9月17日から21日まで千葉・幕張メッセで開催されている「東京ゲームショウ2026」。会場で行われた「モンスターハンターワイルズ:アセンダンス」開発陣へのインタビューの模様をお届けする。
「モンスターハンターワイルズ:アセンダンス」は、「モンスターハンターワイルズ」(2025年2月発売)の超大型拡張コンテンツ(有料)。本作は、本編から続くストーリー、新たなクエストランク、フィールド、モンスターの追加や新要素によって拡張される武器アクションなどを特徴としている。本編をさらに押し広げるゲーム体験を楽しめるよう、2027年の発売に向けて開発中だ。
インタビューでは、「モンスターハンターワイルズ:アセンダンス」プロデューサー・辻本良三氏、ディレクター・平岡拓朗氏、エグゼクティブディレクター兼アートディレクター・藤岡要氏の3名にお越しいただき、限られた時間の中ではあったものの、今作から登場した新要素などについて伺うことができた。

――「アセンダンス」の開発において意識した、「ワイルズ」本編から伸ばしたかった長所と、特に反省した部分はそれぞれどんなところでしょうか?
平岡氏:「アセンダンス」のプロジェクトを開始するタイミングで、「ワイルズ」を正当進化させたいという目標/コンセプトを掲げていました。正当進化というのは、質問にも繋がるところですが、まず「良いところはしっかり伸ばす」ということ。ユーザーさんが楽しんでくれた部分や、実際に作ってみて、ちゃんと良い形で響いたところはしっかりと伸ばしていくことです。
もう1つは、「改善できるところがあったのではないか?」という点です。ユーザーの皆さんからのフィードバックを受けて、それを気づきとして「もっとできることがあるんじゃないか?」という部分に関しては、徹底的に見直しをして改善していこうと。そういうことをやることで、「ワイルズ」の正当進化ができるんじゃないかというのが土台にあります。
良いと思っているところは色々ありますが、この後もおそらく話に出てくると思うんですけど、「ワイルズ」のアクション面はすごく面白いと思っています。傷のシステムや集中モードがあったところに関しても、それをベースにして、そこからさらに面白いアクションができないかというところで「ブーストブレイサー」につながっています。
フィードバックの反映という点ですが、「これに関してはこの対応をする」という特定の目立ったものだけがあるわけではありません。色々なフィードバックを確認させてもいただいて、それを気づきとして「変えるべきところは変える」、あるいは「どうしてもここは直せないのか」というところはちゃんと吟味した上で対応しています。先日のカプコンスポットライトでも紹介させてもらったのは一部ですが、UIなどの細かい調整も含めて、そういった改善を重ねているところです。
――平岡氏は「ダブルクロス」「アイスボーン」でリードゲームデザイナーをご担当されるなど、作風の異なるシリーズ作品で開発の中核を担ってこられました。そうしたご経験は今回の「アセンダンス」でどのように生かされているのでしょうか?
平岡氏:難しいですね……。「このタイトルの経験だからこう生かされた」というよりは、私自身が「ポータブル 3rd」からシリーズの開発に携わらせてもらって、「クロス」「ダブルクロス」、そして「アイスボーン」と関わってきました。
「ダブルクロス」「アイスボーン」ではリードゲームデザインを担当する立場にありましたが、特定の2タイトルから強い影響を受けたというよりは、これまでの開発のなかで自分自身が培ってきたものがベースにあります。
――新要素としてブーストブレイサーが入っていますが、先ほどのお話にもあったように、「ワイルズ」本編でも「傷」や「集中モード」など元々新しい要素がいっぱいありました。その中で今回、開発側として従来の「ワイルズ」の立ち回りにブーストブレイサーを入れることで、ユーザーにどういう変化を感じてほしいという思いがあったのでしょうか?
