インティ・クリエイツが2022年7月28日に発売予定のNintendo Switch用ソフト「蒼き雷霆 ガンヴォルト 鎖環」。本作の開発に携わった稲船敬二氏、會津卓也氏、津田祥寿氏へのインタビューをお届け。
「蒼き雷霆(アームドブルー) ガンヴォルト 鎖環(ギブス)」は、「蒼き雷霆 ガンヴォルト」シリーズの3作目。2016年に発売された前作「蒼き雷霆 ガンヴォルト 爪(ソウ)」から、6年ぶりとなる続編だ。
6年の間、1作目と2作目をセットにした「蒼き雷霆 ガンヴォルト ストライカーパック」のNintendo Switch移植や、「爪(ソウ)」に登場したキャラクター“アキュラ”が主人公のスピンオフ「白き鋼鉄のX(イクス)」を2作発売するなどの動きがあったものの、正当な続編としては長い間、沈黙があった「ガンヴォルト」シリーズ。そしてついに発表された「鎖環(ギブス)」は、お馴染みの“ガンヴォルト”に加え、剣戟で戦う新キャラクター“きりん”をプレイアブルキャラクターとするなど、新鮮な要素を取り入れたものとなっていた。
シリーズの長い沈黙の理由や、きりんを登場させた真意など、本作のプロデューサー・會津卓也氏、ディレクター・津田祥寿氏、エグゼクティブプロデューサー/アクション監修・稲船敬二氏の3名に、気になる部分の話をうかがった。本作を心待ちにしていた方はもちろん、どんなゲームか気になっている方にも、読んでいただけたら幸いだ。
インタビュー・編集:TOKEN
文・構成:小林白菜
――「ガンヴォルト」が登場する作品としては「蒼き雷霆 ガンヴォルト 爪(ソウ)」以来久々になりますが、タイトル発表に至るまでの経緯をお聞かせください。
會津:もともと1作目の「蒼き雷霆 ガンヴォルト」を出したタイミングで「3作くらいは作りたいよね」という話は津田としていたんです。2作目の「爪(ソウ)」まではそれなりにスムーズにリリースできたんですけど、3作目を作るにあたって、「爪(ソウ)」でアイデアを出し尽くしてしまった部分があるので、構想を練る時間が欲しいということになりました。
津田:會津から「そろそろ作ってほしい」という話があったので、なんとなく頭にあったアイデアをもとに、まずは最少人数で作り始めていったんです。その段階できりんという女の子が剣戟で戦う、ということは考えていたんですけど、いざ作ってみるといろいろな問題がありまして。ずっと作り直しているうちに、1年経って、2年経って……。
會津:稲船さんには開発を始める段階で、「今回も監修をお願いします」と伝えていたものの、仕様が全然固まっていなかったため、その間は一度も見せることができていませんでした。
開発が始まって2年くらい経ったときにタイトルの発表を行ったんですけど、それは試行錯誤が続いて、なかなか前に進めずにいた開発へのカンフル剤的な意味合いもあったんです。発表前、はじめて稲船さんにその時点での仕様を見せに行き、本格的に監修をしていただくまで、闇の中をさまよっているような状態でした。
稲船:ロムを渡されて「プレイしてみてください」と。「なんだこりゃ」というくらい、明らかにアクション部分で迷いに迷っていることが分かる内容でした(笑)。まずはもっと引いた視点で、全体を見てみようとか、「もっと軽く考えたほうがいいんじゃない?」とか、そういう話からスタートしましたね。少しずつ迷いはなくなっていったんですが、最近まで「まだちょっと迷ってるよね」ということの繰り返しでした。
會津:カンフル剤としての発表のはずが、しばらくはさらに迷っていってしまったんですよね。
稲船:難しいことをやろうとしていたので、迷うのは当然なんです。プレイアブルキャラクターが過去作と同じガンヴォルトなら、迷わないと思うんですけど。きりんという新しいキャラクターで、過去作より面白いアクションを作ろうっていうチャレンジをしているので。ただ、その迷い方が半端じゃなかったですね。
會津:「爪(ソウ)」のときもそうだったんですけど、シリーズで同じキャラクターをメインにし続けていると、どうしてもゲームが複雑化して、難易度が上がっていってしまうので、どんどん初心者が入りづらくなってしまうんです。「新キャラクターにすれば、プレイヤーがみんな同じスタートラインに立てるよね」という理屈なんですけど、今回は思った以上に苦戦しました。
思った以上にというか、「爪(ソウ)」で追加したアキュラが上手く行き過ぎたんですよね。その反動でドツボにはまってしまいました。
――アキュラは、派生作品の「白き鋼鉄のX(イクス)」がシリーズ化しているくらい、いい流れを作りましたからね。
會津:そこを稲船さんに相談してアドバイスを受けて、やっといまはいい感じになったかなというところです。
稲船:いやぁ、いまはすごく面白いアクションになっていますよ。
――きりんを新たにプレイアブルキャラクターにする上で、クリアすべき課題というのはどういった部分だったのでしょう?
