日本ファルコムのストーリーRPG「英雄伝説 空の軌跡FC」(当時のタイトルは「英雄伝説VI 空の軌跡」)が2004年6月24日に発売されてから20周年が経ったということで、シリーズのファンである編集・ライターの2人が「空の軌跡」の魅力、そして「軌跡」シリーズに対する想いを改めて語り合った。

目次
  1. これまでの対談・座談会記事
  2. それぞれの「空の軌跡」との出会い
  3. エステルの物語である「空の軌跡FC~SC」の魅力とは
  4. 「空の軌跡」のキャラクター、音楽、そしてFCでのEDの衝撃を語る
  5. 「空の軌跡 the 3rd」は掘り下げのエピソードが多い
  6. シリーズ20周年記念タイトル「界の軌跡」への期待も

これまでの対談・座談会記事

それぞれの「空の軌跡」との出会い

TOKEN:タイミングはすごくズレてしまいましたけれど、今年「軌跡」の20周年イヤーということで、まずは「空の軌跡」を中心にお話できればと思います。

アサミリナ(以下、アサミ):「空の軌跡FC」から20年ですってよ……。あまり20年経っている感覚もないんですけれど。

TOKEN:私は学生時代に遊んでいたシリーズがそのまま続いているだけ、っていう感じではありますね。あまり年月を意識したことがないです。

アサミ:最近「●●発売から●周年」みたいなアレソレも流行っていますけど、私も基本的に「え、もう●年?」みたいな感じで、あまり意識しないですね。

TOKEN:私はPCで「空の軌跡FC」発売当時に遊んでいるんで本当に20年経っているんですが、当時日本ファルコム(以下、ファルコム)さんの作品をPCで遊んでいるのは結構コアなユーザーが多かったと思うんですね。それもあって、PSPで発売してヒットした時にはびっくりしました。

アサミ:私がまさにそのPSP版「空の軌跡FC」から入ってきたユーザーですね。なので私は正確には20年はまだ経っていないんですけれど。

TOKEN:アサミさんは元々ファルコムさん信者だったんですよね?

アサミ:今でこそ信者なんですけれど、元々……それこそ「軌跡」をプレイするまでは信者というほどじゃなかったんですよ。「イース」とか「ザナドゥ」とか一部のタイトルが好きだった程度で。なので、私「英雄伝説」シリーズも「イセルハーサ編」や「ガガーブトリロジー」はプレイしていませんし。

TOKEN:そうなんですね。「空の軌跡FC」が出てきた時の印象とかは覚えていますか?

アサミ:びっくりしました。というのも、私にとってはファルコムさんはアクションゲームという印象だったので、こんな王道のRPGを出してくるのかと思いましたね。

TOKEN:なるほど。私は変則的な遊び方なんですけれど、スーパーファミコン版の「ドラゴンスレイヤー英雄伝説」を一応触ってはいたんですけれど、あまり意識はしていなくて、最初に「英雄伝説」シリーズと意識してプレイしたのは「英雄伝説IV 朱紅い雫」だったんですよね。あの頃から、「空の軌跡」のアプローチの土台は既に見えていましたね。だから、「空の軌跡FC」もすごく自然に入れました。

アサミ:私とは入り方が真逆ですよね。私はファルコムさんのアクションで育っていますし、TOKENさんはファルコムさんのRPGで育っているという。

TOKEN:そうですね。だから、「空の軌跡」も、すごくファルコムさんらしいRPGだなと思いました。グラフィックとしては結構昔ながらと言いますか、デフォルメされたキャラクターを見せながらっていう、オールドタイプのRPGですけれど、それまで歩んできた自分のゲーム遍歴としても自然に入り込めました。

アサミ:私はファルコムさんはたまたまアクションで育ちましたけれど、やはり本来はJRPG畑の人間なので、驚きはしたけれどJRPGとしての出来の良さっていうのはすごく感じました。

TOKEN:私も「空の軌跡FC」はすごく印象に残っている作品で、ずっと好きな作品のひとつです。「空の軌跡FC」の時点で、ほぼやりたいことが完成されている作品なんですよね。移植されたPSPとの相性もすごくよかったと思います。

