「STRANGER THAN HEAVEN」大東の50年を描くストーリー、言語の壁を超える歌、洗練を捨てたアクション―集約されたこだわりの核心【TGS2026】開発陣が明かすゼロリセットの裏側と制作秘話インタビュー

東京ゲームショウ2026
0コメント げっしー

9月17日から21日まで千葉・幕張メッセで開催されている「東京ゲームショウ2026」。会場で行われた「STRANGER THAN HEAVEN」開発陣へのインタビューの模様をお届けする。

今回は、プロデューサーの阪本寛之氏、チーフディレクターの堀井亮佑氏、アートディレクターの加那屋大志氏へのインタビューを実施。これまでの「お約束」を捨てて挑んだ“50年を1本に凝縮する”開発舞台裏をはじめ、生々しさを追求したアクション、時代背景を彩る音楽や色彩表現へのこだわりなど、今作の根幹に迫るお話を伺った。

「STRANGER THAN HEAVEN」大東の50年を描くストーリー、言語の壁を超える歌、洗練を捨てたアクション―集約されたこだわりの核心【TGS2026】の画像
阪本寛之氏:「STRANGER THAN HEAVEN」プロデューサー
阪本寛之氏:「STRANGER THAN HEAVEN」プロデューサー
堀井亮佑氏:「STRANGER THAN HEAVEN」チーフディレクター
堀井亮佑氏:「STRANGER THAN HEAVEN」チーフディレクター
加那屋大志氏:「STRANGER THAN HEAVEN」アートディレクター
加那屋大志氏:「STRANGER THAN HEAVEN」アートディレクター

――3部作構想から「50年を1本に凝縮」する英断の舞台裏:横山氏から「3部作ではなく1本にまとめる」という決定があった際、プロデューサーとして開発ラインの構築やスケジュール、ボリュームの調整をどのようにハンドリングされたのでしょうか?

阪本:「STRANGER THAN HEAVEN」はかなり長いお話なんですよね。そもそも開発期間としても、従来のプロセスのようにお馴染みの要素を持ってくる形ではなく、最初の企画からプロットの構築に至るまで、隅々までゼロから作っていったという経緯があります。なので、かなり胆力が必要とされました。

ゲームシステムをイチから作るとなると、最初に思っていた通りにいかないことも当然出てきます。そこで色々と軌道修正をしたり、「ここは尖らせよう」「ここは諦めよう」という判断の連続で今に至る、という感じです。プロデュースとしてのハンドリングは、まさにその変化に愚直に付き合い続けてなんとかフィニッシュに持っていく、というところが全てだった気がしますね。

時代の切り分け自体は最初の企画段階から「今回はここを最大の魅力にしようと」と標準を定めて進めていました。スタジオのアウトプットのクオリティやスピード感を前提にしているからこそ実現できたという実感があります。何かバッファを作って、余力を残すようなことはせず、最初からギリギリまで切り詰めて、できる限りのことをこのタイトルに注ぎ込もうという緊張感のまま今に至っています。

――「ショービジネス」システムの採用とプロデュース視点での面白さ:単なるミニゲームにとどまらない「居場所のない男たちが成り上がっていく」ストーリー体験と結びつける上で、プロデューサーとしてどのような手応えを感じていますか?

阪本:ショービジネスという要素は、一つの歌や楽曲をたくさん用意して、それを上手くゲーム性に紐付けるという部分において、最後まで難航しました。作り方もそうですし「どういうデータを用意して組み込むか」という点も、何度もスクラップ&ビルドを繰り返して今に至っています。

ただ、BGMやテーマソングがリッチなゲームは世の中にたくさんありますけれど、それを題材にしてゲームに組み込むというアプローチは他にあまりない要素だと感じています。これが上手く実現できれば「STRANGER THAN HEAVEN」ならではの体験になるという強い期待があります。ゲーム中で使われている楽曲自体、ゲームミュージックの枠を飛び越えた非常にクオリティの高いものが揃っているので、ユーザーの皆さんにもすごく良い体験をしていただけると信じて作っています。

――長年シリーズを支えてきたからこその「ゼロリセット」の葛藤:今作ではこれまでの「お約束」だったプレイスポットなどを削ぎ落とし、作品に必要なものだけに厳選する「ゼロリセット」が行われています。この判断に迷いはなかったのでしょうか?

阪本:かつて「龍が如く7」でジャンルを丸ごとRPGに変えるという制作手法を取った経験があります。今回「STRANGER THAN HEAVEN」で大東という主人公の50年を描くストーリーを成立させるにあたって、これまでと同じものを流用しても絶対に相性が良くないというのは最初から分かっていました。

「このドラマを味わうのに一番ふさわしいゲームシステムは何か?」「プレイヤーが一番没入できて、クリアした後に最高の余韻を感じられる体験とは何か?」というところからスタートしているので、従来のシステムの上でお話だけ変えるというのは違うなと。

なので、これまでの要素を捨てることに対する迷いはなかったです。むしろ、上手くいかなかった時にどう機転を利かせるか、という部分に全力を注いでいました。

――「カッコよさ」を手放した生々しい喧嘩アクションと演出の融合:ディレクターとして演出・カメラワーク・操作感の調整で最も苦労された、あるいは「ここだけは譲らなかった」というポイントは何ですか?

