【「UN:Me」制作発表記念】マルチクリエイター・山中拓也のエッセンスを紐解く:最終回はマーケットインじゃないからこそのコンセプトの新作ゲーム「UN:Me」複数の魂を1人で演じるからこその表現にも注目

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0コメント TOKEN 近藤智

山中拓也氏が企画・シナリオを担当するゲーム作品「UN:Me」の制作発表を受け、「Caligula2」以来のゲーム企画作となる同作の発表に至るまでのコンテンツに触れるインタビュー企画をお届け。最終回は集英社ゲームズとヒストリアが手掛ける「UN:Me」の話を聞いた。

企画・編集・インタビュー:TOKEN
インタビュー・文・構成:近藤智

「UN:Me(アン・ミー)」とは

あなたの“選択”により最後に残した魂。その“選択”の結果を見届けるのは──あなた。

不思議な迷宮で目覚めた少女

少女の頭の中に語り掛ける4つの声があった

彼らは、この迷宮の中に漂う人間の「魂」だった

4つの「魂」はそれぞれの想いを果たすため、

少女の体を乗っ取り、思い思いに行動しようとする

4つの「魂」の正体はいったい何なのか?

この不思議な迷宮のは誰が?何故つくられたのか?

少女はいったい誰なのか?

それぞれの「魂」と対話し

それぞれの「魂のトラウマ」を乗り越え

迷宮を進んでいけば、答えはわかっていく…

【「UN:Me」制作発表記念】マルチクリエイター・山中拓也のエッセンスを紐解く:最終回はマーケットインじゃないからこそのコンセプトの新作ゲーム「UN:Me」の画像

――2年ほど前のインタビューで開発期間が長期化しがちなゲームだけではなく、回転の早いコンテンツもやり続けて存在を認識してほしい、といったような主旨のお話がありました。「Caligula2」から「UN:Me」までが、ちょうどそのようなサイクルになっているように感じました。

山中:そうですね。おっしゃっていただいた通り、やはりゲームの開発期間は非常に長くなってきている。そのため、自分自身のレベルアップのためにも、作家性を理解してもらうためにも色々なプロジェクトを手掛けていこうという方針はそのままです。そして「どうして、こうしたやり方をしているんだろう?」と、自分の中で何となく言葉にできた部分があって。

このコンテンツならゲーム向きであるとか、これはアニメ向きであるとか、これはYouTubeでインタラクティブにやったほうがいいとか、思いついた企画に対してベストなメディアを選べる。その選択肢を持てているのが、自分の強みなんだなと。「MILGRAM -ミルグラム-(以下、MILGRAM)」や「ネガティヴハッピィ(以下、ネガハピ)」なども、まさにそうですね。

僕がゲーム開発しか手段を持たない人間だったら、もし思いついた企画で「ゲームじゃない発信のほうが合ってるんだけどな……」と思っても、ゲームでやらざるを得ない。このような働き方の強みは、思いついた面白いことを一番最適な方法でアウトプットできることなんですよ。そうしたところが、自分のスタイルになりつつあるのかなと思ってますね。

やはりゲームファンにも決まった母数があって、ゲームしか手段がないとその中の取り合いになってしまうじゃないですか。一方、YouTubeで展開している「ネガハピ」のお客さんは、僕がゲームだけをやっていたらまず出会うことがなかった方々でしょうね。そういう方が「山中ってゲームも作ってるんだ」と「UN:Me」などに興味を持ってくれて、「普段ゲームやらないんだけど……」と外からファンを獲得できれば業界に対しても健全だと思います。

お笑いや演劇などで多才な才能を発揮している蓮見翔さんが主宰する「ダウ90000」というユニットがあるんですけど、演劇でなかなか観客を集められないといわれる時代でも公演が満席になるそうです。自分にとってのホームの外へ出向いて、また自分のホームに戻ってくるような、そうした動きができているのかなと思うので、さらに明確に動けるようになれたらいいなと。

