ブシロードの代表取締役社長・木谷高明氏へのインタビューをお届け。第3回は同社が幅広く手掛けるエンタメ領域を中心にお話を伺っている。
1月12日に行われた「カードファイト!! ヴァンガード 15th Anniversary ブシロード新春大発表会2026」。その中で2026年のブシロードを占うさまざまな発表が行われた。
その発表を受けて実施した今回のインタビューでは、同社の代表取締役社長・木谷高明氏にトレーディングカードゲーム(TCG)、デジタルゲーム、エンタメ全般の3つのトピックスから話を伺ったので、全3回の連載形式でお届けする。
第3回では新コンテンツ「ZERO RISE(ゼロライズ)」や各種ライブイベントなど、ブシロードが持つカードゲーム、デジタルゲーム以外のコンテンツを中心にお話を伺った。木谷氏のコンテンツ作りにおける考え方の一端が垣間見えたので、ぜひ注目してみてはいかがだろうか。
インタビュー・編集:TOKEN
文・構成・写真:胃の上心臓
木谷社長が考えるブシロードだけが持つノウハウとは
――度々話題に上ってきた新コンテンツ「ZERO RISE」ですが、ストリートバスケを題材に選んだ理由はなんだったのでしょうか?
木谷氏:まず前提として、アニメなりゲームなりの新たなIPを立ち上げる時は、先に5,000人から10,000人の熱心なファンを作る。そして、そのファンの皆さまが今後プロジェクトを推進して行く時のインフルエンサーになっていただける。今回は結果として、ライブやコミックではなく舞台からのスタートになったということですね。
なぜバスケットボールなのか……という部分に関しては、ここでお話しするのは時期尚早なので、今回は控えさせてください。まだ立ち上げたばかりですし、手品を見せる前にその種明かしをするような形になってしまいますので。その理由は、本格的にプロジェクトが始動したらわかってくると思います。

現段階で「ZERO RISE」に関してお話できることがあるとするならば、バスケットボールを舞台から始めるので、そこに2.5次元舞台イベントで活躍する俳優さんを起用しつつ、後々放送されるアニメでは彼らにキャラクターの声優も務めてもらうことでしょうか。
2.5次元舞台とアニメとでキャストが一致していることはほとんどありません。なので、これが大ヒットしたらとてつもなく大きなコンテンツになります。2年後の2028年にはロサンゼルスオリンピックがありますが、その主役はきっとバスケットボールです。今年以降はおそらく、多くのバスケットボールを題材とした漫画が新たに始まるはずです。
これまで「SLAM DUNK」や「黒子のバスケ」以降はなかなか新たなタイトルが出てこなかったですし、そういった企画を出してもそこを超えられるかと聞かれたら、何も言えなくなってしまっていましたけれども。
――「THE FIRST SLAM DUNK」がリバイバル上映も含めてあそこまでヒットしたくらいですからね。
木谷氏:そうなんです。だから、これを2.5次元に持ってきて3次元の方から濃いユーザーを作りアニメで一気に爆発させたい。「ZERO RISE」にも高校バスケは登場しますが、最初はストリートバスケなんです。今の時代なら、きっとこちらの方が共感される。今はもう変わった部分も多くあるのですが、最初のシナリオなんて新宿歌舞伎町などが舞台になっているくらいもっと突っ込んだ内容でした。
――ストリートバスケは3on3の対戦形式だったりしますよね。
木谷氏:3on3の方がキャラクターが引き立つんですよね。観劇する時も6人ならまだ追いかけられる。アニメの放送時期はまだ先の予定ですが、最初からこれを発表したのはそういう流れを予測してのことなんです。最初にバスケットボールだと閃いてから、1年半くらい世の中に出るまでかかりましたが、これでうちが最初に始めたと言えます。
――やはり、かなり展開のスピード感を意識されているんですね。
木谷氏:焦らなくていいのは他のタイトルがあるからです。MyGO!!!!!とAve Mujicaの続編TVアニメの放送も日本テレビ系全国30局ネットでありますし、「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」の完全新作アニメも控えています。オリジナルコンテンツが盛りだくさんです。
――コロナ禍以降はイベントも配信が増えてきて、現地以外でも見られるようになってきています。MyGO!!!!!とAve Mujicaが出てきた流れも踏まえて、ライブエンタメにおける現状の認識や今後の予想などもお聞かせください。
