2026年7月26日(日)に開催されたインディーゲーム展示イベント「デバッグしないと出られない部屋」について、現地レポートならびに主催者インタビューをお届けする。
「デバッグしないと出られない部屋」は、廃校を舞台に「デバッグしないと出られない」という脱出ゲーム的世界観を採り入れた、参加型インディーゲームイベントだ。

参加者はデバッガーとしてインディーゲームをプレイ、出展者に報告することで「デバッグ報告シール」を獲得する。脱出するためには、このシールを10枚以上集めなければならない。

最近はインディーゲームの人気が高まっており、さまざまなインディーゲームイベントが行われるようになった。その中でも今回が初開催となる本イベントは、かなり特徴的なイベントといえる。
そこで本記事では、イベントで筆者が「これは!」と感じたインディーゲームとともに、どのような思いで本イベントを開催したのか主催者に直撃したインタビューをお届けしたい。

悪夢を彷徨うホラーアドベンチャー「Nightmare Journey 1135」
まず最初に紹介したいのは、脱出ホラーアドベンチャーゲーム「Nightmare Journey 1135」。主人公は、毎晩悪夢に悩まされる「シ」。「鳥」を追いかけ悪夢の中に引きずり込まれた「シ」が、脱出を目指すというストーリーだ。

ゲーム内容は探索と謎解きがメインとなっており、怪異とのチェイス要素も存在している。クリエイターのyaigi氏によると、往年のツクール系ホラーゲームが好きで、長年頭の中にあったストーリーをかたちにしたとのこと。実際、謎解きや怪異とのチェイスといった要素は、そうした既存のツクール系ホラーゲームを連想させる。
ただそこに、独特のピクセルアートと、先の展開が気になるシナリオとが組み合わさることで、本作独自の魅力に昇華されていると感じられた。また、BGMを使った演出も素晴らしい。短時間のプレイにも関わらず、思わず本作の世界観へ引き込まれてしまった。

現世の罪も名前も失った主人公が脱出を目指す!「夢迷 -Mumei-」
「廃校からの脱出」というイベントの中で脱出ゲームをプレイするという体験がとても魅力的だったので、「脱出」をテーマにしたゲームをもう1作紹介したい。「夢迷 -Mumei-」は、「常世」を舞台にした3Dホラーアドベンチャーゲーム。主人公は現世で罪を犯し「常世」へとやってきたが、その罪はおろか、自分の名前すら思い出すことができない。そんな状況で怪異的存在である「彷徨う者」から逃げつつ、「常世」からの脱出を目指す……という作品だ。

ゲーム内容は、3D空間を移動して「彷徨う者」から逃れつつ、ミステリーアイテムを集めていく……というもの。魅力的なのは、夢とも現実ともつかない「常世」の雰囲気で、探索中、常に不安感が漂っている。
クリエイターのTomanegi氏によれば、同作では怪異から逃げながらアイテムを回収するというゲームシステム部分を重視して企画・開発されたという。ただプレイしたところ、ゲームシステムもさることながら、筆者はストーリー的な「謎」の部分に強く惹かれた。罪にまつわる記憶と、名前を失った主人公は、明らかになんらかの事件に巻き込まれたように見える。はたして本作の背後にはどんな真相があるのか……思わず引き付けられてしまった。

武器が変化する2Dローグライクアクション「Arsenal Stigma」
続いては2Dローグライクアクション「Arsenal Stigma」を紹介したい。同作は、移動とエイム、攻撃という操作によって敵を倒しステージクリアを目指す2Dローグライクアクションゲームだ。

クリエイターのHaru018氏によると、「ビルドが自分の気に入ったものでほぼ固定されてしまう」というローグライクゲームでよく見られる課題に対し、「流動的なビルドを実現できないか」という点から本作を着想したという。実際に本作は、ステージごとに武器が進化していく。筆者がステージ1でプレイした武器は、一撃が強く、攻撃範囲も広く、ヒット&アウェイに向いていた。
一方ステージ2でプレイした武器は、一撃のダメージは軽いものの攻撃速度が異様に早く、連射することで複数の敵に対応可能。武器によって望ましい立ち回りが変化するので、必然的に求められるスキル編成も変わり、ビルドを変えていくこととなる。これが面白い。
また、最初からステージ内にボスが存在するものの、しばらく動かない……という要素も「考えられている」と感じた。これにより、ザコ敵を倒しつつ、隙を見てボスのHPを削る……というかたちで移動し続ける必然性が生まれるため、立ち回りを工夫することとなる。奥深いアクションゲームになると感じたので、リリースが楽しみな一作だ!