アサミ:私は実際、「空の軌跡FC」はPSP版でプレイしていますし。これがPS2だったら当時はもう「ファイナルファンタジーX」とかのグラフィックにわぁっとなっていた時期なので、わざわざPS2ではやっていなかったかもしれないです。PSPとの相性は本当に良かったと思いますね。

TOKEN:最近はまたインディーズでこの頃のようなアプローチの作品が見られるようになってきましたが、技術的にできるレベルで体験そのものを拡張させるとなると、演出のほうが手が付けやすいのではないかと思うんですよね。キャラクターが固定のモーションしか持たないってリアルじゃないですし。

アサミ:時代的にリアリティに寄るようになってきましたよね。

TOKEN:「軌跡」シリーズは「閃の軌跡」からアプローチそのものが変わりましたけれど、私は20年の間にそういう変化も楽しんでいます。

「英雄伝説 空の軌跡FC:改 HD EDITION」より
「英雄伝説 空の軌跡FC:改 HD EDITION」より

エステルの物語である「空の軌跡FC~SC」の魅力とは

アサミ:それにしても20年ですよ。当時、20年続くと思っていましたか?

TOKEN:全然思ってないですよ。なんなら私は「空の軌跡SC」で終わっていても満足でした。

アサミ:結社の話とかは「空の軌跡SC」ではまだ全然明かされていないですけれど、それでも納得していたと思います?

TOKEN:拡張しようと思えばできますけど、「空の軌跡FC」と「空の軌跡SC」は拡張する必要がある物語性ではなかったと思っているんですよね。別に謎が100%解消されるのが物語における正しさではないと言いますか。

アサミ:そこは作り手次第みたいな?

TOKEN:ええ、エステルとヨシュアの物語としては「空の軌跡SC」で満足していて、ただ「空の軌跡SC」の終わり方としてはケビンが結構フィーチャーされているのに謎が多いので、「空の軌跡 the 3rd」でケビンが主人公になるっていうのは嬉しかったですね。私、ケビン推しなので。

アサミ:私……レーヴェ推しですから……。そういう意味では「空の軌跡SC」で終わっていても、私も満足ですね。それこそレーヴェの物語は充分納得したので。

TOKEN:ちなみに、最近のファンの方だと「軌跡」シリーズ全体の主人公ってリィンあたりを思い浮かべそうですけれど、私はやっぱりエステルの主人公像が強いです。アサミさんはいかがですか?

アサミ:わかります。特に私は「閃の軌跡」四部作を一度すっ飛ばしたので、今でこそリィンの印象も強くなりましたけれど、そもそも「軌跡」シリーズの主人公はエステル色が強いんですよね。

TOKEN:エステルの物語として「空の軌跡FC」と「空の軌跡SC」とでかなりきちんと完結しているのもあって、主人公像として大きいです。結果的に2本に分かれてはいますけど、「空の軌跡FC」と「空の軌跡SC」を1本の作品として見た場合、単独で綺麗に収まっているかなと。

「軌跡」シリーズのファン同士が「空の軌跡」20周年を語り合う編集・ライター対談の画像

アサミ:うんうん。ここから風呂敷を広げたっていい、広げなくたっていい、っていう内容ではあります。

TOKEN:広げた結果が、今現在なんですけれど(笑)。一般的なゲームの考え方だと、こういう広げた要素って別のメディアに持っていくと思うんですけれど、「軌跡」はそれを全部ゲームでやろうとしているんですよね。

アサミ:コミカライズとかノベライズとかね。それはそれで出ていますけれど。「軌跡」って本当に全部の要素をゲーム内で決着つけようとしていますよね。

TOKEN:帝国編……ようは「閃の軌跡」ですけれど、その終わりで結構な要素を回収したけれど、逆に「創の軌跡」でもっと広げたじゃないですか。あの時は「なんてことをするんだ」と思いました(笑)。

アサミ:私、「創の軌跡」をやった後に「閃の軌跡」をやっているんで、そこの順番は逆ではあるんですけれど、「閃の軌跡」で大体何が起こったかは知っていたので、それこそ「軌跡」シリーズももうすぐ終わるのかな、と思っていたんですよね。特に「創の軌跡」のイメージアートでは盟主の姿も見られたので、こりゃいよいよ終わるかな、ってなっていたんですよ。

TOKEN:「創の軌跡」は、作品世界の拡張性をもうちょっとわかりやすく見せるためにあった作品だとは思っています。そういうのもあって、「軌跡」ってどこから触れているかで印象がすごく変わる作品でもありますね。

アサミ:それはあるかも。多分3Dになってからのほうが歴史は長いと思うんですけれど、私の中にある「軌跡」って「空の軌跡」の頃の2Dでドット絵で……っていう印象が強いです。

TOKEN:「空の軌跡FC」と「空の軌跡SC」はどの時代で触っても、全然古臭い感じもしなくないですか?