木谷氏:AIがこのまま進化していくと、それを用いた音楽や映像、ゲームが出てくるでしょうね。ですがそういう時代になればなるほど、アナログなものの価値は上がっていきます。きっとタレントの価値もどんどん上がっていくんです。そのタレントが何をするのか……そこに物凄い価値が生まれると思っています。
ブシロードとしてはそこをどんどん伸ばそうと考えているので、4月1日からMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)を「LIVE-MIXED ENTERTAINMENT(ライブミックスドエンターテイメント)」へと変更しました。カードゲームだって結局は、カード自体が紙であることも魅力ですし、対戦する空間があるからこそ人はそこに集まってくるんです。

――「BanG Dream!(バンドリ!)」がやってきたことがまさしくそれですよね。
木谷氏:「BanG Dream!」は現状、リアルバンドだけで7バンドもありまして、きっとブシロードは世界で一番ガールズバンドを抱えている会社なのではと思います。自分のポジションを守ってチームとして行動するというかたちが成り立つのは、日本の女性たちに優しくて真面目な方が多いからなのではないかと感じています。世界広しといえどもこの本質はブシロードしかよくわかっていないのではないかという感覚があり、このノウハウが実はうちの一番の財産なのかもしれません。
※少し何を言っているか分からないかもしれないですが......。
先行した作品の改善点を踏まえたコンテンツ作り
――ブシロードとして挑戦を続けるうえで、これまでの展開についての反省や今ならこうするみたいなアイデアはありますか?
木谷氏:「BanG Dream!」と「D4DJ」で、音楽ものを続けてやるべきではなかったなと思う瞬間があります。テーマはとても良かったのですが、リリースがコロナ禍にぶつかる不運もありました。やっぱり、やるとしてもこのふたつの間に何かを挟むべきでした。キャストも一部「BanG Dream!」と重なってしまっていましたし、そこには反省があります。
「D4DJ」はDJイベントを見てこれだと思ったことも大きいのですが、やっぱりバンドは練習もメンバー集めも大変だったんです。メンバー4人中2人や3人でもイベントができるようにと考えてのことだったのですが、その時の一番の苦労を解決しようとして動いてしまった側面があったんですよ。
それで上手く行く場合もあるんです。例えば(ブロッコリーの社長時代に)「ディメンション・ゼロ」というカードゲームをやっていた頃に、競技性を持たせたくて賞金のある大会をやったんです。ところが、実はガチで対戦したいプレイヤーは10人に1人もおらず……。最初はわーっとお客さんが集まったんですが、プレイしてみて自分がそんなに強くないと気づいたことで、みんな離れてしまいました。
こうした経験を踏まえて、「ヴァイスシュヴァルツ」では徹底的に運にこだわりました。もちろんそれでも強い人が勝つのですが、そんな強い人にもひょっとしたら勝ててしまうかもしれない……と感じられるような、ゲームデザインを目指したんです。
なので「ZERO RISE」だけでなくこれから作るコンテンツは、既存のブシロードのコンテンツとは重ならないものを目指しています。キャストは若干重なっても構わないのですが、コンセプトだけは重ならないようにしていきます。
――これがいいと思ったものに対する反応の早さはいつも凄いと思っています。
木谷氏:小さく始めた企画はやっぱり駄目なんです。それで上手くいくのは、作品を描く人にすべての才能が詰まっていた場合です。そういう方が明確なビジョンを持って小さく始めたものは上手くいくかもしれませんが、自分ではなく誰かにやってもらって小さくなる場合、その方もきっと本気ではないだろうし、頼まれる側も本気になりづらいです。
最初から予算があまりないと言われたところで、そんな状況でやる気にはならないです。だから、うちにもそうやって0から作れる人が増えてくれればいいなと思っています。それができるのならば、後は3とか4とか5にすればいいだけなんです。そこまでやれば後のことをやりたい人はいっぱいいる。0から1にするのが大変なんですよ。
――ブシロードの中でも、そういったことができる方はまだおられないと感じているのでしょうか?
