グラビティゲームアライズより2024年5月30日に発売されたPS5/PS4//PC/Nintendo Switch対応タイトル「東京サイコデミック ~公安調査庁特別事象科学情報分析室 特殊捜査事件簿~」(以下、「東京サイコデミック」)のプレイレポートをお届けする。

目次
  1. 実写と2D映像が融合した斬新な内容に
  2. 超常現象を現在の技術で解明したら……?
  3. case5から、今井秋芳氏らしい展開に!
  4. 有能すぎる仲間たちが頼もしい!
  5. 暗号解読や、ヘッドフォン必須な場面も
「東京サイコデミック」プレイレビュー:これは超常現象なのか、事件なのか? 「人体発火事件」などオカルト事件の真相を科学捜査で追うの画像

本作は、未知のウイルスによるパンデミックから3年後の東京を舞台にした、推理アドベンチャー。プレイヤーは探偵として、様々な科学捜査を駆使しながら、超常現象としか思えない事件を、捜査していくことになる。

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「東京魔人學園伝奇シリーズ」や「九龍妖魔學園紀」などで知られる今井秋芳氏が、本作の監督/脚本/演出/ゲームデザインを務めている。

なお本作は、【7月中旬に各ハードで大幅なアップデートがされ、特に「報告書作成」部分にてゲーム内容が大きく変わっている】ので、注意してほしい(詳細は後述)。
https://tokyo-psychodemic.com/ns240712/

実写と2D映像が融合した斬新な内容に

本作の最も大きな特徴は、実写と2D映像が合わさった独特の世界観だ。実写で描かれるニュース映像などは、まるで本作が現実のことのように思える。

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特に未知のウイルスによって東京がロックダウンされていくニュースのくだりなどは、2020年に起こった新型コロナによるロックダウンを彷彿させ、4年前のあの頃のことを思い出して背筋がぞわっとしてしまう。

一方で、キャラクターなどは2D映像で描かれる。

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本作があくまでゲームなのだと感じられることもあり、筆者は2Dキャラクターが出てくると少しほっとする。

リアリティのある実写映像は、ニュース映像に限った話ではない。科学捜査で使用するいわゆる監視カメラ映像なども、実写になっている。監視カメラに写っているはずの目的の人物を探し出す……なんていう捜査は、早送り、巻き戻し、再生を繰り返すという地味な操作を繰り返すながらも、プレイしていると何故かワクワクする。

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しかも、本作はリアルな東京が舞台ということもあって、時には「この場所、知ってる……!」という場所も出てくることがあり、知っている場所が出てくると嬉しくなる反面、どこか空恐ろしさ的なものも感じるのだ。フィクションのはずなのに、こんな事件がどこかで起こっていそうで、じわじわと心が浸食されていくような感じになると言えばいいだろうか。

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もちろん、東京を知らなくても全く問題なく遊べるので、その点は気にしないでほしい。と言いつつ、八王子が登場した時にはやはり心躍ってしまった元・多摩の民の筆者なので、そういう面で東京を知っているとより一層楽しめる部分がないとは言えないのだが……。さしずめ、東京が舞台の推理ドラマを楽しんでいるようなものだと思ってもらえると、良いのかもしれない。

超常現象を現在の技術で解明したら……?

本作は、とにかくリアルに迫った推理ゲームである。

物語はcase1の「人体自然発火事件」から始まるが、これは「人体の周囲だけが焦げ、部屋全体は燃えておらず、しかも人体そのものはほんの一部を残して焼失してしまっている状態で発見された」という、何十年も前から世界各地で起こっている現象を題材にしている。

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基本的に本作は、こういった「超常現象」としか思えない事件を取り扱っている。

果たしてこれは超常現象なのか?
はたまた、トリックなのか?
他殺なのか?
自殺なのか?
事故なのか?