アサミ:なんならクオーツとか、20年経った今でも派生していますからね……。

TOKEN:クオーツシステムの面白さも込みで、良い作品ですよね。

アサミ:クオーツシステムはとても奥深いです。「空の軌跡」の時点でほぼ完成されているシステムだなあと思います。

「軌跡」シリーズのファン同士が「空の軌跡」20周年を語り合う編集・ライター対談の画像

「空の軌跡」のキャラクター、音楽、そしてFCでのEDの衝撃を語る

TOKEN:うちの編集部に、最近「軌跡」に触れ始めた人がいるんですよね。すごい昔に「空の軌跡」だけやって、そこから離れていて戻ってきたという人なんですけれど。ほぼ20年分なんでさすがにまだ途中なんですが、改めて「軌跡」って間口が広いゲームだなって思いました。

アサミ:えー、すごい。まだそうやって新たにやってくださる方、ちゃんといるんですね。嬉しいなあ。やっぱり良い作品っていつ触っても良いですよね。「軌跡」シリーズはそのパワーを持っている作品だと思いますし。

TOKEN:私はPC版で最初に触ったのは高校生の時で、その頃からずっと「空の軌跡」はそういうパワーのある作品だと感じていました。

アサミ:とは言っても、20年ずっと追うのも難しいですよね。

TOKEN:実際、周りではもうほぼやっている人はいないんですよね……。

アサミ:でも、今からでも入れる「軌跡」がある、いつでも戻ってきてほしい。

TOKEN:「空の軌跡」は特にシリーズの中でも「空の軌跡」にしかない魅力っていうものがありますよね。個人的には、時代ごとに新しいファンも並行して獲得していかないとならないと思いますし、実際20年続けていくにはそうならざると得ないかなと思うんですけれど、どうしても元々のファンに向けてしかアプローチしていない感じは強いですよね。

アサミ:ここまで物語が進むと、新規層へのアプローチも難しいのかなあ。

TOKEN:そういう意味でも、今改めて「空の軌跡」だけ遊ぶというのでも全然良いかなと。繰り返しになりますけれど、「空の軌跡FC」と「空の軌跡SC」だけでも物語は全然完結しているんで。

アサミ:うんうん、今の「軌跡」シリーズは一応「帝国編」、「共和国編」みたいにはなっていますけれど、やっぱり全体として「続き物」感が強いんですよね。その点「空の軌跡FC」と「空の軌跡SC」はすっきりしていますよね。

TOKEN:「空の軌跡FC」は、解りやすさと遊びやすさが詰まっているんですよ。街ごとに話が展開していくので、そこもわかりやすいですし、ドラマの描き方もそのチャプターでフィーチャーされるキャラクターがいて、キャラクター個人個人の描き方も良かったです。

アサミ:私、「イース」から来た人なので、当時は「ファルコムさんって、こんなにキャラクターの立ったゲームを作れるんだ」と思いましたよ。今でこそ「イース」シリーズも、キャラクターにかなり力を入れていますけれど、昔はやはりアクションが真っ先に来るゲームだったので……。

TOKEN:「空の軌跡FC」のパーティ人数が8人っていうのも、ちょうどよかったですね。

アサミ:バックボーンまで理解するのにちょうどいい人数かな。

TOKEN:サブ要素も程よくありましたしね。

アサミ:クエストの量とか、少なすぎず多すぎずくらいの塩梅でしたし。「空の軌跡」は、いわゆる名作と言われる大作有名RPGにまったく引けを取らない出来なんですよね。

TOKEN:そういえば、これはPC版をやった人だけの感覚だとは思うんですけれど、マウスとキーボードでの操作がめちゃくちゃやりやすい作品だったんですよね。ちょっとシミュレーションチックなバトルでもあるので、相性が良かったです。なので私はPSP版を触った時に逆にちょっと違和感があったくらいで(笑)。

「軌跡」シリーズのファン同士が「空の軌跡」20周年を語り合う編集・ライター対談の画像

アサミ:私も「空の軌跡SC」はPC版でやったんですけれど、そこはちょっと覚えていないですね(笑)。

TOKEN:アサミさんはかなり変則的な触り方していますよね。「空の軌跡」の存在自体はPC版の頃から知っていたんですか?