木谷氏:あまり前例がないですしね。出版部門「コミックグロウル」にも既にアニメ化の問い合わせがきていますし、今後もオリジナルコンテンツは次々出てきます。
ただ、私が第一線に立てる時間があまり残されていないので、このタイミングでいくつも作るべきだとその試みに拍車をかけています。3つ作ると決めていた第1弾が「ZERO RISE」なので、残る2つを早くしないともう70歳になってしまう。このままだと、いつまで働くのかと言われてしまいます。
――2020年に還暦を迎えられてから、もう6年も経つんですね。
木谷氏:だからいい加減楽をしたいし、午前中しか会社に出てこないようにしたいんです(笑)。

ブシロードは独自の立ち位置と路線で挑戦を続ける
――ブシロードグループ全体としてさまざまな事業を分社化し、それぞれが機能するようになったかと思いますが、今後はどういったノウハウや事業を重視していくのでしょうか?
木谷氏:やはりAIは大きなテーマです。二面性があると思っていて、ひとつはどう取り入れたら業務を効率化できるのか。場合によってはそこから付加価値が生まれるようなことを、AIを使ってやることになるかもしれません。
もうひとつは、音楽も映像もゲームもどんどん浸食されていくと言われていることでしょうか。だからエンタメ業界の株が軒並み低くなってしまいましたが、そこと関係なしに付加価値を出せるものを考えるとやっぱりライブなんです。
このライブという言葉にこだわっている理由は、これは人間が持つ熱を発する場なんだ、この行為はAIには無理ではないかというメッセージなんです。私はやはり熱をいかに作るかを考える人間なのですが、そこにもAIをどう活用するかを考えるチームはいます。
以前、「カードファイト!! ヴァンガード」のスタッフとのミーティング中、月に50,000円までAIのサブスクリプションの課金を認めてください、買いたい書籍もありますと要望を受けました(※カードのイラストやテキスト、広告関係など制作物には一切関係のない、事務作業等の効率化を目的としたもの)。その時に書籍は経費で落とし、サブスクリプションの料金は部署ごとに支払うようにと伝えました。そして、ブシロードグループ内でAI活用のモデルケースにするから、経営会議で提案してくれとも話しました。特異な才能を持っている人間がまずは部署で使ってみて、他はそれを真似するというやり方しか私はないと思っています。
やはり組織は若くないといけない。年を食えば食うほど、新しいものに慣れるはずがありません。AIに関しては私みたいなジジイが出張っても仕方のないジャンルだと思っているので、AIとは関係ないところを一生懸命作るからそこはよろしく、と役割を分けています。そうやったほうが絶対にいいです。
――先ほどもお話にあったMVVの再定義について伺います。今後もIP軸にアプローチしていく方針は変わらないのでしょうか?
