9月1日よりクロシードデジタルがサービスをスタートした広告ネットワークサービス「RecoCro Ads」(レコクロアド)について、サービス責任者である水野真志氏にインタビューした。
クロシードデジタルが9月1日よりリリースした広告ネットワークサービス「RecoCro Ads」。本サービスでゲームメーカーは、Gamerを含む13のゲーム系メディアに対して広告を配信することが可能だ。
各読者の興味関心に合致した広告を配信できる点が最大の特徴で、ゲーム運営会社は効率的な広告活動が可能になるという。
広告はメディアにとっては貴重な収益源となり運営には不可欠なものではあるが、読者にとっては邪魔者だと思われ、飛ばしてしまう人も多いはずだ。
「RecoCro Ads」は、今までの広告ネットワークとは異なり、読者にとってもメリットのあるサービスを目指しているのだという。今回、クロシードデジタルの企画開発部 部長で、セガゲームスのデジタルマーケティング事業統括部にも所属する水野真志氏に話を伺った。
――まず、クロシードデジタルについて教えてください。
水野氏:クロシードデジタルは、ゲームメーカーであるセガゲームスとクラウドソーシング事業をされているランサーズとの合弁会社として、2016年8月に設立しました。企業のデジタルマーケティングの支援を行っており、単純な広告クリエイティブではなく、ユーザーに新しい広告体験を提供することをコーポレートミッションとしています。
コンテンツ制作のノウハウを多く持つランサーズは、Quant(クオント)というメディア読者のロイヤリティをデータ化するマーケティングシステムを提供されています。Quantのエンジンにセガゲームスのゲームに関する知見を組み合わせることで、ユーザーに新たな広告体験を提供できるのではないかと考え、設立に至りました。
――「RecoCro」とはどういったサービスなのでしょうか?
水野氏:「RecoCro」はウェブメディア間でユーザーを相互送客するサービスです。各メディアの読者と親和性の高い関連コンテンツをレコメンドしています。
――どのようなメディアが参画しているのでしょうか?
水野氏:エンタメ系の法人運営メディアに参画いただいており、8月末の時点で13メディアに導入いただいています。各メディアでは新規の読者を獲得するための接点として活用頂いています。
――セガゲームスさんでは「Noah Pass」(ノアパス)というネットワークをサービスされていますよね。
水野氏:「Noah Pass」は、ゲームデベロッパー向けのマーケティング支援ツールです。中心となるサービスである「Bridge」(ブリッジ)は、ゲームアプリ間での相互送客システムで、多くのゲームデベロッパーに利用いただいています。ゲームデベロッパーにとって増大する広告宣伝費の負担が重くなる一方でした。そこで、無料で相互送客をするサービスを提供し、広告宣伝費の圧縮を可能にし、本来のゲーム制作に充てられるようにしました。そうすることで、良質なゲームを開発することが可能になり、ゲーム業界の発展につなげていこうというコンセプトです。
クロシードデジタルでは、「Noah Pass」と同様のコンセプトを「RecoCro」として、ウェブに広げていこうと考えています。
――サービスを開始した「RecoCro Ads」とはどのようなものでしょうか?
水野氏:「RecoCro Ads」は「RecoCro」のシステムを活用した広告ネットワークで、ゲーム関連メディアを中心に9月1日より提供を開始しました。各メディアの読者に最適な広告を配信することが可能です。
たとえば、ファンタジーRPGを好きな読者に対して、女性向けパズルゲームの広告を配信しても良い効果は得られないですし、読者も興味のない広告は飛ばしてしまうと思います。
ファンタジーRPGが好きな読者に対しては新作のファンタジーRPGを紹介するといったように、最適なタイミングで、趣味趣向に合致した広告を配信することで、広告主にとっても読者にとっても、より良い広告体験を提供できます。また、自分と近しいユーザー属性の人が遊んでいるゲームを広告配信するなど、ユーザーごとの深いインサイト(自身も気付いていない本音)に対する広告配信も可能になると思います。
セガゲームスのゲームアプリでテストを実施しているのですが、同じタイトルで行った既存広告ネットワークと比較したところ、獲得効率が最大で1.6倍に上昇しました。今後、広告の案件数が増えるに連れ、より読者にマッチする広告を提供できるため、さらに効果の上昇が見込めると思います。
将来的には、長期間ゲームプレイを休んでいたプレイヤーに対して、復帰キャンペーンの告知を流したり、あるアニメコンテンツが好きな読者には、そのアニメとのコラボをしたゲームの情報を広告として提供することも可能です。
広告を読者に押し付けるのではなく、読者にとって関心の高い情報を提供することで、読者・広告主・媒体の3者にメリットのあるサービスにしていきます。
――相互送客するだけの「Noah Pass」や「RecoCro」のサービス自体は直接収益にはつながらないですよね。
水野氏:「Noah Pass」は、当初、直接収益を生むものではありませんでしたが、「Bridge」の相互送客システムによる集客で、広告宣伝費を圧縮することができました。ただ、セガゲームスだけで行うのと、他社アプリとのネットワークにするのとでは、効果が全く異なったんです。
セガゲームスであれば、どのタイトルであってもセガゲームスらしいユーザーさんが集まる傾向にあるので、より広範囲のユーザーと接点を持つためにはネットワークを拡大する必要があります。
ゲームアプリであれば、新規ユーザーの90%が1ヶ月後に離脱してしまうといったケースも多くあります。90%の離脱ユーザーはせっかくゲームを遊ぼうとダウンロードしたのに、思っていたゲームと違うと感じて離れてしまうわけです。離脱してしまったユーザーに適切なゲームを紹介することができれば、ユーザーの奪い合いにもならず、ユーザーも本来自分が遊びたかったゲームに出会えるチャンスを作ることができます。
セガゲームスには“場を提供する”という風土があり、このような仕組みを誰も作らないのであれば自分たちで作るという考えに至りました。Noah Passはアプリのシステムですが、ゲームだけでなくさまざまな分野を扱う総合エンタメ企業として、このシステムをウェブでも拡大させていこうとランサーズと作ったサービスが「RecoCro」です。
――「RecoCro Ads」は今後どのように進化していくのでしょうか?
水野氏:「RecoCro Ads」以外にも新しい広告体験を提供したいと考えています。たとえば、ウェブ上に3Dで商品やキャラクターなどを表示する広告を開発中で、読者はキャラクターを360度自由な方向から眺めることもできます。興味があれば、クリックし公式サイトなどを訪れることも可能です。
他にもさまざまな新サービスを開発中で、順次「RecoCro」の参画メディアに提供していく予定です。「RecoCro Ads」はゲームユーザーとの親和性の高いメディアを中心に中長期的に展開していきます。今までに無い広告体験を提供していきますので、今後の展開にご期待下さい。
――ありがとうございました。