かわいい少女×カッコいい敵キャラ×魅力的なストーリー！良作RPG「咲う アルスノトリア」レビュー

「咲う アルスノトリア」は、ニトロプラス原作で作られたRPG。ジャンルは「本当の魔法を探すRPG」と銘打たれている。文字通り、本作において重要な意味を持っているのが「魔法」だ。本作の舞台は、「不可視の印」によって人には見ることができない魔法学園都市「アシュラム」。プレイヤー＝主人公は魔法使いとして、この学園で教師を務めることになる。

魅力のコアはストーリー！心の動きを丁寧に描く

「魔法使いとしてと」書いたものの、主人公は厳密には魔法使いではない。人には見ることができない「アシュラム」に入ることができたり、「アシュラム」にある「大目録」を利用できたりといった主人公の特性上、魔法使いと思われているだけだ。ゲームスタート時点で主人公は記憶喪失になっており、自分が何者かもわかっていない。つまり、プレイヤーと、条件はほとんど一緒といえる。

そもそも、魔法使いであることを証明する「魔法使いの血」を主人公は持っていない。このため、生徒の中には主人公を魔法使いと認めていないものもいる。主人公は魔法使いとして、教師として、認めてもらうために行動しなければならないわけだ。

少女たちが何者かの襲撃を受け倒れている衝撃的な場面からはじまり、主人公が記憶喪失となって生徒たちに認めてもらうために行動していく…というストーリーの流れは非常に巧み。プレイヤーは主人公と同様、冒頭で何が起きたのかわからぬまま、とにかく生徒たちとの物語を体験していくことになる。だからこそ自然に感情移入でき、作品内に引き込まれてしまう。

プレイヤー＝主人公に、生徒たちの反発や不安が理解できるようになっている点もニクい。本作における生徒たちは、人間ではない。生徒は全員、「ペンタグラム」と呼ばれる精霊たち。いずれもキュートな少女で、「かわいいVSカッコイイ」という本作のテーマにおいて「かわいい」を担う存在だ。一方、「カッコいい」を担うのが「騎士」たち。「騎士」は「ペンタグラム」や「アシュラム」を探しており、見つけ次第滅ぼそうとしている。このため、「ペンタグラム」たちは、なんとしても「騎士」から逃れたい。そのカギとなるのが「魔法使い」。だから、主人公が「魔法使いの血」を持つ魔法使いなのかどうかは、彼女たちにとって死活問題となる。反発したり、不安になったりするのも当然なのだ。

ストーリーの流れは王道。ただ、見方によっては「ベタ」とも思える。しかし、それでも引き込む力は強い。心の動きを含めて丁寧に描いているからだ。ストーリーは、本作の魅力のコアといっていいだろう。数々の魅力的なシナリオを生み出してきたニトロプラスが原作を手がけているだけはある…とうならされた。

スキルと秘術を選んで戦うリアルタイム制コマンド入力型バトル

本作のゲームシステムは、一般的なスマートフォン向けRPGのフォーマットを踏襲している。クエスト一覧からクエストを実行。クエストは物語進行を担う「アドベンチャーパート」と、敵と戦う「バトルパート」から成り立っており、クリアすることで新しいクエストがアンロックされていく。

「バトルパート」は、リアルタイム制のコマンド入力型。バトルが始まると、「ペンタグラム」たちは自動的に通常攻撃を行ってくれる。プレイヤーが行うのは、スキルの使用と「秘術」と呼ばれる必殺技的なコマンドの使用。いずれも、時間経過に伴い使用可能になり、一度使用すると再度クールダウンを待つ必要がある。なお、スキルの使用などをオート化することも可能だ。

スキルは、「ペンタグラム」本人が持つものと、装備品である「シジル」に設定されたものを使用できる。それぞれゲージが分けられているので、「ペンタグラム」の持つスキルを補うような「シジル」を装備すれば、スキルを連携させてより効率的に戦うことが可能だ。