堀井:今回のアクションは、プレイしていただいた方なら分かると思うのですが、左右のパンチやキックなど、泥臭い生々しさを重視しています。裏社会や格闘の中で人生を拾ったような男の戦いにおいて、いかにその感覚に没入できるかという手触りをすごく大事にして作ってきました。

最近のアクションゲームはレスポンスの良さや、ストレスフリーでワンボタンでカッコいい技が出るような機能が洗練されていますよね。これまでの「龍が如く」であればそういった利便性に寄せることもできたのですが、今作でそれをやってしまうとゲーム的な利便性と引き換えに生々しいリアル感が削がれ、作品の魅力が落ちてしまうんです。

ゴツゴツと殴った手応えや、「ちょっとモタついてヤバい!」という焦りみたいな感覚があった方が私たちの求める体験に近かった。とはいえ、単に不便なだけのものを提供するわけにはいかない。その「生っぽさ」と「現代的に洗練されたアクション」の間の絶妙なバランスをどう両立させるか、という調整にはすごくこだわりました。何度も手直しを重ねて、現在のTGS出展バージョンでかなり理想形に近づいたと思っています。

――「大東真」の半生と連動する劇中歌や楽曲演出:トレーラーでも「歌の才能を発掘されて…」というエピソードが示唆されていました。これまでのシリーズでも名曲を生み出してきた堀井さんから見て、主人公・大東の人生や感情に寄り添う「楽曲の役割」や演出の工夫について教えてください。

堀井:トレーラーでも大東が街で歌っているシーンがありますが、今作において「歌」は極めて重要な意味を持っています。大東自身、元々は母国語が英語で、いきなり日本にやってくるため最初は日本語が全く喋れない状態からスタートします。

時代的にも現代より偏見が強く、アウトサイダーとして非常に生きづらい環境の中にいるわけですが、そこで「歌」という言葉の壁を超える手段によって自分を表現していく。歌を通じて徐々に自分に自信がついたり、周囲に認められていく過程を描いています。

異邦人である彼が日本という地に馴染み、居場所を得ていくプロセスにおいて「歌」が最大の軸になっているので、劇中の楽曲はストーリーの感情移入を引っ張る非常に重要な役割を果たしています。

――今作ならではの「ショービジネス」と音楽体験の挑戦:現代的なカラオケなどを入れられない時代設定だからこそ、今作の目玉である「ショービジネス」や興行要素において、どのような音楽体験を構築されたのでしょうか?時代の熱気を伝えるステージ演出やサウンド面のこだわりを教えてください。

堀井:今作では小倉や呉など、すべての街で興行師(プロデューサー)としての立ち回りを体験できます。その中でサウンド面において強く意識したのは「その時代に実際に流れていた音楽の空気感」です。例えば「1970年代の新宿にならないとエレキギターは使わない」といったように、時代考証と音作りの基準はかなり意識しています。

時代ごとの変化や納得感を出すために、街並みやグラフィックだけでなく「音」も大きな役割を果たしています。私たちが平成の歌を聞くと当時の記憶が蘇るように、それぞれの時代背景を映す鏡として歌謡曲やジャズ、行進曲などを配置しました。

さらに、過去の時代で作った楽曲は、時代が進んでもずっと引き継いで使っていくことができます。ただし、昔流行った曲をそのまま後の時代に流してもウケが悪かったりするので、時代に合わせてアレンジを加えることで、過去の曲もずっと現役として活躍させられるような面白さを組み込んでいます。

――モノクロ資料からの「色彩」の立ち上げ:当時の写真は白黒がメインで実際の「色」の情報がありません。資料にない看板や衣装などの色彩を決定する際、どのようなロジックや想像力で色付け(彩色)していったのでしょうか?

加那屋:当時の写真はほとんどが白黒ですので、文献や取材資料を集めつつも、西洋画の絵画などには色の情報が残っていたので、それを参考に色彩を組み立てていきました。

ただ、今作の象徴的な「色使い」が生まれた背景にはちょっとしたエピソードがあります。開発中、横山と実機映像を確認していた時に、たまたまバグで画面全体が真っ緑色になってしまった瞬間があったんです。それを見た横山が「これ、なんだか面白いな!」と言い出して(笑)。「じゃあ、この色彩感覚をアートとして発展させてみようか」という話になり、そこから調整を重ねてできたのが現在の小倉などのカラー表現なんです。

阪本:単にフォトリアルを追求するのではなく、作品が持つ独特の空気感や演出としてのユニークなカラーを出す。大東という異質な主人公の存在感を際立たせる意味でも、思い切ってフィクションとしての色彩表現に舵を切りました。

――歴史の再現と「ゲームとしての嘘・映え」の調和:当時の実際の塗料や街の色を再現するだけでなく、現代のプレイヤーが画面を見たときに「映える」「没入できる」と感じさせるために施した色彩の補正やアート的な工夫はありますか?