會津:今回、“雷霆煉鎖(ライテイレンサ)”というアクションを売りにしているのですが、これが生まれるまでが大変だったんです。その前に“ワープ斬り”を使えるのがいいんじゃないかという話になったものの、ワープ斬り自体、いろいろと煮詰まっていた中で、あまり深く考えずに出たアイデアだったように思います。
試しに実装したところ「思ったよりいいかも」という感触だったので、これを稲船さんにも見ていただきながら調整していって、「よくなったね」と言っていただいた辺りで、ようやく「行ける!」という手応えに変わりました。
津田:「お札を投げて、敵を弱体化させて斬る」といった辺りも初期からのアイデアだったんですけど、それだけだとまだ面白味が足りていなかったんですよね。本当に、“雷霆煉鎖”が生まれたことで「行けそう」という感触になりました。
會津:それまで各要素がバラバラだったよね。「お札を投げる、相手を止める、斬る」っていうアクションが1つ1つバラバラで、「何が気持ちいいの?」っていう。
津田:いまのがまさに稲船さんに指摘していただいたところですね。
稲船:やろうとしていることは分かるんだけど、料理できていない。素材を並べただけで「はい、食べて!」と言われても、それだけじゃ美味しくないんですよね。
會津:それまでは、やれることを提示して「はい、やってみてください! 何をしてもいいですよ」みたいな作りになっていたんです。「こうして遊ぶと楽しいよ」というのを、アクションの繋がりで提示したほうがいいという指摘を受けて、要素を再構築していきました。
――インタビューの前に、2021年に公開された2本のアクションミーティングの動画を改めて拝見しましたが、比較すると、きりんのアクションに著しい進化を感じました。
會津:1本目の映像は、暗闇を彷徨っていたときのものです(苦笑)。
稲船:迷っている過程をずっと見てきた身からすると、「あれとあれがこう噛み合って、だからこうなったよね。なるほどね」と。最終的にはいい形でまとまったなと思いますね。
會津:その試行錯誤の過程を知らない、たとえばうちの新人スタッフなどにプレイしてもらっても「面白い」と言ってもらえているので、いくつかある最適解のうちのひとつに、限りなく近いアクションになったはずです。プロデューサーとしては、自信を持ってそう言える仕上がりになっています。
津田:本当に、いいところに着地できたなと思います。
稲船:「適度な簡単さ」みたいなものって重要だと思うんですよ。アクションの上手い人がカッコよく戦えるのは当たり前なんですけど、そこそこの人が「俺、上手い! 凄くない!?」って自分を褒めたくなる瞬間が必要だと。迷っていた頃は、それが無かったんですよね。「お前は上手いからカッコよく戦えてるけど、俺はできないよ」って思ってしまったら、「面白くない!」になっちゃいますから。
ゲームのアイデアがいくら良くても、面白くなかったら先に進みたくなくなりますよね。ちょっと適当なプレイでも「俺、凄い技出せた!」と思える瞬間があって、コツを掴み始めたら、もう少し難しいテクニックにもチャレンジしていける。そんなふうに、順を追って楽しみ方が変わっていくアクションが成り立つ仕上がりになったかなと思います。
――きりんは主な攻撃手段が斬撃ということで、過去のキャラクターとは性質が異なっていますが、このきりんのアクションの気持ちよさというのはどういった部分にあるのでしょう?