様々な資料を基に仮説を組み立てていき、自分自身で結論を出すことになるのだ。

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なお、本作で起こる事件は基本的に現代の科学で説明が付くようになっているのだが、本作には「異能力」という存在が深く関わってくるのもポイントだ。

「異能力」とはその名の通り、人間が本来持ちえない能力を持った人間のことで、とある宗教団体によって「異能力者を産み出す」という人体実験が行われていたのだ。

主人公(プレイヤー)とその相棒である紅葉巴杏(あきばともな)は、自分たちこそ人体実験を受けていたわけではないものの、この宗教団体と因縁があり、異能力者による超常現象としか思えない事件を追っていけば、やがては逃走した教団の教祖へと繋がるのではないかと考えているのである。

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それもあって、「この事件は異能力者による超常現象なのか?」という点が本作に深く関わってくる。

「人体自然発火事件」は果たして異能力者によるものなのか、否か。ひとつひとつ証拠を分析していくことになるのだが、「超常現象としか思えない死体」ということもあり、本作に登場する映像は、少々「グロい」ものが多い。死体発見現場の写真なども細かく分析していく必要があるため、推理アドベンチャーは好きだけれどグロ耐性は低い、という人には少々厳しいかもしれない。

人体発火事件の現場写真
人体発火事件の現場写真

死体発見現場の写真、事件現場近くの監視カメラ映像、被害者に関する様々な証言、様々な要素をひとつひとつ自分の目で確認して、推理を進めていくことになる。

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例えば書類ひとつも、ただ読むのではなく「注視モード」というモードで読むことによって、気になるワードを抜き出すことができる。そこから捜査が進展していくこともあるので、証言や資料も細かく読んでいかなければならない。

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監視カメラの映像をひとつずつ確認し、被害者の足取りを追うこともある。

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監視カメラ映像はふたつ並べて表示することが可能で、被害者の顔写真と監視カメラの映像を並べて表示させ、被害者の行動を割り出したり、被害者が持っているものと事件現場にあった証拠品が一致するかどうかなどを調べたりすることもできる。

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このように本格的な捜査が可能とあって、UIは慣れるまで少々難しく感じたが、鈍臭い筆者でも充分にきちんとした捜査が行えるようになっている上に、会話中以外はほぼ、どのボタンで何の操作が行えるかも表示されているので、誰でも問題なく遊べるはずだ。チュートリアルも丁寧に作られており、特にcase1では相棒の紅葉が捜査の進め方から機材の扱い方まで全て教えてくれる。

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……とは言っても、最終的に事件を解決するのは、あくまで主人公であるプレイヤーの役目。証拠が一通り出そろうと、「報告書作成」へと移る。

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報告書には、この事件がどうやって起こったのかを記していくことになるのだが……

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前述の7月中旬に行われたアップデートで、この報告書内容の設問の変更と、設問数が大幅に追加され、難易度がかなり上がった。

いわゆる最終的な回答になる部分がこんなにも変わるのか、というくらいに変わっている。もしもアップデート前にプレイして「結構簡単だったな」と思ったプレイヤーがいたら、改めてプレイし直してみてほしい。

難易度は上がっているのだが、設問ごとに紅葉が「そうね、これはそうだと思うわ」「それはどうかしら」というような言葉を発するので、「これで合っていそうだな」「これは間違っているのかも」ということは、薄っすらとわかるようになっている。

ちなみにcase5に限っては報告書の回答を間違えるとゲームオーバーになってしまうので、注意が必要だ(その際はリトライすれば報告書の作成から再開できるので、そこは安心してほしい)。

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おおよその設問は、持っている証拠でどうにかできるようになっているのだが、後半になるほど「ここでこの監視カメラの写真を撮っておかないとだめだったのか!」という場面もあるので、証拠となりそうな場面などはどんどん写真に残しておくと良いだろう。写真は50枚を超えると自動的に上書きされてしまうのだが、さすがに50枚もの写真を撮って、それを1枚1枚見比べるというようなことはない。

報告書の作成段階になってから「これはもしかしたら証拠が足りないかも」と思っても、そこで改めてビデオなどを見返すことが可能になっているので、足りない証拠をかき集めてからまた報告書の作成に戻ることもできる。

