アークシステムワークスが2018年10月11日に配信予定の「The MISSING - J.J.マクフィールドと追憶島 -」。東京ゲームショウ2018のタイミングで、本作を手がけるゲームクリエイターSWERY氏にインタビューを行った。
「The MISSING - J.J.マクフィールドと追憶島 -」(以下、「The MISSING」)は、「Red Seeds Profile」などを手がけたゲームクリエイターSWERY氏とアークシステムワークスのタッグが贈るアクションアドベンチャーゲーム。主人公のJ.J.はあらゆる方法で負傷し、バラバラになった身体を利用してクリアを目指すという一風変わったシステムが特徴のゲームだ。
9月20日から23日にかけて開催された東京ゲームショウ2018にも本作は出展。これに合わせる形でSWERY氏にインタビューする機会が得られたので、その内容をお伝えする。
「The MISSING」では横スクロールに対する憧れを表現
――SWERYさんは「The MISSING」に、どういった形で携わっているのでしょうか。
SWERY氏:肩書としてはディレクターですけど、実際のところはほとんどすべてに関わっていると言っていいです。なにせWhite Owls(SWERY氏が2016年に立ち上げた新スタジオ)は事務職も含めて12人しかいないですから。
シナリオはもちろん、ゲーム内で出てくるテキストはすべて全部書いてますし、ステージのレベルデザインにも手を出しました。レベルデザインに関してはメインのゲームデザイナーがいるんですけど、そこに少しずつ意地悪な仕掛けを追加していって…。いつの間にかスタッフの間で「意地悪担当」と言われるようになりました(笑)。
――(笑)。ということは、歯応えのある難易度になっていそうですね。
SWERY氏:スタッフが当初考えていた設計だと、ユーザーさんの気持ち良さばかりが優先されていたんです。そうではなく、仕掛けを解いたときの開放感というか「やられたー!」と思ってもらえる仕掛けもないといけないですから。その一方で、指先のテクニックは必要としないように気を配りました。難しいアクションが要求されるのはほんの少しで、それも数回のチャレンジで超えられるように調整しています。そして謎自体も必ずヒントを用意して、どこかのタイミングで必ず解けるようになっています。
――そもそも、このゲームを横スクロールのアクションパズルにしようと考えたきっかけはなんだったのでしょう。
SWERY氏:横スクロールのアクションゲームというと、僕の子供時代にはたくさんありました。「プリンス・オブ・ペルシャ」や「アウターワールド」、「ミッキーのマジカルアドベンチャー」といった、アニメーションのきれいなアクションゲームに憧れがありました。だけど僕がクリエイターになったときには横スクロールは下火で、なかなか作るチャンスがなかったんです。それが近年になり、「LIMBO」や「INSIDE」が登場して、また脚光を浴びるようになり、僕にとってもチャンスが巡ってきたのです。
それと同時に「ゼロ・グラビティ」のようなワンカットで表現する作品への憧れが以前からあったんですけど、「メタルギアソリッド」や「ゴッド・オブ・ウォー」みたいなゲームを作る力はWhite Owlsにはありません。そんな思いを実現させてくれるのも、横スクロールでした。このジャンルならスタート時にロードを挟むだけで、シームレスにゲームが進行します。僕にとって「The MISSING」は、ひとつのカットで完結する物語を作っている感覚だったのです。
――横スクロールのゲームと言えば、最近のインディーズゲームでは特によく見受けられます。インディーズが盛り上がっていることも、SWERYさんにとって後押しになったのではないでしょうか。
SWERY氏:TGSでもインディーズコーナーができて、小規模なスタジオに注目が集まるようになったのは嬉しいですね。これまではコミックマーケットで手売りするくらいしかなかったのに、大手のメーカーとタッグを組んだり、独自に配信したりと可能性が増えましたよね。
――そういえば、「The MISSING」も配信専用ですよね。
SWERY氏:これは小規模なスタジオだからというより、ネタバレしたくないというのが一番の理由です。遊びたい方が皆さん同時にプレイできる環境にしたかった、だから今あるすべてのプラットフォームでリリースしますし、全世界同時配信にしたのです。
――アークシステムワークスさんとタッグを組んで、どんなメリットがありましたか?
SWERY氏:お互い様というか、アークさんは僕が得意ではない日本やアジアに多くのファンがいます。一方でアークさんはアメリカ法人を今年立ち上げたばかりで、そこに対して僕がリーチできる方々を紹介したり、地域ごとの強みを活かせる関係性だと思います。僕自身、ビックリするくらい日本で人気がないので本当に助かります(笑)。
――実際に東京ゲームショウにも出展して、日本での支持を獲得できそうな感触はありますか?
SWERY氏:ありますね。Twitterをやっていても、以前は3%ほどしかなかった日本人の閲覧が、最近は一気に増えました。また東京ゲームショウのステージでも、アークさんのファンの方々が見てくださって、少なくとも僕のことを知るきっかけにはなってくれたかなと期待しています。
――ちなみに、SWERYさんが東京ゲームショウへ本格的に出展するのは、かなり久しぶりのことだと思いますが…?