平岡氏:ブーストブレイサーを作ろうと思ったきっかけで言うと、「ワイルズ」のアクションベースがある中で、「『モンスターハンター』としての狩猟アクションの遊びって何だろうな?」と考えたときに行き着きました。
モンスターの「隙」や「攻撃チャンス」と言われるものに対して、ハンターがその隙を見つけて攻撃を差し込んでいくということが繰り返されていくゲームかなと思っています。じゃあその「隙」って何なのか。それは単純な攻撃の隙だったりもしますが、プレイヤー側がアイテムや罠を使ったり、あるいは環境を使ってダウンを取ったりすることでチャンスを作ることができますよね。
あとはモンスターの状況です。怒り状態だったら隙が少なくなっているから少し防御に回ろうとか、逆に疲れ状態だったら隙が出やすいから攻撃チャンスだとか、そういった状況が色々と組み合わさって、「モンスターハンター」の戦闘ができていると思っています。
だからこそ、プレイヤー側からの何かしらの「別の手段」で、そういったチャンスを作り出す瞬間が作れたら面白いものになるんじゃないかというのが、ブーストブレイサーの最初のきっかけですね。
そこで色々な実験をさせてもらって、最終的に今回の試遊版として出させてもらったブーストブレイサーという形になりました。狙いとしてはまさにそこで、実際に試した結果が今の形になっています。
――今のアクションのお話に付け加える形になるのですが、全14武器種すべてに新しいアクションを追加するというのはかなり大変ですよね? そのあたりの方向性についてはどうでしょうか?
平岡氏:もう、めちゃくちゃ大変です(笑)。バランスを考えて作るというよりかは、14武器種それぞれにちゃんとコンセプトや個性がある中で、ブーストブレイサー以外の部分も含めて、「もう1回、1個1個見直そうよ」というところから取り組んだ点ですね。
「この武器に対しては『ワイルズ』のベースを活かしつつ、こういう改良を加えたり、こういう要素を入れたりしたら、より際立つんじゃないか、より取り回しが良くなるんじゃないか」というところを1個1個吟味してやっていきました。
ブーストブレイサーに関しては、それぞれの武器の「特徴を伸ばす」「強みを伸ばす」というコンセプトをもとに、「こういうことができるよね」と考えて作っています。
ただ、開発の話になってしまいますが、全武器種の調整を見比べたときに「これはちょっと強すぎるんじゃないか」といった部分も出てくるので、現在も開発の真っ最中ということもあり、随時調整を重ねています。バランス調整としてはすごく難しいところですね。
触るプレイヤーの腕前やゲームの理解度によって使いこなし具合が変わってくる部分はありますが、ブーストブレイサーにおいて一番大事にしているのは、「使った瞬間に何かしらのチャンスメイクができるようにしよう」という点です。そこはすごく大事に設計しています。
――ブーストブレイサーについて、最初は「どういうものなんだろう?」と手探りで使いどころを探りながらプレイしていました。気づいたらゲージが溜まりきっていて、うまく使いこなせなかったなという印象もあったのですが、今のお話を聞く限りだと、「チャンスメイクのためにどんどん使ってほしい」という意図があるのでしょうか?
平岡氏:設計思想としてはまさにそこですね。自分で「ここはいけるぞ」というタイミングで使ってほしいというのが元々の狙いです。
ただ、プレイヤーの皆さんによって習熟度は違います。今回初めての出展かつ、事前情報もない中で、ユーザーの皆さんが遊んでいる様子を見ていると、ゲージが溜まったままになっている状態なども見受けられました。でも、それは新しい要素なわけですし、当たり前のことだと思っています。
例えば、モンスターがダウンしたときに、溜まったゲージを一気に使い切って畳み込むという使い方も、僕としては全然正しいと思っていますし、それも肯定したいです。慣れてきたら、ブースト状態の間はハンター自身のアクション性能がアップしているわけですから、その時間内に「3つあるゲージをどう使い切るか」というような選択も生まれます。プレイヤーそれぞれの習熟度に合わせて活用してほしいですね。
――ブーストブレイサーの映像が公開されたときに、SNSなどで「ドパガキ大歓喜」みたいな空気感もあったと思うのですが、そこは意識されたのでしょうか?