アサミ:いえ、実はPSPに「空の軌跡FC」が移植されるまで知らなかったんですよ。PSPに移植されるときに雑誌の広告かなにかで目にして、面白そうだなと思って買ったんです。そうしたら、終わり方がアレじゃないですか(笑)。それで「このあと続きがPSPで出るまで待ってられん! PC版ですぐ続きができるならそっち買う!」となって、「空の軌跡SC」はPCでプレイしたんです。

「英雄伝説 空の軌跡SC:改 HD EDITION」より
「英雄伝説 空の軌跡SC:改 HD EDITION」より

TOKEN:ちなみに「空の軌跡FC」と「空の軌跡SC」は、音楽の使い方もすごく上手かったですよね。

アサミ:私、「軌跡」シリーズの中でもやっぱり「空の軌跡FC」と「空の軌跡SC」の曲が一番好きなんです。「星の在り処」とか「銀の意志 金の翼」はもちろんのこと、戦闘曲の「Sophisticated Fight」とかもいいですよね。ジャズっぽいオシャレサウンドで、ちょっと戦闘曲っぽくないんですけれど、「空の軌跡」の空気感にはすごくマッチしていてあのセンスがすごいなって。

TOKEN:私はあまりサントラをたくさんは聴かないタイプなんですけれど、「空の軌跡」の時はすごい聞きました。確かPC版の予約特典でCDがついてきて、それをヘビロテしていましたね。

アサミ:あー、あの頃のファルコムさん、ちょっと頭おかしいレベルのサントラ特典多かったですよね(笑)。私は「空の軌跡」は初回特典とか持っていないのでわからないんですが、PC版の「イース フェルガナの誓い」の初回特典版に8枚組のサントラCD BOXとかついてきて、これ大丈夫なのかなって思いました(笑)。

TOKEN:(笑)。さすがにそんな大作ではなくて、ミニサウンドトラックとかだったと思うんですけれどね。

アサミ:「空の軌跡SC」ではフィールドの「空を見上げて」とかも好きでしたね。エステルの「空の軌跡FC」での傷を背負ったような切ないメロディになっていて、なんともやるせない気持ちになりました。「閃の軌跡III」でアレンジが流れてきた時には感動したものです!

TOKEN:音楽からも「空の軌跡FC」と「空の軌跡SC」のセットでしか語れない部分はありますよね。

アサミ:ありますね! やはりゲームは音楽とかも込みでの体験ですから。

「軌跡」シリーズのファン同士が「空の軌跡」20周年を語り合う編集・ライター対談の画像

TOKEN:物語もすごく良かったです。明確な敵役を配置して、かつその敵役のドラマも広がっていきますし、ストーリーが細かいところまで行き渡っているんですよね。キャラクターのドラマを楽しむ話になっているから、全体的にキャラクターへのフォーカスが一層強くなっていくというか。

アサミ:いわゆる群像劇ですよね。主人公はエステルではあるけれど、みんなのドラマが描かれて、最終的に一本のお話になるっていう。

TOKEN:私がその当時これまで触ってきたゲームでこういう描き方をするゲームがあまりなかったんですよ。なので尚更印象深いゲームになりました。

アサミ:私は群像劇っぽいゲームは他にも体験していたんですけれど、それより「空の軌跡FC」でああいう終わり方をするゲームをやったことがなかったです(笑)。

TOKEN:私はPC版だったこともあって、当時続きがあるっていうことも知らされていなくて、我々の旅は終わったみたいな映像が流れてエステルが再び立ち上がっていく映像が流れて、「え?」っていう感じでした(笑)。そして最後の最後で「空の軌跡SC」に続く、みたいなテロップ映像が流れてきて、「予告で終わるゲームって?」となりました(笑)。

