Gamer読者の皆さま、謎と恐怖と怪奇と疑念と復讐と殺意と怨念と情念と悔恨に満ちた世界へようこそ。連載企画「御簾納直彦ミステリィ 篝火ノ屋敷」がついに始まってしまいました……。

この連載では、オカルト大好きライター 御簾納直彦(31)が選りすぐった珠玉のゲームを紹介していきたいと思います。連載の名前が「御簾納直彦ミステリー 篝火の屋敷」で、オカルト大好きとか言っちゃってる時点で、取り上げていくタイトルがどのようなものかはもうお分かりでしょう。そう、ここで紹介していくのは、ホラーやミステリーを題材としたゲームです。誰もが知ってる有名なゲームはもちろん、あまり知られていないマイナーゲームまで、幅広く紹介していきたいと思います。どうぞお付き合いください。
さて、記念すべき第1回目は、1995年にバンプレストからスーパーファミコンで発売されたアドベンチャーゲーム「学校であった怖い話(以下、学怖)」を取り上げようと思います。本作は、ゲームファンであれば知らぬ者はいない名作「弟切草」や「かまいたちの夜」に代表される、“サウンドノベル”タイプの作品です。サウンドノベル系のゲームは、これまで星の数ほどリリースされてきましたし、私自身も数多くのサウンドノベルをプレイしてきましたが、その中でも「学怖」は特に強い想い入れを持っています。おそらく、私と同じ想いの方も多いのではないでしょうか。
シリーズ展開は、1996年3月の「晦」(学怖の姉妹作)、そして同年7月に発売された「学校であった怖い話S」で一端終息しますが、2008年には「七転び八転がり」(学怖のメインシナリオライターでもある飯島多紀哉氏の個人サークル)から発売された、「アパシー 学校であった怖い話~Visual Novel Version~」のヒットで再び大きな話題となりました。また、「学怖」と言えばファンサイトも多く、とにかくユーザーの熱量を感じさせるものが多かった。果たして、人はなぜそこまで「学怖」に魅了されるのか。本稿では、そんな「学怖」について紹介していきましょう。
新聞部に所属している主人公は、部長から、旧校舎が取り壊されるのを機に企画された「学校の七不思議の特集」の特集記事を任される。そのため、学校内でまことしやかに噂される「学校であった怖い話」を取材することになる。
取材当日、主人公は学校であった怖い話を聞くために呼び出された「7人」に会うため、新聞部部室に赴いた。ドアを開けると、主人公を見つめる12の目がそこにあった。12? なぜか部室には、6人しか集まっていなかったのだ。待てども待てども現れない7人目。そして学校であった怖い話は、未だ現れぬ7人目を待たずして始まった。
……ストーリーの導入はこんなところです。学校であった怖い話を披露する「6人」(厳密には6人以上)のことを、本作では「語り部」と呼んでいます。そして、この語り部の存在こそ本作最大の魅力であり、ファンの熱が冷めない理由の一つだと私は考えています。
どの語り部も個性に溢れており、皆、喪黒 福造にすら負けない怪しいオーラを放っています。そんな中でも、私が特に好きな語り部は、新堂誠と岩下明美。新堂は、ちょっぴりダーティな口調が魅力の頼れるお兄さん的なキャラクター。人の人生を大きく変えてしまう不思議な飴玉をくれるという謎の人物「飴玉ばあさん」の話や、旧校舎に存在すると言われる恐怖の鏡の話などが印象的でした。
一方の岩下は、黒髪のロングヘアーが綺麗な女性キャラクターなのですが、ある意味、もっとも危険な人物です。精神的に追い詰める語り口で、プレイヤーを圧迫。最悪の場合、主人公に危険が及ぶ時もあります。年上の女性らしい丁寧な口調が、余計に怖いです。しかしそんなミステリアスな部分こそが、岩下の魅力なのでしょう。
ゲームは、それぞれ語り部が用意している怖い話を一話ずつ、順番に披露していくというスタイルを取っています。シナリオは一話につき、だいたい15~30分くらいで終わるショートストーリーがほとんど。ちなみに話を聞く順番はプレイヤーが自由に決められます。また、同じキャラクターでも、何番目に選んだかによって話の内容が変わってくるのも大きな特徴と言えるでしょう。
また、怖い話は、旧校舎、教室、体育館、プール、トイレなど、学校の怪談を代表する有名な場所を舞台としており、初めて聞く話なのに、どこかで聞いたことがあるような親近感が持てるのも特徴です。語り部達の個性はもちろんですが、このバラエティかつ完成度の高いシナリオ群も「学怖」の人気を支える大きな要素なのです。
また先ほども少し触れましたが、学怖には、「晦」、「学校であった怖い話S」という関連タイトルも存在します。さらにインディーズでは、PC用タイトルとして数多くの作品が登場しています。これらはいずれ機会をもうけてちゃんと紹介したいと思いますので、ご期待を。なお「学怖」はWii向けバーチャルコンソールで配信中ですので、興味を持たれた方はぜひプレイしてみて下さい。