のテーマ~インパクト編
悲しみのテーマ~アンサンブル編
出陣のテーマ
感動のテーマ
幻想の世界へ
最強の敵
REQUIEM
●「幻想水滸伝II」より
・第一楽章
回想
働かざる者食うべからず
郷愁
過ぎた日々
戦争2
・第二楽章
光のない戦場
Mad Luca
Gothic Neclord
悲しみのレクイエム
怒りの鉄拳
銀狼
●「幻想水滸伝III」より
・第一楽章
丘から吹く風
旅立ち
騎士の誇り
ビネ・デル・ゼクセ
大空洞
煌めく刃
明るい農村
かつての英雄を求めて
・第二楽章
帚星の行方
円の宮殿
交錯した思い
最後の勝負
おだやかな日々へ
アンコール
●EC1
1曲目:ネタバレになるため曲名は割愛
2曲目:湯けむり七彩~陽光~
●EC2
1曲目:Avertuneiro Antes Lance Mao~戦いは終わった
2曲目:La passione commuove la storia~情熱は歴史を動かす
本コンテンツは、掲載するECサイトやメーカー等から収益を得ている場合があります。

