クロックヘッドに導かれ不思議の国を巡る!「Alice's portrait」
続いては間違い探し要素を採り入れたアドベンチャーゲーム「Alice's portrait」。「Alice」というタイトルが示す通り、本作は「不思議の国のアリス」を題材としている。

注目のポイントは、コラージュを用いたビジュアルデザイン。「不思議の国のアリス」の持つシュールな世界観と、コラージュ技法が持つ味わいとがかみ合っており、本作に独特な魅力を与えている。クリエイターのImpressia氏によると、そもそも絵を描くことができないという点から、コラージュ技法に注目したのだという。
その上で、コラージュ技法が生きる世界観として「不思議の国のアリス」を採用したとのこと。ちなみに「不思議の国のアリス」をベースとしてはいるが、ストーリーはオリジナル。本作において主人公のアリスは、オリジナルキャラクター・クロックヘッドに導かれ、「時が止まる」という事象に立ち向かうこととなる。

カジュアルにポーズを決めて壁の穴を通過せよ!「ポーズで壁をスルーするヤツ」
続いては肩の力を抜いてカジュアルにプレイでき、楽しく笑えるタイプのゲームをご紹介! 「ポーズで壁をスルーするヤツ」は、壁の穴に合ったポーズを取り、上手く壁を通り抜けるというカジュアルアクションゲームだ。

クリエイターのyoudoyou_motto氏によると、同タイプのゲームはさまざまあるが、関節を細かく指定するような複雑な操作ではなく、ポーズの選択と回転というシンプルな操作で演出したいという意図で企画・開発したとのこと。実際本作で必要な操作は、画面下に表示されているポーズを選ぶことと、ポーズの角度を変えることだけだ。
ただ、ポーズによってはダンスのように動き続けているものがあるため、うまく壁の穴を抜けられそうな部分で停止する必要があり、これが実におもしろい。角度やタイミングによっては思わず笑ってしまうポーズになるし、壁の穴をスルーできずにぶつかってしまうと、哀れにもキャラクターが弾き飛ばされてしまう。キャラクターには悪いが、こうした絵面が非常に面白く、思わずSNSでシェアしたくなってしまうほど。気軽に遊べて楽しい気持ちになれる、素敵な作品だと思う。

ホラーとしても経営シミュレーターとしても好感触!「呪いの骨董屋シミュレーター」
最後の作品は、再びホラーゲームを紹介したい。「呪いの骨董屋シミュレーター」だ。主人公は両親を失った少年。しかしその原因は自分自身が持つ強力な呪いにあり、この呪いを祓うためには、呪われた品々を街から遠ざけなければならない。このため少年がはじめたのが、呪いの品を売買する骨董屋だ。

プレイヤーは実際にこの骨董屋の経営を行うこととなる。骨董品を持ってきたお客さんから買い付け、骨董品を求めるお客さんへと販売、その差額で儲けていく。クリエイターの花澄匝氏によると、ホラー好きなことが、本作を企画・開発したきっかけとのこと。もちろんホラーゲームとしての世界観も魅力的だが、なにより本作はこの「骨董屋」としての経営パートがよくできている。
プレイヤーのリソースとして「体力」が存在。骨董品を持ち込んできたお客さんの人となりを観察したり、骨董の鑑定を行ったりすると「体力」が減少していく。観察や鑑定をすればするほど正確な値付けが可能になるが、そのためには「体力」が必要。この駆け引きがよくできていると感じた。リリースが待ち遠しい一本だと思う。

独特過ぎる企画はどのように生まれた?「デバッグしないと出られない部屋」主催者インタビュー
今回会場でプレイしたゲームはいずれも面白かったが、本イベントの特徴は、ゲームの外側にも「デバッグして廃校からの脱出を目指す」という形でゲーム的な要素が存在していることだ。この特徴的なイベントをどのように企画したのだろうか? 主催者のゆーりんち氏とzero氏にうかがった。