大事なことなのでもう一度言うが、アップデートにより【報告書の最終的な回答がリリース当初と大きく変わっている】。より深く事件の詳細を暴かなければならなくなったが、このアップデートは非常に面白いと思う。なんと言っても、事件をぼんやりと捉えているだけでは真相にたどり着けない。

「頭ではわかっているけど、証明するための証拠が見つからない……!」というような場面でも必ずどこかに見落としがあって、証拠はきちんと自分が持っているものの中に存在している。

報告書作成欄に書かれている証拠を揃えるために再び資料を見直したり、それによって「こんなところでこんな出来事が起こっていたのを見落としていた」と気が付くこともある。

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報告書作成は、アップデート前よりはるかに面白くなっている要素で、より一層「自分の手でこの事件を解き明かす」感が強くなっているので、「我こそミステリ好き」を自称する人にこそ、挑んでみてほしい。

case5から、今井秋芳氏らしい展開に!

今井氏のシナリオというと学園ジュヴナイルものを想像する人が多いと思うが、本作はそれとは一線を画すシナリオになっている。

case2では、空から通常降ってこないようなもの(カエルや魚など)が突然降ってくる「ファフロツキーズ現象」を、case3では人が突然消える「神隠し」を、case4では、日本近海に存在するという船舶や航空機が突如行方不明になるとされる「三角海域」を扱っており、いずれも今井氏の視点で現代ならではのトリックが展開される。

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いわゆる都市伝説的な話を科学的に論破していくのだが、あくまで「現代ならではの解釈、このゲームの中での解釈」な点が面白いところだ。例えば人体発火現象にしても、ファフロツキーズ現象にしても、神隠しにしても、このゲームの外で起こった過去の事象まで説明できるものではない。本作の中で起こった人体発火現象はこういうことであった、ファフロツキーズ現象はこういうことであった……というのを、地道な捜査で解明していくのだ。

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そこには一見「異能」なんていう超常現象は一切絡んでいないように見えるのだが、case5で世界は一転する。これ以上書いてしまうと実際ゲームをプレイした時の面白さが欠けてしまいそうなので伏せておくが、case5をプレイすると「これが今井氏がやりたかったことなのだな」と感じられるようになっている。

少々グロ耐性は必要なものの、今井氏のファンならばプレイしておきたい作品のひとつとなっているのは間違いない。なお、全事件がグロッキーなのかというと、全然そんなことはない。

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一番最初の人体発火現象が個人的には一番「うっ」となる衝撃的な画を見せられたが、それ以降はバラバラ死体など文章こそグロッキーな部分はあれど、絵面的に衝撃を受けるほどではなかった。

一応本作のレーティングはCERO D(17歳以上対象)なので、レーティングに沿った大人向けの推理ゲームだと思って良いだろう。

有能すぎる仲間たちが頼もしい!

本作は、ひたすら捜査資料と向かい合う推理ゲームとなる。現場写真はもらえるが、主人公自らが現場検証することは基本的にない。というのも、とある事情で主人公らは地下の隠れ家に潜んでいるからだ。

そんな彼らを助けてくれるのが、「ダークウェブ」の仲間たち。仲間はたった数人なのだが、いずれも非常に有能。博識な医師の「Bartender」こと戸塚祐介や、法務省公安調査庁に所属して主人公らに捜査資料を横流ししてくれる「Junket」こと杵島・ローレンス・ユイカ、超常現象に詳しい「Odd」こと嬉野めぐり、凄腕のエンジニアの「Mechanic」こと栢原隆一。

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少ない仲間ながら、彼らは主人公らが困った時にすぐ助け舟を出してくれる。

例えば「ネットワーク上にあるものはハッキングできる」と言う、Mechanic。「いやいや確かに理論上はそうかもしれないけれど、だからってそんな簡単にハッキングできないよね?」そんな常識は、彼には通用しない。

彼の手に掛かれば、どんな監視カメラの映像もハッキングできてしまう。監視カメラだけではない。個人情報から、国家機密レベルのものまでハッキングできてしまう。恐ろしい男だ、Mechanic。恐らく彼がいなければ、それだけで全ての事件は超常現象と扱われてしまうことだろう。

