ユービーアイソフトが2019年4月25日に発売を予定しているPS4/Nintendo Switch/Xbox One用ソフト「スターリンク バトル・フォー・アトラス」のクリエイティブディレクター、ローラン・マルヴィル氏へのインタビューを紹介する。
「スターリンク バトル・フォー・アトラス」(以下「スターリンク」)は、パッケージに同梱されるフィギュアと連動するオープンワールドのアドベンチャーゲームだ。専用のアタッチメントに機体やパイロット、ウェポンといったフィギュアを装着させると、それがゲーム内に反映、自分だけのオリジナルシップで惑星を探索できる。
唯一無二の体験ができるだけでなく、Nintendo Switch版限定で「スターフォックス」とのコラボレーションが展開することも大きなトピックのひとつだ。日本でも馴染み深い「スターフォックス」のキャラクターや機体が登場するということで、本作に期待をかける人も多いだろう。
そして今回、「UBIDAY2018」に合わせて来日したトロントスタジオのクリエイティブディレクター、ローラン・マルヴィル氏にインタビューすることができた。ディテールにまでこだわりの詰まったフィギュアとアドベンチャーゲームとしての体験、「スターフォックス」とのコラボに至った経緯など、気になる質問をぶつけてみた。
――スターシップに乗ってのシューティングゲームというのは、ユービーアイソフトさんとしてもかなり珍しいジャンルだと思います。このジャンルに挑戦しようと考えた経緯から教えてもらえますか。
マルヴィル氏:すべての始まりは2013年、ユービーアイソフトから「面白い、ユニークなゲームがほしい」という指示があったんです。たったこれだけの指示ですけど、聞いたときは怖かったのを覚えています。そこからたくさんの方向性でプロトタイプのゲームを作って、その中のひとつが「スターリンク」でした。
「スターリンク」のプロトタイプというのは、レゴブロックとワイヤーで作ったものでした。本社でプレゼンしたときは、ブロックを組み替えたらすぐにゲームに反映させるところまで作っていたんですよ。
――プロトタイプの時点で形になっていたんですね。フィギュアとゲームが連動するアイディアがどこから生まれたのかも気になるところです。
マルヴィル氏:なにかを作り上げる感覚がゲームと一体となることで新しい体験になると考えたからです。なにかをビルドするだけでは、もはや新しい体験とはいえません。だけどそれがゲームの中にあるものまで作れるとしたら、それは新しいのではないか。これはプロジェクトの最初の段階から重要視していたことです。
――フィギュアの造形などにこだわりはあったのでしょうか。
マルヴィル氏:いっぱいあります! まずはディテール、細かいところまで作り上げていることです。見ただけでも楽しめるトイとして完成させることは絶対に必要だったのです。2つ目は丈夫であることです。見て楽しめるだけでなく、さまざまな組み合わせを試せることも大切です。でもその途中で壊れてしまってはいけませんからね。
3つ目はパーツの付け替えが簡単であること。ゲームのプレイ中は外れづらく、なおかつ付け替えたいときは簡単に外せなくてはゲームを快適にプレイできません。例えば翼に付けたウェポンだけを取り外したいとき、翼ごと取れてしまうことがないように設計しています。最後にもうひとつ、なるべく軽量化したこともこだわった点と言えます。ネジひとつ、部品ひとつに至るまで軽量化することを目指して作ったものです。
――ゲーム内に目を向けると、グラフィックはフォトリアルではなくアニメーション調になっていますが、この狙いは?
マルヴィル氏:スタッフの多くが80年代、90年代のアニメやコミックで育った影響が大きかったのだと思います。アートディレクターは「AKIRA」やスタジオジブリの作品が大好きだし、そういった日本のポップカルチャーに対する情熱が注ぎ込まれた結果ですね。
――影響という意味では、コラボレーションした「スターフォックス」に対する思い入れも強いのでは?
マルヴィル氏:もちろん「スターフォックス」も大好きです! 僕自身「スターフォックス」は人生で初めて遊んだ3Dのゲームで、僕を育ててくれた存在です。「スターフォックス」とのコラボレーションがどうやって実現したか、少しお話してもいいですか?