――最近は各地でさまざまなインディーゲームイベントが開催されており、いずれも独自の特徴を持っています。ただその中でも「デバッグしないと出られない部屋」は、廃校×脱出×デバッグ×インディーゲームイベント…ということで、かなり特徴的ですよね。
ゆーりんち:実は、前々からインディーゲームイベントを手掛けていまして、その中でフィーチャーしてきたのが「フィードバック」なんです。ゲームを作っても、誰にも触ってもらえない、フィードバックをされない…となると、ゲームの面白さが磨かれていかないですよね?
今回はこの「フィードバック」について、プレイヤーにとっても開発者にとっても、よりよいものにできないか…と考えました。とはいえ、ただ「フィードバックしてください」というだけだと難しいので、そこを楽しんでもらえる形として今回の企画を考案したんです。
――なるほど。実際にかなり面白い企画だと感じたのですが、一方でチャレンジングな企画だとも思います。イベントが実現に至るまでは、やはり苦労されたのでしょうか?
ゆーりんち:正直、色んな方との繋がりがなければ実現しませんでした。最初は自分1人でやろうとしていたのですが、なかなか進まず…。それこそ、会場を予約する、参加してくれるクリエイターさんを集める、告知をする、そのほか様々な協力者の方を集める…という部分で、人とのつながりがなければ実現不可能だったと思います。zeroさんにも、Xの発信やパンフレット、ポスターといった印刷物の作成、会場の動画制作といった点でお世話になっています。
――ちなみに、ちょっと気が早いのかもしれませんが、今後、このイベントのシリーズ化というのは考えていらっしゃるんですか?
ゆーりんち:今回このイベントは「デバッグ」という点が前提になっていますが、本質としては「フィードバック」です。その観点では、今回のように一般の方にプレイしてもらって「フィードバック」を受け取るというものも考えられますし、ゲーム業界のクリエイターやプロデューサーの方にプレイしていただくといった切り口も考えられます。そんな風に、イベントの形は変わるかもしれませんが、「フィードバックを受け取ることができる場」というかたちのイベントは、今後も展開していきたいです。
――わかりました。ありがとうございます。では最後に、この記事の読者の方に向けて、一言ずつメッセージをいただけないでしょうか?
ゆーりんち:私が思うインディーゲームのよさって、「プレイヤーと開発者がとても近い距離で一緒にゲームを作り上げることができる」って点にあるんじゃないかと思います。開発者とプレイヤーがひとつのコミュニティの中でフィードバックを繰り返しながら、よりよいゲームにしていく。
こうしたコミュニティの在り方は、ある意味「推しアイドルを育てていく」ような楽しさがあるんじゃないかと思うんですね。だからこそ、ただ特定のゲーム単体をプレイする以外にも、ゲーム開発者さんを推すだとか、そのゲーム開発者さんのゲーム全般を推す…といった、広い観点での楽しみ方を是非してみてほしいです。
zero:「ゲーム遊ぶのが好き」という方が多いと思いますが、ゲームを遊んでいる際、「自分だったらこうするのに!」「もっとこうなら面白いのに!」みたいなことを感じたことがあるんじゃないでしょうか。実際にゲームを作る側に回ると、また視点が変わって、異なる楽しさがあります。
なので、ちょっとでも興味があるなら、是非1回ゲーム開発にチャレンジして欲しいです。今だったら生成AIもあるので、自分が思い描いたものを形にしやすいと思うんですよ。その延長線上に、自分の作ったゲームをプレイしてもらうというインディーゲームイベントの楽しさがあります。そうやって盛り上がっていくと、僕たちも楽しいです。
――本日はありがとうございました!
インディーゲームのみならずイベントの発展にも期待が持てた良イベント
主催者のゆーりんち氏の話にあった通り、インディーゲームイベントのメインは、クリエイターとプレイヤーの交流にある。これはそもそも、ゲームが「遊び」であることを考えれば当然といえるのかもしれない。ゲームに限らず皆で一緒に遊んでいると、「ルールをこう変えてみよう」だとか、「今度はこんな風に工夫しよう」と話し合い、より楽しい遊びを目指すものだからだ。
こうしたインディーゲームイベントの主旨を踏まえた上で、ゲームの外側の「フィードバック」をもゲーム化した点に本イベント独自のおもしろさがあると感じた。今後さらに多くのインディーゲームがリリースされていく中で、インディーゲームイベントも、さまざまなものが実施されていくことだろう。と同時に、「インディーゲームイベントそのものも、ゲーム的に面白く進化していくのではないか?」……そんな期待を持つことができたイベントだった。ゆーりんち氏、zero氏の次回以降のイベントにも期待したい。

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