平岡氏:意識したというわけではないですね(笑)。結果的にそれぞれの武器の長所や強い瞬間を伸ばしていこうとしたときに、「こういう性能があったら面白いよね」と突き詰めた結果としてそうなったという感じですね。
藤岡氏:「この距離を一気に詰めるような性能が欲しいよね」となったとき、今まで重い動きをしていたハンターが急にスピードアップしていたら、何かしらの理屈がないと気持ち悪いなと。
じゃあ、そのアクションをどう表現に落とし込むか。ブーストブレイサーという新しいギミックをハンターに装備させることで、その推進力を使って一気に瞬発力を上げたり、ガードのノックバックを軽減したりする。そうやって一時的にハンターを強化する表現にすることで、ゆっくり動く武器種でも瞬発力を発揮できるようになるんじゃないかと考えました。
そうやってスタートしていったら、気づいたらハンマーが空を飛んでいた、みたいなことになっていましたね(笑)。
――ちなみに、本作に出てくるモンスターは、ブーストブレイサーを使いこなさないと倒せないようなデザインになっているのでしょうか?
平岡氏:そこはまず最初に否定しておきます。そういうことはないです。やりたかったアクションは、あくまで「ワイルズ」のアクションベースが中心にあって、その戦闘の中でブーストブレイサーを使うことによって「チャンスメイクできる瞬間が生まれる」というものです。言い換えれば、ゲージが溜まったときに瞬間的に思考や選択肢が広がる、そういうアクセントにしたかったんです。
実際にプレイしていただいたのでお分かりだと思うのですが、ずっとブースト状態が続くようなゲームにはしたくないなと思っています。「ワイルズ」のアクションにものすごく良いアクセントをもたらすものとして置いています。なので、「これを使いこなさないとマスターランクのモンスターは絶対に倒せない」というようなバランスには絶対にしてはいけないと考えています。SNSなども覗かせてもらっていますが、そういう調整にはしていません。あくまで「ワイルズ」のアクションベースがあってこそのものです。
もう1つ付け加えると、マスターランクに上がるので既存のモンスターのパラメーターが強くなるのは当然ですが、新しいアクションが追加されたり、技が変更されたりといったマスターランクならではの調整は施しています。ですので、新しい気持ちでこれまでのモンスターとのハンティングアクションを楽しんでもらえるんじゃないかなと思っています。
――ブーストブレイサーに関係する防具スキルなどは登場する予定はありますか?
平岡氏:……ここはちょっと、何も言えないです(笑)。
辻本氏:今回のTGSの体験版は、イベント用にちょっと特別な設定や調整になっている部分もあります。
藤岡氏:今回の試遊で実際に遊んでいただいた方の意見や、どういう風に遊ばれているかというデータはこちらでもしっかりと見させていただいた上で、自分たちのコンセプトに合った形にきちんと調整していく予定です。その上で、スキルがあるかないかを含めて、今後の続報を楽しみにしていただければと思います。
――フィールドについてですが、「雲居の遺跡群」という新しいフィールドに気流などの新要素が入っていますよね。今までのフィールドだと、環境ギミックを生かせるポイントが色々ありましたが、新フィールドならではの狩猟のポイントなどはあるのでしょうか?
藤岡氏:新しいフィールドを作る際は、必ず「そのフィールドでのエリアごとの遊び」に意味を持たせようと、レベルデザイナーたちが常に考えて取り組んでいます。ですので、遺跡群ならではのギミックはもちろん考えていますし、準備も進めています。
――今回の試遊版にはそういった要素も確認できるのでしょうか?
平岡氏:今回の体験版の範囲では、まだダイナミックな環境ギミックの全貌は出ていない状態ですね。情報としてはこれから順次公開されていきます。
――ちなみに、今回の体験版で遊べるフィールドは、全体の何%くらいの広さなんでしょうか?
平岡氏:そういうご質問になりますよね(笑)。
辻本氏:今回のステージはあくまで体験版用のものですから、フィールド全体のすべてではないですね。
――登場するモンスターについて、テオ・テスカトルが発表されましたが、直近のシリーズにも登場しているモンスターだからこそ、「アセンダンス」に出すにあたっての注目ポイントや「ここはここまで変わっているぞ」という部分はありますか?
