妖精の存在するファンタジー世界を舞台に、錬金術でさまざまなものを作って販売する工房経営ゲーム「ノフランド物語」をレビュー。癒し系の世界観と、本格的なゲーム性という本作の魅力を紹介する。
「ノフランド物語」は、NovastarGameからリリースされた、iOS/Android向けの錬金工房経営ゲーム。プレイヤーは主人公のルシムとして、両親が経営する錬金工房の経営へ携わることになる。
スクリーンショットを見ると一目瞭然、本作のキャラクターたちはとてもかわいらしい。「萌え」的な方向でのかわいらしさではなく、ファンシーな方向のかわいらしさ。このファンシーなビジュアルから受けるイメージの通り、本作は優しく穏やかな空気感を持った作品だ。
そしてこの空気感が示す通り、本作はお手軽にプレイできる。ただ、お手軽にプレイできるからと言って決してゲーム的に単純なものにはなっていない。錬金に関するシステムは奥深いものになっている。
素材を採取しレシピを開発!商品を錬金して販売しよう
プレイヤーの行うことは、錬金工房の経営。錬金工房とは、錬金術でつくったものを販売している工房のこと。ただ錬金術といっても無からモノを生み出せるわけではなく、素材が必要。なので作業工程は現実的な工房とあまり変わらない。まず素材を採取し、素材を組み合わせて錬金、できたものを販売するという流れになる。
素材の採取は自分で行うのではなく、保有している妖精を派遣することで行う。システム的には放置ゲーム的な形式になっていて、素材の採取場所と妖精を選んだら後は時間経過を待つことになる。時間が経過すると、妖精が素材を持ってきてくれるというわけだ。
ちなみにこの妖精の姿が非常にかわいらしい。筆者は主にホラーやバイオレンスといった世界観を好む人間だが、実はゆるキャラのようなかわいらしいキャラクターも好きだ。そんな筆者の琴線に触れる魅力を、本作のキャラクターは持っている。特に初期キャラクターとして持っているコップの中で生まれた妖精、ソフィアがかわいい! ちなみに、妖精はいわゆるガチャによって手に入れることが可能だ。このかわいさは、集めたくなる…。
次の錬金は、「錬金」と「開発」という2つの工程に分かれている。「錬金」というのは、すでに保有しているレシピに基づいて商品を作り出すこと。「開発」というのは、レシピそのものを生み出すことだ。
ゲーム的な深みを持っているのがこの「開発」。複数の素材アイテムを組み合わせることで新たなレシピを作り出す。組み合わせる際には異なる種類の素材のみならず、同種の素材を複数投入することも可能。この時、「開発」によって生まれるアイテムと、素材の組み合わせは一対一ではないという点が本作に深みをもたらしている。
同じアイテムを生み出すにしても、素材の組み合わせパターンは複数存在する。なのでもしかすると、現在発見したレシピよりもより少ない素材で「錬金」可能なレシピが存在するかもしれないの。このため、最適なレシピを発見するため素材投入量を変えつつ何度も「開発」を試みることになる。これがおもしろい。試行錯誤を繰り返す過程が、実際の商品開発のようだ。
人によってはもちろん、組み合わせを探すという行為をめんどくさく感じるかもしれない。ただこの点も本作は巧みに作られていると感じた。最初に手に入る素材は2つなので、同じ素材の分量を変えて試したとしても組み合わせパターンは極めて少ない。まずは少ない素材数で組み合わせを探るというところから導入し、レシピを生み出す楽しさがわかるようになっているわけだ。
錬金でアイテムを作ったら、店頭に配置し販売する。こちらも素材の採取同様、放置ゲーム的なシステムになっており一定時間経つと店頭に配置したアイテムがなくなり、代わりに売り上げが手に入るという仕組みだ。一度アイテムを配置したら、後は別のことをやって時間経過を待てばOK。…ただ、店頭には様々なキャラクターが訪れ、メッセージをつぶやいてくれるのでそのまま画面を眺めているのも楽しい。
こうした流れを基本にしつつ、「特定素材の獲得」「一定の売り上げを達成する」といった依頼に応えることでゲームは進んでいく。レシピ開発の部分こそ奥深いが、一度開発したレシピをベースにして「素材採取」→「錬金」→「販売」というサイクルを回すだけならお手軽にプレイ可能。奥深さとお手軽さをうまく両立させていることは、本作の魅力のひとつといえるだろう。
街の人とコミュニケーション!世界観の広がり
本作における「奥深さとお手軽さの両立」は、ゲームシステム面だけに留まらない。ストーリー面についても、「工房での両親との会話」というシンプルな構図をベースにしながら、「街の人とのコミュニケーション」を導入することで世界観の広がりを実現している。
本作では工房から街へと外出することができ、街の人とのコミュニケーションが可能。不足している素材を購入したり、街の人からの依頼を受けたりといったことが行える。また、プレゼントをあげて好感度を上げるといったことも可能だ。
また、両親を巡るストーリーも日常的なものに留まっているわけではない。ストーリーが進むと、なぜ両親がルシムに工房の経営を任せたのかが語られる。その裏側には、いかにもファンタジーRPGらしい波乱が秘められていそうだ。この波乱感は、優しく穏やかな本作にドキドキ感をもたらすスパイスとして機能していると感じた。単純に優しく穏やかなだけじゃないからこそ、ストーリーの先が気になってしまう。
こうしたストーリー上の工夫、そしてゲーム性の工夫によって本作は、放置ゲームのように隙間時間にサクッとプレイ可能なお手軽さを持ちつつ、ファンタジーRPGのような奥深さも味わうことできる。
本作のキャラクターを見てかわいらしさや優しさに惹かれた人、そしてカジュアルなゲームを求めている人はもちろんのこと、ファンタジーRPGが好きな人にもオススメできる一作だと思う。そして、かわいい系のキャラクターがモノ好きという人にとっては必須の一作といえるだろう。妖精たちのかわいらしさを、是非一度体験してほしい。