アサミ:私がやった当時はもう「空の軌跡SC」に続くこと自体はわかってはいましたけれど、それでも「こういう風に続くんだ!?」みたいな衝撃はありました。

TOKEN:そこで「続きをやりたい」と思わせるほどの印象付けをさせることができた作品ですよね。そもそも「空の軌跡FC」で強烈なインパクトがなければ、「空の軌跡SC」を遊んでいなかったと思います。

アサミ:私は幸い、「空の軌跡FC」のPSP版が終わってすぐにPC版「空の軌跡SC」に行くことができたからテンションを保ったまま一気にプレイできましたけど、PC版だと2年間空いているんで「軌跡? どんなゲームだっけ?」ってなるような出来ではモチベーションは続かないですよね。

TOKEN:「空の軌跡FC」のエンディングは確かに驚きはしましたけれど、私はあの終わり方も好きなんですよ。主人公が本当の意味で成長するのが「英雄伝説」だと思っているのもあって。「軌跡」というよりも「英雄伝説」は、主になっているキャラクターのもとに仲間たちが集結していく物語で、大きな困難とか脅威に立ち向かっていくという。

物語の展開によっては袂を分かったキャラクターだったとしても、再び合流して一緒に戦おうぜってなるような熱い展開があるのが、「軌跡」というよりは「英雄伝説」かなと。そして私はそこに魅力を感じますね。そういう「英雄伝説」らしさが損なわれない限り、私の「軌跡」シリーズへの想いはずっと続いていくと思います。

アサミ:なるほど、私は「軌跡」以外の「英雄伝説」はやっていませんけれど、その魂が「軌跡」に受け継がれているのはわかります。

「英雄伝説 空の軌跡FC Evolution」より
「英雄伝説 空の軌跡FC Evolution」より

TOKEN:「空の軌跡」は敵キャラも魅力的でしたよね。アサミさんだと多分レーヴェが出てくると思うんですけれど。

アサミ:レーヴェ愛! 私は基本的に敵キャラを好きになりがちなのですが、レーヴェはとにかくかっこよかったです。容姿、強さ、何もかもが理想のキャラクターですね。レーヴェの絶望とか、模索、そういう苦悩がめちゃくちゃ丁寧に描かれていて、「こんなん好きにならんほうがおかしいわ!」みたいな良キャラだったと思います。敵キャラを好きになるから大抵悲劇になりますけど、レーヴェも途中から嫌な予感はしていて、案の定想定通りの結末でした……悲しみ。

TOKEN:でもああいう風に悲劇的な最後を遂げるとは、「空の軌跡FC」の頃は思っていなかったです。

アサミ:そうですね、ロランスとして出てきた時はさすがに「空の軌跡SC」でのこの展開は想像ついていなかったですね……。

TOKEN:物語上、復活するということはないにしても、今でもすごく大事にされているキャラクターだと思います。

アサミ:未だにレーヴェの話が出てきますからね……ホロってしちゃいます。

「軌跡」シリーズのファン同士が「空の軌跡」20周年を語り合う編集・ライター対談の画像

「空の軌跡 the 3rd」は掘り下げのエピソードが多い

TOKEN:それではそろそろ「空の軌跡 the 3rd」の話を少ししようかと思うのですが、「空の軌跡 the 3rd」は人気のあるキャラクターの拾いきれなかったエピソードを全体的に作り上げようとした結果がああいう風になったのかなと思いますよね。

ああいう風に断片的に見たいかというとちょっと違うというのを感じた部分もあるんですが、ケビンが自分の中にある闇と向き合って乗り越えて覚醒していく姿は、見ていてとても良かったです。

「英雄伝説 空の軌跡 the 3rd:改 HD EDITION」より
「英雄伝説 空の軌跡 the 3rd:改 HD EDITION」より

アサミ:TOKENさんは、ほぼ20年ケビン推しなんですね。

TOKEN:はい(笑)。エステルって純粋に善性で固められたキャラクターですが、それに比べてケビンは闇を抱えていて、闇の中でも本人が自分自身と向き合っていって、その向き合うためのドラマも描かれていて、エピソード全体の流れは好きなんですけれど、ゲームそのものはちょっと入りにくい作りになっちゃっていましたよね。