平岡氏:まずはアクション面の調整についてお答えしますね。テオ・テスカトルはこれまでも様々なタイトルに登場していますし、プレイヤーの皆さんもそれぞれのイメージがあると思います。その中で「『ワイルズ』をベースとしたアクションのテオ・テスカトルをどう作るべきか」ということは当然考えました。
「直近のタイトルからそのままデータを移植して出します」では、ゲームのテンポ感が違うので絶対にダメですよね。「ワイルズ」のアクションのゲームスピードや、今回「アセンダンス」で追加される新要素を踏まえた上で、「どういう軸でテオ・テスカトルの行動を作っていくか」を徹底的に考えています。
過去作からアクションを取り入れつつ、「こういう行動を入れたら新しい立ち回りが生まれるんじゃないか」という新しいアクションも追加して、「アセンダンス」らしいテオ・テスカトルとして構築しています。
話題になっているスーパーノヴァについてですが……「特定の条件を満たすともう1回撃ってくる」という要素を追加することで、シリーズファンの人が驚いてくれたり、話題にしてくれたりしたら面白いんじゃないかと思って取り入れました。
実際にプレイしている方たちが、初見で「うわっ、もう1回来た!」とやられつつも、すごく楽しそうにリアクションしてくれているのを見ると、開発側としても「狙い通りのポジティブな驚きとして受け取ってもらえているな」と感じています。
見方によっては「意地悪なんじゃないか」と思われるかもしれませんが、それも1つの大きな変化として、プレイヤーの皆さんに楽しんでいただける要素になっていると思います。…ちなみにすべてのモンスターがそういう変化をするわけではないので(笑)。
――今回「ラオシャンロン」がかなり久しぶりに復活するとのことですが、過去作の時は個人的には少し単調な部分もあったかなと感じていました。それが今回、どのような遊びとして復活してくるのかすごく気になっているのですが、お話しできる範囲で教えていただけますか?
平岡氏:ラオシャンロン自体が、最後に登場したのは「ダブルクロス」だったと思います。
当時の作品と比べると、今のゲームのベース部分は大きく進化しています。「ワールド」「ワイルズ」で培ったシームレスな環境など、さらに進化したベースの上でどう表現するかというところですね。先ほどのブーストブレイサーの話とも繋がりますが、「ワイルズ」をベースにしたアクションをやっていく上で、ラオシャンロンを出すときに過去作のまま持ってくるのではなく、遊びのベースを変えなければならないと考えています。
表現できる技術も当時から大きく変わってきているので、今回の復活にあたっては、アクションも含めて「結構進化している」と思っていただければ嬉しいですね。
――今作において、古龍は再び大きなキーワードになってくるのでしょうか?
藤岡氏:ストーリーとしても、「古龍が姿を現した」という現象が全体の展開の大きなキーになってきます。今回、クシャルダオラなどの古龍も早い段階で発表させていただいたのは、そうした背景があるからですね。
――「ワイルズ」の本編時点では生態系の話がメインで描かれていましたが、「ワールド」「アイスボーン」の時のように、今作「アセンダンス」ではどういった形で古龍がストーリーに絡んでくるのでしょうか?
藤岡氏:本編とはまた違ったアプローチになります。古龍という存在が何を引き起こし、禁足地や世界にどう影響を及ぼすのかというところが話の核になってくるのは間違いありません。
禁足地となっている「竜都」を含む東側の地域のフィールドのバックボーンや、「なぜこういう背景になっているのか」といった歴史的な部分もストーリーの中で語られます。そこにちゃんと古龍を絡めて物語を展開していく形になりますので、ぜひストーリーも楽しみにしていてください。
――最後にお聞きしたかったのですが、今回「コスモライト鉱石」が久しぶりに登場しましたよね。めちゃくちゃ感動したのですが、過去作との世界観の繋がりなどがあったりするのでしょうか?
平岡氏:あの短い時間で掘ったんですか?(笑)。一応、過去作とすごく深い設定上の繋がりがあるから意図的にそこに置いているというよりかは……実情を言うと、マスターランクの鉱石アイテムを考えたとき、「ちょっと高い場所のようなエリアで採れるアイテムにしよう」となりました。
その時に「新しく別の名前にするべきか?」といろいろ悩んだのですが、「いや、ここはやっぱりコスモライトがいいんじゃないか?」「昔からのシリーズファンが気づいて喜んでくれるんじゃないか?」という話になって、採用しました。
辻本氏:(笑)。あのデモ版で採掘する人がいるのはあまり想定していなかったので…。
平岡氏:ちゃんとデータ入れておいてよかった…。
――ありがとうございました。
(C)CAPCOM
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