會津:「ガンヴォルト」シリーズは1作目から、“誘導”というのが共通のアクションとして入っています。敵をロックすれば、誘導によって雷撃が当たるっていうアクションですね。今作のきりんも、最終的に行き着いたのは“お札”でマーキングすれば、ワープ斬りで敵を倒せるっていうアクションになっています。
ただ、ガンヴォルトの場合、ロックと雷撃の両方をこなさないと成立しなかったものが、きりんの場合はお札によるマーキングを使わず、剣戟だけでもある程度自由に遊べます。その分、間口が広く、より多くの人が楽しめて、遊んでいるうちに“雷霆煉鎖”を覚えていけばいい、といった調整になっているんです。
――ベーシックなアクションとしても楽しめつつ、ちょっとずつ発展形の操作を覚えていってもらえるようなバランスなんですね。
會津:ステージの作り自体も、最初のほうは剣戟メインでも戦えるんですけど、徐々に“雷霆煉鎖”を覚えていけるようなものになっています。ゲームを進めるごとに新しいことができるようになる嬉しさを、感じていただけたらいいなと。
稲船:多分ゲームを始めたばかりの序盤のほうって、余裕があるところは“雷霆煉鎖”に持っていけるけど、余裕がないところは剣戟で戦うしかないんです。でも、余裕がないときに剣戟だけでも乗り切れるっていうのが、このゲームの間口を広くしているポイントなんだと思います。“雷霆煉鎖”が必須だとしたら、難しい局面でパニクってしまうはずですから。
「ここだったらお札を貼れるよね」と思えるような、余裕があるところで“雷霆煉鎖”の練習をして、難しいところでもちょっとずつ出来るようになっていって、操作が熟練していく。そうやって自分の腕前に合わせてプレイスタイルを選んでいけるのがいいんじゃないかなということです。
――そう考えると、これまでのシリーズは最初からなかなか高度な操作を求められてきたように思います。
會津:そうですね。「ロックマンX」くらいの操作技術に加えて、雷撃を流さなければいけないぶん、プラスワンの操作が必要ですから。
――ここまでの話だと今回のきりんは、すべての操作をマスターするとなると、さらに一段階複雑になった印象を受けるのですが。
會津:ただ、きりんのお札は、敵をホーミングするんです。ある程度敵のいる方向に向けて投げていけば「ピッ! ピッ! ピッ!」と勝手にくっついてくれるんですよ。あとは斬撃ボタンを押せば「ババババッ!」とワープ斬りでまとめて攻撃できるので、想像よりは簡単に操作できると思います。
――なるほど! それは気持ちよさそうです。
稲船:最初はホーミングしてなかったんですけどね。
會津:むっちゃ難しかったですね。
稲船:イラッとしましたね(笑)。
津田:まだ調整は続けていますが、ほぼ完成形になっています。難しいのは、同じ方向に敵が2体いたとき、どちらをホーミングするかといった部分のバランス調整なのですけど、そこは今回新たにアクションディレクターとして参加してくれている宮澤(※宮澤拡希氏。「Bloodstained: Curse of the Moon」のディレクターなどを担当)というスタッフが調整しています。
會津:なぜこんなギリギリまで調整を続けているかというと、最近になって津田が「もっと簡単にしたい!」と言い出したからなんですけどね。
――ガンヴォルトも引き続き操作キャラクターとして登場するようですが、彼はどんな位置づけになるのでしょうか?
會津:ガンヴォルトに関してはまだ詳しく話せない部分も多いのですが、もちろんシリーズ主人公なので、切り替えて遊べるような形にはなります。
津田:前作「爪(ソウ)」では「ガンヴォルトよりアキュラのほうが強いよね!」といったユーザーさんの意見をかなり多く見かけまして……。それもあって今回、ガンヴォルトは“めちゃ強”になっています。
――めちゃ強! それはストーリー展開的にも理由付けがされている感じですか?