「MILGRAM」も、海外のお客さんがすごく多いんですよ。「UN:Me」が発表された時も、僕が「Caligula」だけを手掛けていたら振り向いてくれなかった方もいらっしゃる。そういう繋がりがうまく回っていくのが、自分なりの業界貢献でもあるように思います。

――元々ゲームクリエイターとして活躍されていて、多角的に動いている方は結構いらっしゃると思うんです。ただ、もちろんパーツは変わると思うんですけど、比較的ワンセットで考えていらっしゃる気がして。山中さんが取り組まれているものはしっかりと軸があって、その中で動いているような印象です。

山中:こういう活動をしていると、自分の企画で0から1までを完全にやるものと、他にプロデューサーがいらっしゃるものがあります。自主企画と、受託仕事といいますか。そういうものは、常に両方持っておきたくて。自分の感性だけで生きていては、どうしても偏っていってしまうのではという気持ちがありますから、誰かの感性のもとで、その感性を自分なりのアプローチで実現するということもサボらない。そうした両翼で動かないと時代の流れにはついていけなくなるでしょうね。人から頼まれるものは顧客が求めている、いわゆるマーケットインですから、そうした世相のなかで「自分には何ができるのか?」と考えます。

一方「MILGRAM」や「ネガハピ」は、マーケットのことなど一つも考えていない作品です。商業的に適した形でなくても、作品ファーストでやらせていただけて「自分はこういうものを作るんだ」と、一種のポートフォリオ的に作り続けるというのは意識しています。まぁ、その思考で作った上で商業的に成立させられているから、こうして生きてられるんですが。

理想は、自分が0から1まで手掛けた作品に触れていただいて「自分のもとでも、そうした作品を作ってほしい」という方が出続けてくれたら、すごく楽に仕事ができるんですけどね(笑)。

――人から依頼を受けて生まれた作品も、自分の中から生み出された作品も、それぞれに「だからこそ生まれた」という大きな意味があると思います。

山中:そうですね。そうした中できっと、本当に自分のやりたいものは何かというのが見えてくるというか。何なら「これは僕がやるよりも、他の人がやったほうがうまくできるだろう」みたいなところも見えてくる。やりたくないこと、やりたいこと、得意なこと、得意じゃないことが分かってくる気がするんですよ。

――何といいますか、どんどん他に類を見ない働き方をする人になっていきますね。

山中:僕がスペシャルだなんて言うつもりは全くないんですが、本当にモデルケースになるような方がほとんどいらっしゃらない。「この働き方って、この先どうなるの?」というのは、実はちょっと悩んでいます。僕の場合、プロデュースや企画というところへ「自分でストーリーを作る」というのが付随しているから、色々やりやすい部分もあると思うんですが……。

ゲーム業界でいえば、イシイジロウさんなどは多方面でご活躍されていて参考になるのかな?っと思ったことはありますが、イシイさんはもっとお上手で大人な印象です(笑)。

このムーブって、やり方を少し間違えたらとても怪しい人になってしまうんですよ。名前だけは出ているけど、何もしてない人みたいな印象になってしまう。そういう人も見て北分、だからこそ、自分で書くということは、外してはいけない部分だと感じています。

皆さんそれぞれ書き手としての強みとか、個性的な書き味などを持ってらっしゃると思うんですが、僕の分かりやすい強みのひとつはプロデューサーでもあることなんですよ。これを世に出したらどういう受け取られ方をするだろうとか、どういったムーブメントを起こせるだろうかとか、お客さんがどのような反応をするか、みたいな「体験」の部分を考えて、それが書くモノに紐づいているのが自分の強みだと感じています。効果的な体験になるなら、実写の映像とか映画などもやってみたいですし、もう十種競技で勝とうかなみたいな気持ちで(笑)。

そもそも純粋な書き手としてスタートしたわけではありませんから、色々な能力を駆使して戦っていくしかない。となると、やはり十種競技チャンピオンがゴールなのかもしれないですね。あらゆるもので、自分らしい味を出せますから。