――もちろん! ぜひ聞かせてください。
マルヴィル氏:「スターリンク」を初めて発表したE3 2017のとき、関係者向けの部屋で一部の人だけにデモプレイを披露していたんです。その最中、任天堂のスタッフがプレイしに来るという話になって、もう…「Oh My God!」って(笑)。
――(笑)。
マルヴィル氏:それだけでも「なにが起こっているんだ!?」と思いましたよ。「ヤバい、どうしよう!」と緊張もしたんですけど、実際にプレイしてもらうととても反応が良くて、今度はプレゼンという形で任天堂さんに招待してもらったんです。2回、3回、4回とミーティングを重ねる中で、「スーパーマリオオデッセイ」や「マリオカート8」のメインスタッフにも参加していただいて。
――そうしているうちに、「スターフォックス」の話も出てきたと。
マルヴィル氏:京都の任天堂本社へプレゼンに行ったときに提案したんです。そのとき僕は3Dプリンターでアーウィン(「スターフォックス」の主人公・フォックスが搭乗する戦闘機)を作って行ったら、そこには宮本さん(宮本茂氏)をはじめ「スターフォックス」のスタッフがたくさんいて、本当に緊張しました。だけど同時にワクワクしながら、「スターリンク」と「スターフォックス」がどう融合できるかをプレゼンしました。コラボレーションのきっかけはその瞬間でしたね。
――ひとつ気になるのは、フォックスがどういった形で使えるようになるのかですが…。
マルヴィル氏:フォックス自体はパイロットのフィギュアを挿入すればいつでも使用できます。ゲームを初めてすぐに使えるだけでなく、すべてのミッションでも、そしてどのシップでも使うことが可能です。でも、もちろん「スターフォックス」限定のミッションも用意してあります。
――なるほど。では、ゲームの流れについても教えてもらえますか。
マルヴィル氏:ゲームの序盤ではすべてのアクションができるわけではなく、いろいろな制限がかかります。ただ、フィギュアに乗せるパイロットによって、さまざまなスキルを使用することが可能になります。シェイドというキャラクターだと、シップを透過して見えなくすることもできるんです。このゲームのポイントはインスタント、つまりフィギュアを装着するとすぐにゲーム内に反映されるところです。エンジンもちゃんと光るので見てもらいたいですね(笑)。
それと機体やウイング、ウェポンも自由に組み合わせることができます。アーウィンをそのままゲーム内で使うこともできますし、ウェポンを追加して戦うこともできます。別に綺麗にまとめる必要もなく、左右非対称でもゲーム内に反映されるんです。自分だけのドリームスターシップを作ってほしいです。
――どのウェポンを付けても操作方法は同じ?
マルヴィル氏:イエス! 右に付けたウェポンは右トリガー、左のウェポンは左トリガーを押すだけです。組み立てる際の柔軟性はこだわったポイントのひとつで、すべてのパーツが違ったスタッツを持っています。スピードが早くなったり、防御力が高くなったりするので、ぜひたくさんのパターンを試してほしいです。ただひとつ注意てほしいのが、敵によって弱点となる属性が違うことです。敵に合わせておすすめのウェポンを紹介してくれるので、それを参考にカスタマイズするのも楽しいと思います。
ちなみに…アーウィンはレーザーキャノンを持っていますが、これが使えるのはこの機体だけです。アーウィンに関してはあえてなにも付けずに戦ってみるのもいいかもしれません。
――惑星にいる敵や生物も個性的なデザインが多いですよね。
マルヴィル氏:そうですね。序盤に登場する敵は小さな生物がメインですけど、やがて巨大な生物も出てきます。また生物の中には3Dスキャンをして情報を得られる場合もあります。7つの惑星それぞれで違った個性を見せているので、3Dスキャンはぜひ活用してほしいシステムです。
――惑星は全部で7つあるという話ですが、ひとつひとつの規模感はどれくらいですか?
マルヴィル氏:純粋に直線で一周したら5、6分といったところでしょうか。マップを開くと惑星の行った箇所、行ってない箇所がひと目で分かるようになっていて、すべてを埋めようとするとかなりの時間がかかります。また探索できるポイントも数多く存在するので、ただ時間がかかるのではなく、プレイする皆さんに楽しんでもらえるように設計しています。
――「スターリンク」はトロントスタジオとしては初のオリジナルタイトルで、今後の展開にも期待が持てそうです。気が早い話ですが、これから先に向けた意気込みも聞かせてもらえますか。
マルヴィル氏:決してスタジオの代表ではないので大きなことは言えないですけど、「スターリンク」の出来には僕たち自身が非常に満足しているので、早くプレイしてもらいたいです。その上で、まだなにも発表してないですけどアイディアはいっぱいあります。次の展開にも乞うご期待ということで(笑)。