津田:もう、あり得ない強さを手に入れていますので、その理由ともどもご期待いただければと。
會津:ゲーム性として考えたときに、片や「すごく強いガンヴォルト」、片や「テクニックをマスターすれば強いけど、普通に操作していたらガンヴォルトよりは弱いきりん」となると、ガンヴォルトしか使わなくなるんじゃない? と思うかもしれません。そこのバランス取りに関しては、先ほども名前の出た宮澤が悩みつつ試行錯誤してくれています。
稲船:大丈夫だと思いますよ。このあいだ、ゲームのチェックで僕がきりんを操作していて、攻略に苦労していたら「ガンヴォルトに切り替えてみてください」って言われたんだけど「嫌だ!」ってなったんですよ(笑)。
一同:(笑)
稲船:プライドがあるから! 「ガンヴォルトに切り替えたら先に進めるのは分かってるけど、もうちょっと頑張りたい」と。「もういいや! 先に進みたい」と思うときもあるじゃないですか。そのときは切り替えればいいんです。そんな感じで「どうしようもなくなるまできりんで頑張りたい!」と思ってもらえるバランスになっているんじゃないかと思うんですよね。
會津:あと、ガンヴォルトのほうが強いと言っても、その力が手放しで使えるわけではないんですよね。「条件が揃うとめちゃめちゃ強い」という性能です。
稲船:その強さも、「マリオがスターを取ったとき」ほどの強さではないです。
會津:いや、条件が揃えば「マリオがスターを取ったとき」と変わらないくらいの強さにはなっているかもしれません(笑)。「穴に落ちなきゃ大丈夫」くらいの。
津田:あと、シリーズでお馴染みの、コンボが一定数を超えると歌が流れる“クードス”システムにも、キャラクターを使い分けることによって歌が流れ易くなるといった調整が入っています。そういった部分でも、きりんを使うメリットをいろいろと用意しているので、「ガンヴォルトだけ使っていればいい」というものにはなっていないと思います。
會津:きりんとガンヴォルト、バランスよくプレイするのがこのゲームをいちばん楽しめる遊び方だと思います。意固地になってきりんだけで遊ぶのも、ちょっと辛いかなというバランスですね。
――クードスと言えば、今作「鎖環(ギブス)」でも、お馴染みのモルフォが登場するということで、前作「爪(ソウ)」の結末を思うと、立ち位置が気になるところですが。
會津:ストーリーに関わる部分は、詳しいところまでお伝えすることはできないのですが……。ただ、やはり「ガンヴォルトと言えばモルフォ」ではあるので、どういう形でモルフォが登場すれば納得感が高いのか? というのを突き詰めた落とし所にはなっています。これ以上は、プレイヤーの皆さんの楽しみを奪ってしまうので、発売まで言えることはありません(笑)。
――気になりますが、質問の方向を変えましょう(笑)。ゲーム的には過去作同様、“クードス”を貯めるとモルフォが歌ってくれるというシステムでしょうか?