――それでは「UN:Me」について伺っていければと思います。コンセプトとしては人間が感じる“不安”がテーマで、ホラーではなく恐怖症(フォビア)を扱ったものだそうですね。

山中:パブリッシャーをご担当いただく集英社ゲームズさんが素晴らしいなって思うところは、本当にマーケットインじゃないんですよ。「UN:Me」はヒストリアさんと一緒に作った複数の企画の中でも「一発かましときましょうか」みたいな感じで作ったものなんですが、集英社ゲームズさんは手堅いものではなく「UN:Me」を選んだんです。商業性を見出したというより、新しいことをやろうとしている点を評価していただいたので「こんな会社あるんだ?!」と、こちらが驚いたくらいなんです。

――集英社ゲームズさんといえば、今は「都市伝説解体センター」のヒットでゲーム業界でも確かな存在感を放つようになりました。

山中:「都市伝説解体センター」のようなものすごくエンタメ性の高いものと「UN:Me」のようなタイトルが並んでいることが、もう「面白ければ何でもいいよ」と思っていらっしゃる証明みたいなものですよね(笑)。

集英社ゲームズさんといえば「都市伝説解体センター」というくらい、ノリにノッている状況です。存在を世界へ届けていこうという時に、すごく追い風になっていると思うんですよ。でも「都市伝説解体センター」でこうだったから、こうしましょうみたいな話は全くなくて。成功した道をなぞるのではなく、また別の道を追求する姿勢にとっても共感しています。

――そうした温度感のようなものは、やはりこれまで培ってきたノウハウのようなものが活かされているのかなという気もします。クリエイターが全力を出せるよう、作品にとってプラスになるような展開を考えてサポートをするという点では、非常に信頼できるパートナーなんだろうなと感じますね。

山中:今の時代に、ゲームを売るために必要なことをやってらっしゃるなと。例えば僕がフリューさんに在籍していた時代は、属人性の高いことが商業的にはメリットといえました。ただ僕にせよ他の方にせよ、そういう人が会社を去ってしまえば同じものは作れなくなってしまいます。運営として見るなら、デメリットといえますよね。

でも集英社ゲームズさんは、そうした属人性を一切怖がっていない。その腹の据わり方は、さすがヒットコンテンツを生み出してきた存在ですよね。

――「UN:Me」に話を戻しますが、代表的な恐怖症といえば集合恐怖症、先端恐怖症、いわゆる不気味の谷現象とかリミナルスペースなどがありますし、スクリーンショットには頭部の異形みたいなものもありました。ただ個人的には、この手のものに感情が動くタイプではなく、いまいち本作で描く“不安”というものにピンとこないのが正直なところです。果たして、このゲームを楽しめるのだろうかと。

山中:自然なだと思います。万人にとっての恐怖を提示するホラーと違って、恐怖症は人それぞれ違うという部分が大きいんです。言ってみれば自分にとっては大したことないモノを、他人は異常に怖がっているわけですからね。4つの魂、4人にはそれぞれに怖いものがあります。表層に出ている魂が誰かによって、別の魂だと怖くなかったものが、すごく誇張されて怖く見えるようになる……とイメージしていただけると良いのかなと思います。

そうした表現を行っていますが、プレイヤーにとっては大したことないものが4つあるかもしれない。でも、それはそれでいいだろうと思っています。その場合大事なのはそれを怖がっている人がいるということ。恐怖する魂に対しても「自分にとっては怖くないけれど、この子たちにとっては怖いんだな」と思ってもらい、物語が進んでいくにつれ「確かに、そういう経験したら怖くなるかもしれないね」と理解していく。

人はなぜ、それに恐怖を感じるのか。恐怖もまた、人の内面から生まれるもので、それを紐解く人間とのコミュニケーションみたいなものはやっぱり僕がずっと表現し続けてきたアプローチではあるので、その両面を楽しんでいただければいいなと感じています。

たまたま魂が怖がっている対象に共感できて「これは無理かもしれない」って思いながらプレイをする人もいれば、「全然共感できないけど、何でそんなに怖がってるのか、どんな事情を抱えているのかは気になるな」という感じでプレイしていただくのもいいかなと思います。

【「UN:Me」制作発表記念】マルチクリエイター・山中拓也のエッセンスを紐解く:最終回はマーケットインじゃないからこそのコンセプトの新作ゲーム「UN:Me」の画像

――一般的な作品からすると、4つの魂にはそれぞれに声優さんがいるというイメージですが、本作もそうなのでしょうか?