「軌跡」シリーズのファン同士が「空の軌跡」20周年を語り合う編集・ライター対談の画像

アサミ:すみません、私「零の軌跡」の頃、他の人に「空の軌跡」勧める時に、最悪「空の軌跡 the 3rd」はやらなくてもいいからって言っちゃっていました(笑)。今にして思うともちろん必要なエピソードだったんですけれど、あの頃「零の軌跡」の前にさらに3本もあるっていうだけでオススメするのにハードルが高かったんですよね……。

TOKEN:(笑)。過去の話を普通に回想するのでもよかったんじゃないかというのはありますよね。例えばその後ほとんど出ていないですけれど、リシャールとかのキャラクターのその後とかも見えますし、細かいところを掘り起こしていくとエピソードが充実した作品ではあるのですが。

アサミ:結局後々になって「空の軌跡 the 3rd」の時のエピソードが出てきたりもしていますし、今だと「やらなくてもいい」とは言わないんですけれど、作りはどうしてもこれまでの2作に比べて人を選ぶ作りだなぁというのはありました。

TOKEN:エピソードが断片的すぎるのと、ダンジョン形式のゲームなので、王道的なRPGではないですよね。私は「空の軌跡 the 3rd」のエピソードそのものが好きなので、ちょっと寂しい(笑)。

アサミ:とは言っても、「空の軌跡 the 3rd」の不評だったところを上手く修正した結果が「創の軌跡」だったかなと思っているので、あの段階で「空の軌跡 the 3rd」をああいう形でやっておいて、そしてそれを別の作品でちゃんと活かしているのはファルコムさんらしいですよね。

「軌跡」シリーズのファン同士が「空の軌跡」20周年を語り合う編集・ライター対談の画像

TOKEN:ちなみにアサミさんは「空の軌跡」でレーヴェ以外に好きなキャラクターっているんですか? 私は清楚系が好きなので、クローゼとか好きなんですけれど。

アサミ:オリビエですね。私が好きになるキャラクターにはいくつかの共通項があるんですが、白いロングコートも割と好きになる率が高いんですよ(笑)。あとは昔から子安武人さんの大ファンなのもありますけれど、子安さんが声をあてるようなへんてこキャラを好きになりやすいんです。

TOKEN:そうか、PSP版からだからもう声が入っていたんですね。PC版の時は声なかったので。

アサミ:そうなんですよ、なので一層キャラクターのイメージは掴みやすかったです。

TOKEN:声優さんも豪華でしたよね。新旧混ざっている感じで。エステルの神田朱未さんとかは当時まだ若手の声優さんでしたけれど、エステルのあの明るい役柄にすごく合っていましたし。ジンの稲田徹さんとかは当時別の作品で、良い声の方だなと思っていたんですよね。耳が幸せな作品でした。

アサミ:斎賀みつきさんはあの頃から少年役が多かったですよね。あの大人になりきっていない男の子の声って、斎賀さんならではだなあと思います。

シリーズ20周年記念タイトル「界の軌跡」への期待も

TOKEN:では、そろそろ20周年全体のお話をしましょうか。

アサミ:当時20代だった自分がもうアラフィフとかほんと月日って……となりますけど、ここまでついてこれた自分を褒めたいです(笑)。あとはお願いだから、生きているうちに完結してほしい(笑)。

TOKEN:いやほんと20年続くとは思っていなかったですよね……。やっぱり「閃の軌跡」が長かったんですよね。20年のうち、「閃の軌跡I」が出たのが2013年で、「閃の軌跡IV」が出たのが2018年なんで、5年間「閃の軌跡」をやっていたわけです。

アサミ:「閃の軌跡I」からももう10年以上経ってるのかと思うとぞっとしますね(笑)。

TOKEN:「閃の軌跡」が終わって共和国にいくかなとおもったら、2020年に「創の軌跡」が挟まりましたしね。こう考えると「閃の軌跡」のキャラクターにスポットが当たっていた期間だけで10年近くあるんですよ。

アサミ:なるほど、確かにそうですね。帝国が広いからというのもあったとは思いますけれど。

TOKEN:でも「閃の軌跡」関連が長かった割に、もう社会人になっていたせいか、そこまで「待たされた!」という感覚はなかったんですよね。それよりも「空の軌跡FC」から「空の軌跡SC」までの2年間のほうが長かったように感じます(笑)。