津田:システム的にまったく同じではないのですけど、ゲームが盛り上がったときに、歌でさらに高揚感を高めてくれるであったり、操作キャラクターが倒れたときに助けてくれるといった役割は、従来どおりです。
會津:あと、皆さんに改めてお伝えしておきたいのですが、モルフォは「“サイバーディーヴァ”という第七波動(セブンス)が作り出した“幻影”」なんです。そして「“サイバーディーヴァ”という第七波動(セブンス)」自体は“能力”のことを意味しています。これを前提にしつつ、ストーリーの流れとしては一度シアンと一体化しているので「シアンなの? モルフォなの?」という疑問があるかもしれませんが、そもそもモルフォは「“サイバーディーヴァ”という第七波動(セブンス)」の能力であると。それを念頭に置いていただければと思います。
津田:Twitterなどでよく「えっ、幻影?」と驚かれているつぶやきを見かけるのですが、モルフォはもともと幻影なんです。
會津:1作目の登場シーンを見返していただくと分かりますが、最初の自己紹介で「“サイバーディーヴァ”という名前の幻」と言っていますから。もともとそういう存在です。
――けっこう複雑と言いますか、作品ごとの変化も大きいキャラクターですからね。
――前作は全体的なストーリーとしての結末自体、いろいろな意味で余韻の残るものでした。その先を描くであろう「鎖環(ギブス)」のストーリーの見どころについても、話せる範囲で教えていただければと思います。
會津:全体的なストーリーについても、現時点で導入部の世界設定だけは解禁していますけど、発売まで、これ以上の情報は出さない予定です。本作のジャンルは“ライトノベル2Dアクション”で、ストーリーはその“ライトノベル”の部分なので、物語も商品性の一部だと考えています。ですので、そこの価値が損なわれるプロモーションは、しない予定です。
――なるほど。そこも実際にゲームをプレイして明らかになるということですね。とくに新キャラクターのきりんは、今回の戦いに身を投じるに至った背景などが気になるところですが。
會津:そのあたりも“ライブノベル”で明らかになります。ゲーム中、キャラクターが喋りまくるので、そこで知っていただければと。
――ライブノベルも「ガンヴォルト」シリーズの特徴のひとつですが、過去作と変わった部分はありますか?
津田:今回、ライブノベル部分のテキストにログが搭載されます。アクションしながらだと台詞が把握できないという声を多くいただいてきたので、サブメニュー画面から、過去の台詞を見直せるようにしました。テキスト主体のアドベンチャーゲームにはよくある機能ですね。
會津:それから、ハードが3DSからSwitchに変わったことで、1度にウインドウに入る文字数が増えています。
津田:3DSでは解像度に伴う視認性の問題や、ウインドウが斜めになっていることもあって、文字数が制限されていましたから。今回もウインドウは斜めですけど、かなり読みやすくなっています。
會津:一度に表示できる文章量が多くなると、当然情報量も増えるので、結果的に世界観やキャラクターをより深く掘り下げることにも繋がりました。
津田:あと、ウインドウの左にあるキャラクターの顔のイラストは、以前から「ゲームプレイにはちょっと邪魔かも」と言われていたんですけど、これは過去作よりも大きく、バストアップを表示しちゃいました。ただ、このイラストはオプションで非表示にもできます……僕は推奨しませんけど。
會津:位置関係によっては、敵がイラストの後ろに隠れてしまって、そこから攻撃してくるということがあり得るんですよね。強力なボスと戦っているとき、ボスが攻撃の予兆動作をしているのに、見えないみたいな(苦笑)。それがストレスになる方は、非表示を試していただくとよいかもしれません。
津田:個人的には、「それも含めてライブノベルかなぁ」と思っているんです。「画面にキャラの大きな顔がある嬉しさ」というのがあるんだと1作目のときからずっと言っていて、僕以外のチーム全員に反対されたくらいなんですけど、僕の権限で無理やり入れました。そこだけは譲れなくて……。
――本当に強いこだわりがあるところなんですね(笑)。
津田:3作目ともなると、僕が言わなくても既に入っていましたけどね。
――そこは好みの問題になってくると思うので、選択できるのは嬉しいです。
――過去作のキャラクターたちが登場して、アクションをサポートするという“イマージュパルス”も気になるのですが、ここもやはり、すでに出ている情報以上のことをお聞きするのは難しいでしょうか?
會津:そうですね……やはり言えることはあまりないのですが。ただ、シリーズファンの方に喜んでいただくには、まったく新しいキャラクターよりも、思い入れのあるキャラクターが活躍したほうがいいだろうと思って入れた要素になります。あと、いままでに登場したキャラクターなら、過去の資産を使い回せるかなぁという思惑もあったのですが、意外と使い回せないキャラクターが多くてですね……思っていたよりずっと工数は増えています(苦笑)。
津田:「リストの中にオウカ(過去作のキャラクターの名前)と書かれているけど、オウカのドット絵なんか無いじゃん!」みたいなやりとりが開発中にありました。ドットではないイラストならたくさんあるんですけどね……。
會津:「鎖環(ギブス)」で初めてドット絵を見ることになる過去作のキャラクターがたくさん登場します。
――「爪(ソウ)」のときにインタビューをさせていただいた際、稲船さんから「2作目以降は開発に掛かる工数を落とせる」という話が出ていたはずですが、いまの話とは矛盾しているような……?