また、「秘術」は、一定時間内に連続して使うことで「連携」が可能。より強力な効果を発動できる。「秘術」は「ペンタグラム」に対して設定されているので、パーティ編成を工夫することで、より効果的に「秘術」を連携させられるだろう。

バトルをマニュアルでプレイした場合、プレイヤー自らバトルしている感覚は強く味わえる。というのも、スキルが貯まるテンポが早く、プレイヤーの入力頻度が高いからだ。とはいえ、難易度は低め。少なくとも第一章に関しては、スキルが貯まり次第発動していれば、負けることはないだろう。

クエストによっては、ボス戦が用意されている。「ペンタグラム」に立ちふさがる敵は、「界層の守人」と呼ばれる存在と「騎士」だ。本作の舞台となる世界は、現実世界と同様、「倫敦（ロンドン）」や「巴里（パリ）」などの地名が存在している。「ペンタグラム」たちがいる「アシュラム」は、「倫敦（ロンドン）」に存在する精霊の世界だ。ただ、現実世界と同様の地名が出てくるものの、現実世界とは微妙に異なっており、たとえば「巴里（パリ）」はフランスの首都ではなく、「大瑛帝国」の支配下の地名。本作の舞台となる世界は「大瑛帝国」に支配された世界なのだ。そして、この世界は「界層」によって分かれている。

「ペンタグラム」たちはゲームスタート当初、「界層」のひとつである「倫敦」に縛られており、他の「界層」へ自由に行き来することができない。しかし、「界層」を守る「界層の守人」を倒すことで、他の「界層」への移動が可能になる。したがって、「界層の守人」を倒すことは主人公たちの目的のひとつだ。

「騎士」たちは、先に書いた通り、「ペンタグラム」たちを滅ぼす存在。なので、「騎士」と接触した場合、「ペンタグラム」たちは生き延びるために戦うこととなる。「滅ぼす存在」ということは、当然「滅ぼせる」だけの強大さを持っているわけで、「騎士」たちの存在感は圧倒的。貴族的なダークなビジュアルもカッコいいが、バトルで表現される強さもまた、敵ながらカッコいいと思わせてくれる。戦い甲斐のある存在だ。

魅力的なキャラクターを育成する楽しさ！王道の良作スマホRPG

「ペンタグラム」たちはクエストをクリアすることで経験値を獲得し、レベルアップしていく。そのほかにも、育成用アイテムを使った強化が可能だ。キャラクターが持つレベルの他、スキルレベル、進化によるレア度のアップ、限界突破によるシジル装備枠のアップ、そしてシジルの強化…と、育成要素は豊富。

ストーリーの魅力もさることながら、「ペンタグラム」たちも負けず劣らず魅力的だ。なので、お気に入りの「ペンタグラム」を自分好みに育てていくのは非常に楽しい。ただ、「アドベンチャーパート」で出てきた「ペンタグラム」が獲得できるかどうかはガチャに委ねられる。自分の推しキャラがなかなかゲットできない状況になると、辛いかもしれない。

また、これは非常に個人的な感想だが、「騎士」も獲得できると嬉しいと感じた。本作を美少女ゲームと捉えると、「騎士」を獲得できる必要などない。だが、「カッコいい」というテーマの一翼を担うだけあって、「騎士」はカッコいい。ライバル役がカッコいいとストーリーの魅力がアップするものだが、その点「騎士」は全く不足なし。さらに、かつて主人公に立ちふさがったライバルが味方になる…というのはアツいシチュエーション。だからこそ「騎士」もパーティに加えたいのだ。…いや、もしかすると、ゲームのこの先の展開でそういうシチュエーションがあるのかもしれない。楽しみにプレイを続けたい。

最後にまとめると、本作は「かわいい少女」「カッコいい敵キャラクター」、そして「魅力的なストーリー」という三拍子が揃った、完成度の高いスマートフォン向けRPGだ。RPGファンなら、プレイする価値はある。興味があるなら、まずは、第一章を最後までプレイしてみてほしい。「ペンタグラム」「騎士」「界層」「大英帝国」といった一通りの設定が出そろい、本作がどういう作品でどこが魅力なのか、概ね理解できるだろう。