加那屋:前述の絵画的なアプローチとも重なりますが、当時の写実的な風景を再現するだけでなく、「太陽の眩しさ」や「湿気感」のような感覚を視覚的にどう極端に強調するか、という点にチャレンジしました。

一見すると「ゲームの画面として見映えはどうなんだろう?」「眩しすぎるのではないか」と思われるような振り切った調整も、実際にゲームをプレイした時に「ここでしか味わえない空間に没入している」とプレイヤーが感じられるレベルまでコントロールして落とし込んでいます。

――主人公・大東の「50年間の容姿とビジュアルの変化」:年月を経る中での加齢表現や衣装のこだわり、大東の境遇の変化を「色や服」で演出した部分について教えてください。

加那屋:大東のビジュアルに関しては、完全にシナリオの展開と連動させています。若い頃のハツラツとした雰囲気から、ストーリー上で暗い展開を迎えた時は衣装のトーンを落としたり、生活が困窮している時期は少し痩せこけさせたりと、見た目から置かれた境遇が想像できるように変化させています。

個人としての細かいこだわりで言えば、ひたすら喧嘩をして生きている男なので「拳が綺麗なわけがない」と思い、拳の傷跡がどんどん増えていったり、ボロボロの服を着ていてもどこか男としてのカッコよさが漂うような佇まいに仕上げています。

――「これまでの作り方」を壊して一番刺激的(大変)だった瞬間:それぞれの立場から見て、「これまでの経験やお約束が通用せず、一番頭を抱えた(あるいはそれを乗り越えて化けた)」と感じる仕様やシーンはどこですか?

阪本:今回は最初から最後までずっと大変でしたね(笑)。安牌と思える部分がほぼないプロジェクトで、ゲームシステムも違えば、主人公の年齢や周りの環境も5つの時代や街ごとにゼロから作っています。「龍が如く」シリーズからのデザインリソースの流用もできません。

みんな新しいものを作ろうという積み重ねで進めてきたので、頭を抱えた瞬間は数え切れないほどあります。人間はどうしても慣れた方に寄り勝ちですが、そこに甘えると作品が濁ってしまうんですよね。

加那屋:ポーズメニューをはじめUIなども全部違いますからね(笑)。「20年の中でまだやっていない表現は何か」を探し出す作業が一番苦労したポイントでした。

阪本:長年続くシリーズであれば過去のフィードバックから最適解に向かいやすいのですが、完全新作でゼロから作る以上、別のゲームの最適解をそのまま持ってきても良くないですからね。ゼロから作ってスクラップ&ビルドを繰り返すしかないという結論に至りました。

――開発中、お互いの領域で「そこまでやるのか!」と驚いたこだわり:開発を進める中で、アート(グラフィック)、ディレクション(演出・仕様)、プロデュース(規模感)の面で、他のメンバーのこだわりや執念に驚かされたエピソードがあれば教えてください。

堀井:アートの力も含めて、周りのこだわりが本当にすごいなという印象でした。開発が進むにつれて全員が新しい表現に挑戦し、ある意味で「好き勝手」にやっていた部分もあります。ですが、だからこそ尖ったものや従来の想像を超える表現がたくさん生まれたと思っています。

これまでの「龍が如く」であれば「この手法ならこれくらいのクオリティになる」という計算のもとで作っていくのですが、今作はそれをあえて求めていませんでした。先が見えない中で挑戦したからこそ、サウンドのアプローチ、バトルシステム、演出、アート全体に至るまで、これまでの軸では絶対に生まれなかった要素が凝縮されていて、それこそが本作の最大の強みであり根幹だと感じています。

阪本:細かな部分で言うと、バトルで敵がダウンした時に攻撃ボタンを押すと、足でバンと踏みつけて挑発できるアクションがあるんです(笑)。あれは「そこまでやるの?」と思いましたね。

加那屋:私自身も知らない仕様がたくさん入っていて……本当に現場のこだわりを感じますね。

堀井:やり込んでいくと「これ別にいらないかも」「使わないよね」と後から削られがちな要素かもしれませんが、初手だからこその生々しい個性として上手く噛み合い、良い着地になっていると思います。

――TGSの熱気とファンへのメッセージ:TGSの会場でも多くのユーザーが試遊や発表に熱視線を送っています。この熱気を肌で感じながら、ファンや発売を心待ちにしているプレイヤーへお一人ずつメッセージをお願いします。

加那屋:私すら分からないレベルで、メンバーのこだわりや熱意が画面の端々にたくさん入っています。そういったところの熱量をプレイして感じていただけたら嬉しいです。

堀井:TGSでたくさんの方に試遊していただき、熱い反響をいただけて本当に新しく挑戦して良かったなと思っております。今回触っていただけたのは壮大な物語の本当に一部に過ぎません。ずっと熱量が続く作品になっていますので、ぜひご期待ください。

阪本:TGSの動画や試遊版以外にも、まだまだ実は要素があります。今まで見たもので全てだと思わず、発売日に向けて期待値をより高めていただけることを祈っています。

――ありがとうございました。

※画面は開発中のものです。

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