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主人公らは隠れ潜んでいるとは言え、わずかながら外出もできるようになっている。外出先では仲間の普段見れない姿が見れるので、外出チャンスは逃さないようにしたい。なお外出できる機会は非常に限られており、見逃してしまいがち。動けるときに必ず動くよう、癖付けておきたいところだ。

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暗号解読や、ヘッドフォン必須な場面も

本作は少々難易度が高くなっているのだが、難易度を上げている理由として「ほぼヘッドフォン必須とも思われる音声の聞き取り」や、「ヒントはあるものの知識がないと解読できない暗号」などが挙げられる。

筆者はテレビで本作をプレイしていたのだが、テレビのスピーカーではほぼ無理であろう音の判別などもあった。絶対に自力でクリアしたいとなれば、ヘッドフォンは必須のアイテムになる。

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また、暗号の解読はヒントがあるので、暗号自体はメモ帳さえあれば解読できるようなものなのだが、暗号が何を意味しているのかとなると、更なる知識が必要になる。知識がない場合、恐らく解読した暗号をGoogle等のネット検索にいれてみるくらいしか、解決策がないだろう。だがネット検索をすれば、ほぼ確実にネタバレを踏むことになってしまう。

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この2点については少々残念だ。特に筆者は耳の持病でヘッドフォンやイヤフォンができないため、ネックスピーカーを引っ張り出してクリアしたのだが、難聴なのもありネックスピーカーでも音の判別は少々厳しかった。

暗号解読はせめて紅葉がもう少しヒントをくれるか、暗号を解いた時点で一度暗号を入力させて、そこから更にパスワードを割り出すというワンステップを入れることによって、方面に疎い人でも少しはやりやすくなったのではないだろうか。

ただ、残念ではあるものの、「リアリティのある地道な捜査」という面では納得できる部分もある。音を聞き分ける時、当然ながら大概の人はヘッドフォンを装着するだろうし、パスワードも「わからないことはネット検索すれば良い」のは事実である。

ゲームとしてのUIはもう少し工夫できた点ではあると思うし、現実が介在することによってそこで少なからず没入感が薄れてしまうのは残念だが、それを「本格的」と捉えるかどうかによっても、評価は変わってきそうだ。

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……と、残念な点を挙げたが、筆者の総観としては「非常に面白い良作」である。「リアルさ+異能力」という現実とオカルトが織り交ざった作風になっているが、現実で実現可能なトリックとそれを解き明かしていくワクワク感は文句なしに面白く、そこに異能力というファンタジーが混ざることによって混迷を極めていく様相は、他の推理アドベンチャーではなかなか見かけられない。

本作は、必ずしも犯人を見つけるシナリオではないところも面白かった。普通の推理アドベンチャーは、大抵は各シナリオで最終的に犯人を見つけることになるが、本作はあくまで起こった超常現象が現実的に実現可能か否かを見つけていくゲームとなる。

さらに、報告書では「これが俺の推理だ!」と半ば強引に進めることもできてしまう点も、他の推理アドベンチャーと大きく異なっていて良い(case5を除く)。ただし強引に進めると、結末で流れるドラマに変更があるようだ。「全てのイベントを見たい!」という人は、報告書作成中のセーブデータを残しておくと、やり直しやすくてオススメだ。

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三度繰り返すが、報告書作成の項目がアップデートで大幅に変更になったのも、個人的には加点部分である。難易度は上がったものの、事件のあらましをきちんと細かく整理できるようになっており、事件の過程が解りやすくなった。

他にもアップデートで細かいUIの修正が行われており、操作の多少の煩雑性はあれど、全体を通して「慣れ」で解消できる部分である。

シナリオは文句なしに面白く、グイグイと引き込まれてしまう。ほぼリモートで行う捜査だが、筆者自身が日頃リモートワークということもあってか、違和感を覚えることはまったくなかった。

各プラットフォームで体験版も配信されているので、気になった人はぜひ体験版だけでもプレイしてみてほしい。もっとその先を遊んでみたくなるだろう。

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