7月22日~24日にかけて、パシフィコ横浜 ノースにて開催のゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2025」。本稿では7月24日に実施されたセッション「『Rise of the Ronin』~幕末オープンワールドでTeam NINJAアクションを実現せよ!~」のレポートをお届けする。

登壇者はコーエーテクモゲームスの渋谷隼人氏、藤﨑健雄氏、嵯峨隆之氏。手触り良く、激しいアクションを広大な幕末という舞台で実現することを目指した、Team NINJA初のオープンワールドアクションRPG「Rise of the Ronin」の制作で向き合った課題やそれに対するアプローチなどを紹介した。
まずは渋谷氏が幕末とどのように向き合い、ゲームに落とし込んでいったのかを紹介。本作では倒幕と佐幕という大きな2つの思想、海外を含めた多種多様な人同士の戦い、そして複雑に絡み合う因縁についてリアリティを持って描いている。一方でプレイヤーにとって豊かな世界を作るため、認識したうえで嘘や誇張も柔軟に取り入れている。


後にプレイヤーの背負う「隠し刀」のバックボーンも加わっていくが、開発初期の段階からメインストーリーの大きな流れは黒船来航から江戸城の無血開城までと決めていた。そこで、まずは物語の起点であり、和洋が入り混じる「横浜」から手掛けていく。
本作のオープンワールド制作では背景CGチームと連携し、実際の横浜の古地図情報からワールドドラフトを制作。併せてゲームの中核となるシステムを組み込んで検証する小規模なフローを重視し、検証を元にストーリーやシステムの調整に合わせて作りこみを拡大していった。


しかし、制作が進むにつれ、横浜では史実をベースにしたためにストーリーで主要な出来事が都市部へ偏ってしまったこと、初めて横浜を訪れた際の導線がリニア(直線的)であるという課題を抱えた。そこで史実を元としつつもプレイヤー体験を最優先とし、自分の意志で探索した結果コンテンツに出会ったり、操作を覚えたりできる形にしていった。リニアな展開からオープンワールドに出るような接続部分は、とくに死角になりやすい。渋谷氏は開発の進行に合わせ、定期的にプレイヤーの体験を点検することが不可欠であると語った。




続いて嵯峨氏が、オープンワールドでのバランス調整について紹介。ステージ型などのタイトルとは異なり、プレイヤーの行動には無数の選択肢があるため想定レベルを定めること自体が困難になる。そこでプレイログを収集・解析し、追加調整で狙い通りに行動が変化したかを確認していった。
ただし、これだけではプレイヤーの動きをフォローするにはやや不十分だったと語る嵯峨氏。というのも、開発サイドが想定する以上に多くの要素をコンプリートしようするからだ。これを前提としつつも破綻させないよう、本作ではメインストーリーの導線へ大幅に経験値を割り振ることで寄り道の影響を抑えた。一方で低レベルクリアといった遊び方はできなくなったため、タイトルごとに何を重視するのかを考える必要があると語った。


これまでのミッション型などのタイトルと異なったのは、マップだ。本作にはキャラクターと出会いで生まれ、共闘や交流で深まり、キャラクターやプレヤーの成長要素になる重要なシステム「因縁」がある。これは土地にも適用され、エリア内で何らかの要素をクリアすると「因縁レベル」が上がり、探索要素が段階的に解放されていく。
初期状態のように一切情報がなくても、最初から大量の要素が表示されていても、何をしていいか分からなくなりがちだ。そこで重要な要素から徐々にすべての情報を開放し、自然とコンプリートできるように誘導。ここに至るまでには試行錯誤があったものの、これまでTeam NINJAがアクションゲームで重要視していた「手触りのよさ」が方向性を決めるひとつの指針になったと振り返る。


次に新選組の大ファンという藤﨑氏が、幕末オープンワールドという題材でTeam NINJAらしいアクションを成立させるために行った4つのアプローチを紹介。Team NINJAでは手触りのよさ、つまり操作キャラクターがプレイヤーの思い通りに反応し、引っかかりのないアクションで応えることを重視している。
オープンワールドでも快適な手触りを実現すべく、まずチャレンジしたのは幕末の世界を快適に踏破できる移動アクションだ。通常のアクションゲームよりも街や戦場を行き来することになるため、滑空、馬、鍵縄、水中といった移動アクション同士をスムーズに繋げ、途切れずに連続するという操作性を目指した。


また、本作の敵はボスも含め、ほぼ人と人との戦いを描いている。互いの構えや所作を見て戦い方を決めていく時代劇のようなアクションを実現するために導入されたのが、敵の攻撃を捌いて無効化できる、いわゆるパリィアクションの「石火」だ。ただし石火は相手がどのような攻撃を送り出してくるかを把握しておく必要があるものの、プレイヤーがどのような順番で敵と遭遇するのかはコントロールできない。
そこで本作では、プレイヤーと敵の使用するアクションを「武器」と「流派」の二軸にまとめた。流派と武器の間に有利不利の相性を持たせ、敵の武器から相性を予測できるようにしつつ、アイコン表示でも情報を補強。プレイヤーがさまざまな武器や流派を使いこんでいけば、敵の行動を事前に予測できるような形にした。



これに加え、例えば薩摩藩士なら示現流を象徴する猿叫や蜻蛉の構えを取り入れ、近藤勇であれば天然理心流の構えはそのままに武器のみ変化させるなど、流派から個々のキャラクターのもつ背景を想像させるといったことにも挑戦している。


本作のボスの大半は歴史上の偉人だが、戦闘のエピソードがない人物も存在する。ファンタジーではなくリアルな世界でどうバリエーションを広げるかを考えた際、まずは各キャラクターが所属する派閥で大まかな方向性を設定。海外勢力のキャラクターは欧米列強がいかに技術的に進んでいたかを際立たせるべく、あえてオーバーテクノロジー感を強めたそうだ。ここから史実のエピソードを軸に、時にはエンターテインメントとして大胆な解釈を加えながらバトルスタイルを決めていった。




併せてプレイヤーにとってパートナーであり、後に敵対関係になる「片割れ」が要所でボスとして立ちはだかる。そのため片割れとのバトルは、ストーリー上の大きな節目として演出していく必要があった。そこで主人公と同じように「因縁」によって成長していくボスと位置づけ、海外勢力のオーバーテクノロジーを段階的に追加したり、戦った相手の技を学んで自分の技に取り入れたりすることで、成長するキャラクター性を表現している。本講演でオープンワールドアクションRPGの制作や、幕末という魅力的な時代へ興味を持ってもらえれば幸いだと締めくくった。



なお、各講演は8月4日10時までタイムシフト配信での受講も可能だ。詳細は公式サイトで確認してほしい。
CEDEC2025公式サイト
https://cedec.cesa.or.jp/2025/
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