會津:「爪(ソウ)」のときも稲船さんに怒られていますね。「お前ら、作り方ヘタ!」って。
稲船:「使い回す」というのは、ゲームのプロデュースとしては基本なんです。過去の資産を上手く使えば、同じ工数でも、その分ほかのところを作り込めるわけですから。「鎖環(ギブス)」でもそうやって作れれば良かったんですけど……結局すごい工数になっています。
會津:AAAタイトルほどではありませんが、インティ・クリエイツとしては過去最大規模の予算になっています。ちょっとびっくりするくらい掛かりました(苦笑)。
稲船:「會津のプロデュース、失敗!」って感じ。
會津:申し訳ございません。
――ゲームのボリュームに関しては、いかがでしょう?
會津:最初から遊んで、ストーリーも全部見ながらエンディングまでプレイする際のボリューム感は、過去作と変わらないと思います。一方で“イマージュパルス”の収集などのやり込み要素も含めたボリュームは、上がっています。
たとえば「ステージの数を2倍、3倍にしよう」となったとしても、エンディングに到達するのが辛くなってしまうだけだと思うんです。エンディングまでは適度なボリューム感でたどり着けて、それを繰り返しプレイしたくなるような工夫のほうに力を入れています。
収集要素はもちろん、アップデートもしていく予定なので、トータルのプレイボリュームは増えていると考えていただければと。
津田:アクションゲームって「何度も遊びたい」と思ってもらいやすいジャンルだと思います。加えて、「ガンヴォルト」は物語を重視した作りでもあるので、好きな小説をたまに読み返したくなるような感覚で、繰り返し遊んでもらえるバランスを目指しました。
會津:クリアするのに50時間必要なゲームを「久々にちょっと遊んでみよう」みたいになかなか思えないですよね。「ガンヴォルト」シリーズは慣れている人だと40分~1時間くらいでクリアできちゃいますから。会社から帰ってきたプレイヤーの方が「今日も1週クリアしておくか!」と思えるくらいのボリューム感がちょうどいいのかなと思っています。
――今回もパッケージ版をリリースするということで、限定版のアピールポイントも教えていただければと思います。
會津:アピールしたいところはいくつかありまして、まずは描き下ろしのボックスなのですが……こちらは絵がまだ完成していなくて。「どんな絵になるんだろう?」と楽しみにしている方は、すみませんがもう少しお待ちください。
同梱物については、まずフルカラーの設定資料集が入っています。4年間作り続けているので、設定資料はむちゃくちゃ多いんです(笑)。かなりしっかりした資料集になっているので、ご期待ください。
あとは、弊社の場合、いつもは別売しているサウンドトラックCDを、今回は限定版に同梱しています。サウンドプロデューサーの山田というスタッフが作っているのですが、本来は1枚約2000円という単価で、2枚組だと4000円くらいになるものが、限定版に入ってしまっているんです。
それから今回、わんボルトという可愛らしいキャラクターが登場するんですけど、このわんボルトのアクリルキーホルダーも同梱されます。ちなみに、きりんが連れている獣――開発スタッフでは“雷獣”と呼んでいるんですけど――この雷獣のことをわんボルトと呼んでいる方がたまにいるんですけど、この2匹は別のキャラクターですからね(笑)。きりんが連れているのはわんボルトじゃなくて、このキーホルダーのキャラがわんボルトです。そこだけ言及しておこうかなと。
――これらがすべて入って、通常版との金額差4700円と考えると、お得に思えますね。
會津:税込で1万円弱くらいになるので、ちょっと高めかなと感じる方もいるかもしれません。でも、いつもバラで販売しているものを複数同梱しているので、私的にはお買い得なセットにできたと思います。限定版を買っていただけると、とても嬉しいです。
――改めてになりますが、稲船さんから見た「ガンヴォルト 鎖環(ギブス)」というゲーム全体の注目ポイントは、どのあたりになりますか?