木谷氏:IPという単語をみんなが言うようになってしまい、今そこを前面に押し出しても他と変わらないと見られてしまうので、少し変えようと思っていました。IPディベロッパーはキャッチーではあったのですが、どうしても開発会社みたいなイメージになってしまいます。BtoCではなくBtoBのイメージで受け取られてしまうことがあるんです。
それと同時に飛行船シアターの名称を2026年10月から「スタァライト劇場」に変更すると発表したら、大きな反応がありました。劇場の名称変更のみのIRではあるのですが様々な憶測も生まれてしまっておりプレッシャーもあります。とはいえ「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」に本気で力を入れていくと意思を示せたので、これは良かったなと思っています。
――「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」はなかなかコンテンツの供給がないところにきたので、みなさんの期待もより高まったような印象があります。
木谷氏:2025年の-The STAGE 中等部- Reriseもすごく良かったと思いますし、舞台という体験から繋げたのですがやはりみなさんアニメや二次元的な展開を求めているということは2024年以降のスタァライトの打ち出した展開とお客様の反響で実感しています。スタァライトのアニメ展開は第2回インタビューで取り上げて頂いた「少女☆歌劇 レヴュースタァライト 舞台奏像劇 遙かなるエルドラド」にもアニメーションは入れてもらいましたが、2018年にTV放送があって、「劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト」が2021年ですから、最後のアニメ作品からはもう5年経ってしまっているんです。
なので、制作のスケジュールを度外視してお話をすると、次の大きな展開をするなら来年がもうギリギリだというビジネス的な感覚がありました。こうした中で完全新作アニメ制作中の発表を1月にしましたが「スタァライト劇場」という劇場の名称変更のニュースがコアなファンを飛び越えて、少しでもスタァライトに触れたことのあるお客様まで届いて大きなニュースになったことによって、「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」の来年以降の展開に希望が持てたなと思っています。
今、飛行船シアターは稼働率が100%の時もあるくらいなんです。低い月でも6割くらいあります。年間に来るお客さんで考えると、7万人から8万人の来場者がいらっしゃるんです。劇場内に借りて頂いている興行の雰囲気を損ねないように、「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」コーナーを作っていこうかなとも考えています。
また、劇場のロゴも大事だと思っています。スタァライトの興行に限らず劇場にご来場される方たちに「今日はスタァライト劇場に行くんだ!」と思ってもらうことがブシロードの目指すMVVの一つだと思いますし、セルフブランディングで価値も高めていきたいところです。
――最後に今後のブシロードの展望をお聞かせください。
木谷氏:2025年は酷い年だったと思いますが、そんな中でも会社をちゃんとやってきたので、(企業として)すごく強くなった気がしています。関税の時も大変でしたが、それでも上手に切り抜ける方法を見つけて対処しました。
今年はもっと大変になる予感がしています。アクリルスタンドの原料やカードの包装用のピロの値段が上がっているんです。後は輸送費全般も上がるのですが、結構日本は呑気ですよね。私からすると、考えることが多すぎるくらいです。
ここのところ会議でも言っているのですが、こんな時代だからこそスタッフも楽しそうにサービスを提供しないと駄目だなと思っています。やっぱり人は人のいるところに集まるし、それと同時に楽しそうな場所に集まる。暗い雰囲気でいらっしゃいませと言っても、お客さんからすると客入りが悪いのかなと思ってしまいますよね。
だから、楽しそうに仕事をすることが大事なんです。こんな時代でもそこからまたビジネスが大きくなっていきますし、その兆候も今頑張っていることで見えてきています。色々な部分が調子がいいんです。きっと今年は飛躍の年になるのではないかなと。
そして、最大の山は「BanG Dream! Our Notes(アツドリ)」が成功するかどうか。さらに7月からの放送を控えるTVアニメ「バンドリ! ゆめ∞みた」が人気を得られれば今後上手くいく可能性はさらにアップします。
カードゲームは「カードファイト!! ヴァンガード」が好調になってきているので未来は明るい。後は「パルワールド オフィシャルカードゲーム」の発売も控えていますし既存タイトルも凹凸はありつつ……来期はカードゲーム部門で過去最高位の収益を得られるかなと考えています。
会社としても来期はかなり順調にいきそうです。うちはこの業界でも中途半端な位置にいるんです。売上、時価総額ともに1,000億円以上あるエンタメ企業は30社くらいあるんですが、うちは時価総額が400億円くらいで売り上げが560億円くらい。
その前後の会社は実はあまりないので、会社を買われる側でもあり、買う側でもあるんです。だから早く上のクラスに入りたい。もっと前倒ししたい所ではあるのですが、2030年までにこの上のクラスに絶対入ると考えながらやっています。
今後はそういったエンタメ業界の再編が起こっていき、その中でどんどん系列化されていくだろうし、海外での展開力でかなり差がついていくこともあると思います。そういう時は業者同士で組んで連合ができるので、小さい会社は割と補完的な役割になります。その流れの中でもうちは独自の立場なので、今後はそんな立場で動いていくことになりそうです。
――本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

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