SWERY氏:言われてみれば確かに…。毎年来てはいるんですけど、ホテルニューオータニで取材を受けて終わったり、プレゼンや打ち合わせだけだったりで、一般デーに入ったのは15年ぶりくらいです。
――実際に一般デーの熱気を肌で感じての印象はいかがでしたか。
SWERY氏:昔に比べたらスマートフォンもあればVRもあって、様変わりしたと思います。それでも新作ゲームに列ができる姿はちょっと微笑ましいというか、コンシューマゲームを並んでまで遊びたい人がこれだけいるのはありがたいことですね。
――「The MISSING」というゲームについてもいろいろ聞きたいのですが、まずは登場人物の関係性から教えてもらえますか。
SWERY氏:主要な登場人物としては主人公のJ.J.と親友のエミリーが物語のキーになります。J.J.は芯の強い女の子で、エミリーはどちらかというと甘えん坊な性格です。2人は親友であると同時に依存関係でもあって、キャンプに行くとエミリーが行方不明になり、J.J.が探しに行くのがあらすじになります。
そして物語のキーになるのが、J.J.が持っているぬいぐるみのFKです。FKは物語の舞台である島に着いてから、なぜかチャットで会話したり、不思議な現象を見せるんです。イメージとしては「不思議の国のアリス」の白ウサギみたいな、主人公を誘導してくれる役回りですね。
――会話がスマートフォンのチャットで進行するのも面白いアイディアですよね。
SWERY氏:先程も話したとおり、本作はワンカットですべてを描くことを目標にしています。そうなると、会話シーンのためのカットチェンジもしたくない思いがありまして、スマートフォン上でのやり取りによって実現できたのです。チャットでの会話を書いてみたら意外と楽しくて、相手によってJ.J.の口調が変わったり、性格を素直に出せるんですよね。
――システム面では、J.J.が負う怪我がヒントになっているのも独創的だと思います。
SWERY氏:横スクロールのゲームを作ろうと決めたとき、まずはマップと設置物、敵から考えます。いわゆるレベルデザインですね。ただ、これだけでは既存のゲームと変わらないですから、もうひとつレイヤーを足したいと考えてて、行き着いたのがプレイヤー自身にギミックを施すことだったのです。
それと同時に考えたのが、「不死身の主人公はゲームのアイデンティティになるのでは」ということです。アニメや映画だと不死身のキャラクターは多くて、そこに独自性を見いだせません。一方でゲームだと、普通はゲームオーバーがあるので、不死身ってなかなかないと思うんです。この2つの発想が同時に生まれたことで、J.J.の怪我というシステムが誕生しました。ただ、アークさんにプレゼンしたときはドン引きされました(笑)。
――プレイヤーがどうやって怪我をさせるか、というのも攻略の上では重要ですよね。
SWERY氏:最初は痛々しいと思うかもしれませんが、途中から慣れてきて、いろいろな発想ができるようになると思います。プレイヤー自身が不死身の人間の考えを手に入れないと解けないゲームなので、僕はこれを「プレイヤーの不死身化」と呼んでいます。プレイヤーの考えも徐々に変わっていくのが面白いゲームなんですよね。
――ちなみに、全体のボリューム、クリアまでの想定時間はどれくらいになりますか?
SWERY氏:すべてのテキストを読む想定だと8時間程度です。もちろん仕掛けの中には難しいものも存在しますから、迷えばこれ以上の時間がかかりますし、逆にすべての答えを知っていればタイムアタックもできます。
――やり込みも想定したゲームデザインになっていると。
SWERY氏:ゲームの中にはドーナツが隠されていて、これを集めるのも楽しみのひとつです。全部で271個あって、集め切るには相当な時間がかかるのではないでしょうか。ゲームのことを調べ尽くさないとコンプリートは難しいので、2周目以降も新たな発見があるはずです。またドーナツを回収するとメッセージを完全にスキップしたり、移動が速くなったりといったチートも解放されていきます。1周目ですべてを集めようと考えず、少しずつ集めてもらいたいです。
――チート機能もあるとプレイの幅が広がりそうですね。
SWERY氏:特におすすめなのが、自由にキャラクターを傷つけられるチートです。普通はステージ上のギミックを使わないといけないところを、好きなタイミングで、好きなように傷つけられると。速くクリアする際に役立つと思いますし、ひょっとしたら僕が想定していないクリア方法も、ひょっとしたらあるかもしれないです。もし見つけたらTwitterでぜひ教えてほしいですね(笑)。
――「The MISSING」はWhite Owlsを設立して最初のタイトルになりますが、これまでの活動と新スタジオ設立後で、なにか変化はありましたか?
SWERY氏:新しいスタジオになったメリットはいろいろ感じていて、大きいのはメンバーが少ないから意思疎通がしやすくなったことです。会議の時間も圧倒的に短くなり、その分クリエイティブな活動に時間を割けるようになりました。だから今、めちゃくちゃゲーム作れてるし、「The MISSING」みたいなゲームも作れたんです。
――気が早い話ですが、「The MISSING」の後はどんな作品を世に送り出したいと考えていますか?
SWERY氏:White Owlsのスローガンは「大阪から世界中のあなたへ」です。今のスタジオは大阪にあって、ここから発信することにはこだわりを持っています。そして「世界中のあなたへ」というのもポイントで、僕やWhite Owlsが作るゲームを心待ちにしている人へ的確に届けることが大切です。まずは「The MISSING」を作りましたが、これにとらわれず、「こんなゲーム他の人は作らないよね」というものを作りたいです。
既存のゲームにとらわれないという意味では、アークさんの格闘ゲームにJ.J.を出してほしいとずっとお願いしてるんです。今のところ首を縦に振ってくれてないので、森P(アークシステムワークス・森利道氏)と飲みに行かないと(笑)。
――格闘ゲームへの参戦も楽しみにしています(笑)。本日はありがとうございました。
(C) White Owls Inc. / ARC SYSTEM WORKS
※画面は開発中のものです。
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