稲船:過去作はディレクターの津田と作ってきた感じでしたが、そこに先ほどから名前が出ている、宮澤くんっていう若手がアクションディレクターとして入ってくれているので、彼のアイデアがすごく反映されています。
これまで以上に、いろいろな考え方が融合したゲームになったかなと思うんです。基本的に「ガンヴォルト」シリーズには津田の想いがぎっしり詰まっていて、それは「鎖環(ギブス)」も変わっていません。そこに茶々を入れている俺(笑)、そしてアクションをまとめあげている宮澤くん。迷いに迷ったけど、いい形で着地したんじゃないかと思いますね。
「新しいガンヴォルト」とも思えるし、これまでの「ガンヴォルト」を楽しんできた人たちが「やっぱりこれがガンヴォルトだよね」と思えるゲームでもあるし。すごくバランスの良い形になったなぁと感じます。
俺らはもうオッサンなので、これから消えていく存在ですから(笑)。若い子たちの力がゲームに入っていかないと、今後の継続が出来なくなっていくじゃないですか。まだ作ることになるか分かりませんけど、「ガンヴォルト」シリーズの次回作を作るとなったときは、宮澤くんがもっと中心になって作ってくれるだろうっていう流れが出来たのも、ゲーム開発としていい形になったかなと思うんですよね。
會津:宮澤は「ガンヴォルト 鎖環(ギブス)」の前に「Bloodstained: Curse of the Moon」のディレクターもやっていて、実力を示してくれたので、今回も入ってきてもらったというのがあるんです。「Curse of the Moon」のときと違うのは、今回はアクションに特化したディレクションをしてもらっています。作り手のカラーが2色から3色になって、よりバラエティ感のあるゲームになったかなと思いますね。
――ありがとうございます。最後に、「ガンヴォルト 鎖環(ギブス)」の発売を楽しみにしている方へのメッセージをお願いします。
津田:「ガンヴォルト 鎖環(ギブス)」は歯ごたえのあるアクションゲームとして、上級者プレイヤー向けの調整なども宮澤がしてくれています。けど、アクションゲーム好きはもとより、ガンヴォルト、きりんといったキャラクターや世界観が気になって「遊んでみたい」と思っている人も、楽しめるものを目指して作っているので、そういった方もぜひよろしくお願いいたします。
會津:昨今はダウンロードでゲームを購入する方も多いと思うんですけど、「ガンヴォルト 鎖環(ギブス)」にはパッケージ版があります。通常版と、限定版をご用意しましたし、発売前に予約していただければ、クリアファイルもつきますので、ぜひ、予約していただけると、本当に本当に嬉しいです。もう1度言います。ぜひ、予約してください!
稲船:このゲームはドット絵を使った、どちらかと言えばレトロな作品だと思うんですね。シリーズの最初のコンセプトとしては、それを懐かしく感じてくれる人に向けてスタートしたと思うんですよ。とくに日本のファミコンソフトなどを楽しんだ海外の人に、すごく喜んでもらえました。それはもちろん国内のユーザーさんも同様ですけど。
そういう魅力は残りつつ、次の段階に来ているんじゃないかなと。懐かしいおもしろさと、たとえばライブノベルや、歌、好きなキャラクターのイラストが魅力的だとか、そういう部分を楽しむといったところ。なんというか「単に懐かしむだけじゃないゲーム」としての完成形になったんじゃないかなと思うんです。
「ガンヴォルト」というゲームが「鎖環(ギブス)でついに完成したな」という印象があります。若手の宮澤くんが入ってくれたのもひとつの刺激だし、すごくいいバランスのゲームになりました。レトロ感とかにあまり関心がなかったり、アクションが苦手だとか、そういう人でも一度プレイしてみたら、新しい感触が味わえるゲームだと思います。ぜひ楽しんでほしいです。