アサミ:私は実はあまり「待たされた!」感がないんですよね。「空の軌跡」もPSP→PCという変則で待たないでやっていますし、「閃の軌跡」も完結してから一気にプレイしているんで。よくよく考えると、「碧の軌跡」が2010年発売で、それから「創の軌跡」まで10年間プレイしていなかったので、実は20年のうち10年をリアルタイムで過ごしていなかったという……。

TOKEN:そこから戻ってきてくれるというのも嬉しいです(笑)。

アサミ:「閃の軌跡」に倍速モードが搭載されたおかげもあって、10年間のブランクもなんとか完走できました(笑)。

TOKEN:「閃の軌跡II」から「閃の軌跡III」までは3年空きましたけど、その間にグラフィックのアップデートとかもきちんとしてくれたので、すごい有り難かったです。

アサミ:そうそう、先程も少し言いましたけれど、私「閃の軌跡」で「軌跡」シリーズが完結するんじゃないかと思っていたんですよね。

TOKEN:完結していなくても戻ってきたのは「創の軌跡」があったからですよね?

アサミ:はい。ロイドたちが再び主人公になるなら「創の軌跡」をやろうと思ったんですよね。そこでまさか再び「軌跡」シリーズにどハマりすることになるとは思いませんでした(笑)。

TOKEN:私もアサミさんがまさかこんなに「軌跡」シリーズにハマり直すなんて想像もしていなかったですよ(笑)。ちなみに20年通しての推しキャラクターはやはり“あの”キャラクターなんですか?

アサミ:ええ、“あの”「創の軌跡」で私の心を奪っていった《C》です。私の人生の最推しキャラクターのひとりです。他のゲームとかであちこちに推しはいますけれど、《C》は人生の中で一番好きなキャラクターの中の一人になってしまいました。

TOKEN:もう公式で名前出ちゃってるんだから普通に呼んでいいのでは?(笑)

アサミ:いえ、彼は尊すぎて私ごときが名前を呼ぶと穢れるんで……。

TOKEN:(笑)。「創の軌跡」の時に、彼はもう今後の作品には出ないかもね、みたいなことを話していたのに、「界の軌跡」でしれっと出てきましたね。

アサミ:そうなんですよ! 私、昔からエナミカツミさんの大ファンなんですけれど、大ファンの方に推しの絵を描いていただけるとかそんなことあっていいの!? って感じで、もう嬉しすぎて倒れそうです。何なのあれ、めちゃくちゃかっこいいんですけど! リィンとクロウもかっこよかったですね……!

TOKEN:エナミさんの絵って、躍動感がすごいですよね。アルティナとかもとても可愛かったです。

アサミ:ですよね、本当にそのまま動き出しそうな絵だと思います。

TOKEN:今回、「界の軌跡」で描かれているイラスト数がかなり半端ないですよね、一体何枚描かれているんだろうという。

アサミ:結構えげつない数、描かれている感じがします。

TOKEN:これから出てくるイラストもまだあるでしょうし。すごいなあ。

「英雄伝説 界の軌跡 -Farewell, O Zemuria-」より
「英雄伝説 界の軌跡 -Farewell, O Zemuria-」より

アサミ:「界の軌跡」の発売日が東京ゲームショウと被ってしまっているので、我々発売日にはプレイできないのが無念ですね……。

TOKEN:こればかりは(笑)。まあ「界の軌跡」については時期尚早ということで、また改めて(笑)。

アサミ:はい、それでは改めて「空の軌跡」&「軌跡」シリーズ20周年おめでとうございます。「界の軌跡」も楽しみにしています、ということで……!

TOKEN:ありがとうございました。

アサミ:ありがとうございました!

2011年イクセル入社後、Gamerをはじめとした媒体の運営に携わる。好きなジャンルはRPG、パズル、リズム、アドベンチャー(ほぼギャルゲー)。実はゲームよりもアニメが大好きです。

人生のうちの40年以上をゲームと共に生きる、人生の大半をゲームに捧げた、北の大地に住むライター。JRPGが主食。スクウェア・エニックス、トライエース、フロム・ソフトウェア、カプコン、アトラス、任天堂、ファルコム、タイプムーンあたりに目がない、ソシャゲも山のように嗜む雑食ゲーマー。ゲーム音楽やコラボカフェ、2.5次元なども大好物。北の大地に移り住む前は数多くのイベントに通い詰めた、イベント大好き人間です。

note:https://note.com/rinaasami/n/nb31a2e54c31f

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