山中:肉体が同じであれば当然、声帯は一緒であるべきだと考えています。1人の方に演じ分けていただいています。

――分かりやすさ重視で、多重人格のようなキャラクターを別々の声優さんが演じるといったケースもよく見かけますが、あまりリアルな表現ではないですよね。

山中:ここ5年やってきた、お芝居への向き合い方がここに繋がってくるというか。それこそ中身が変わったから発声も変わるアニメ寄りの表現を選びませんでした。本作は僕がお芝居のディレクションもやらせていただいておりまして、役者さんには、肉体が一緒であることを強く意識してもらっています。ここでもゲームではあまりやらないお芝居みたいなものを表現できればと思っていて、シナリオと同じく自分の責任として力を入れている部分です。

喉のポジションとか、声の明るさみたいなものは変わるかもしれませんけど、肉体が別人なわけではない。このテーマでやる以上は、こうしたやり方を貫かないといけないと思っています。

【「UN:Me」制作発表記念】マルチクリエイター・山中拓也のエッセンスを紐解く:最終回はマーケットインじゃないからこそのコンセプトの新作ゲーム「UN:Me」の画像

――なるほど。最終的にはどの魂を“消去”するのか、という葛藤しそうな部分は理解できたんですよ。恐怖症については全く共感できそうもなかったので、やっと自分がどう楽しめばいいのか腑に落ちました。

山中:例えば夜道の足音とか、街灯に照らされて大きくなった後ろの人の影が見えるとかも、自分が男性であるか女性であるかとか、怖い思いをしたことがあるかないかによって見え方が全く違ってくるじゃないですか。そういう話だと思っています。そうした目に遭っていない、経験をしてこなかった人が、怖いと思う人の気持ちに寄り添えるようになるかもしれない。そういう部分で、きっとこのゲームが必要になると思います。

むしろ僕としては「自分の恐怖」ではなく「他人の恐怖」に寄り添うことに興味を持ってもらえるのは嬉しいことです。それだけ寄り添い、理解した相手を消去しなきゃいけないなんて、だからといって恐怖症を共通化しようとはしていませんし、誰にとっても怖いものとはしていないんです。ここは思い切りでもありますし、意味があるような気がしていて。魂にあまり興味を抱けず、恐怖対象にも思い入れがないという人は「このゲーム、何だったんだ?」と全く楽しめない可能性はもちろんある。それは想定済みなんです。とにかく、刺さる人に刺さってくれればいいタイトルですね。

僕は好き放題させていただいていて、むしろもう「刺さる人に刺さればいいから、別に刺さらない人はもういいじゃないか」という、いつものスタイルなんですが、ヒストリアさんはエンターテインメントへの防御力のようなものが高く非常に優秀な方々なので、ちゃんとゲームが好きな人が楽しめるよう、ベースの楽しさみたいな部分は担保してくれています。ちょうどいい塩梅になっているかと思います。発売まで楽しみにお待ちいただければと思います。

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「UN:Me」Steamページ
https://store.steampowered.com/app/4167200/UNMe/

2011年イクセル入社後、Gamerをはじめとした媒体の運営に携わる。好きなジャンルはRPG、パズル、リズム、アドベンチャー(ほぼギャルゲー)。実はゲームよりもアニメが大好きです。

趣味のゲーム系をはじめ、IT/ビジネス系などWeb媒体を中心に活動。AAAタイトルから乙女ゲーム、インディーズまで何でも遊ぶ雑食ゲーマー。あらゆる次元のアイドルと映画も愛してます。 https://contacos.hatenadiary.jp/

※画面は開発中のものです。

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