個性を突き詰める「洗練された“いびつさ”」とは?14年の時を経て踏襲&進化する「塊魂」素敵ソングの設計方針【CEDEC2026】

CEDEC 2026
0コメント 近藤智

7月22日~24日にかけて、パシフィコ横浜 ノースにて開催のゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2026」。本稿では24日に行われた「♪ NANAーNANANANANAーNAーNAーNA、塊魂ここにあり! 素敵ソングのつくりかた」のレポートをお届けする。

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「塊魂」とは、スティックを動かすシンプルな操作で塊を転がし、モノを巻き込んで大きくしていくアクションゲームシリーズだ。2004年に第1作目が発売されて以来、独特なゲーム性や世界観、豪華なBGMが高く評価されてきた。

2025年4月にApple Arcadeで「塊魂 Rolling LIVE」をリリースし、同年10月には14年ぶりとなるコンソール向け最新作「ワンス・アポン・ア・塊魂」を発売。2026年10月には「塊魂 Rolling LIVE」の一部課題や楽曲を「ワンス・アポン・ア・塊魂」でも楽しめるDLC「ローリングライブハイライツ」が発売される予定だ。

本セッションにはバンダイナムコスタジオの矢野義人氏、MIYAKEYUU STUDIOの三宅優氏、2nd STAR PRODUCTIONのShogo Nomura氏が登壇した。三宅氏は「塊魂」について知った際、新規企画だったためゲーム画面などは当然なく、テキストといくつかの画像のみの状態だったと振り返る。当時、日本では全く新しいゲームシステムが生まれにくいと言われていた中、今までにないゲーム性を前に「必ず面白くすることができる」と確信したという。

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現在も近い状況ではあるが、発売当時の24年前は新規IPが立ち上がりにくい時代だった。社内的にもサウンド面での貢献が問われていた中、10人のボーカリストを起用、インハウスの作家陣がゲーム用に一から楽曲を作る、どんな趣向の人でも好みに合うようバラエティ性をもたせる――この作家×歌い手×ジャンルの掛け合わせで、一定の効果が得られたと話す。

新作ではこれをキープしつつ、まだ実装できていなかった要素を入れることを考えた。「ワンス・アポン・ア・塊魂」では14アーティストを起用し、親子で遊ぶケースがあることから2~3世代が楽しめるような人選を心掛けた。一方、交渉に時間を要する海外アーティストはある段階で諦めたという。

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併せてインスト曲を拡充し、セレクト広場などゲームサウンドの演出要素を増加。一方、メイツのボイス、巻き込まれボイス、建物を巻き込んだ時の効果音、リザルトBGMの演出など、変えない方がいいと判断したものはそのまま実装。こうして踏襲と刷新を図った結果、ファンからは概ね好意的に受け止められたそうだ。

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続いて休憩代わりに、プレイヤーが楽しい気分になってほしいと思いながら実装したというサウンド演出を紹介。にぎやかなシーンではリズムが増えてベースやメロディの音量が上がる、王子シップのエレベーターで上下する際に曲が変わる、タイムアップでゲームオーバーになる際に曲をスクラッチさせると王様の喋りのようで面白そう、といった演出でプレイヤーを楽しませるための工夫を凝らしていることが明かされた。

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「塊魂 Rolling LIVE」は、バンダイナムコスタジオのみで担当することになり、当時のサウンドスタッフがほとんど残っていない状況だった。そのため、独特なサウンドの空気感をどう作ればいいのかが最初の課題となったそうだ。また、「塊魂 Rolling LIVE」は、「ワンス・アポン・ア・塊魂」へと続いていく一作にもなるため、初代から続く懐かしさを土台にしつつ、その先の新たな「塊魂」への橋渡し的な存在になる必要があったと語る。

そもそも「塊魂」の音楽とは何なのだろうか。1曲ごとに個性が際立ち、ジャンルも異なり、ゲーム音楽として果たして成立しているのかと開発者でも気になるほどの自由さがありながらも「塊魂の音楽」という共通理解がある。

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そこで、この自由さとは何かを紐解いていったという。1つは、タイトルに合わせてサウンド全体のトーンは揃えるものの、仕様の中で各クリエイターが個性をむき出しにしていること。もう1つは、担当したクリエイターの“好き”がそのまま音に出ていること。音色、楽器、コード進行、展開など個人のこだわりを突き詰めていった結果として生まれた曲は、整っているのにどこか歪に聞こえてしまう。ある種の違和感のような、引っ掛かるような忘れられないバランス感を、開発チームでは「洗練されたいびつさ」と呼んだ。

ポップミュージックのテンプレートをなぞるのではなく、大枠の方向性を持たせたうえで各自の“好き”を突き詰めた結果、こうした空気が生まれる。この作り方そのものが「塊魂」らしさだと認識を共有しながら、制作を進めていったという。

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こうして本作では「洗練されたいびつさ」、つまり仕様に寄り添いつつも、サウンドチームに在籍するメンバーの尖った個性をより前面に出していくことが決定。サウンドの設計を考えるにあたり、歌唱アーティストの選定を行う前にサウンドチーム全員の作家性を分析していった。「このアーティストにはこのジャンル」という固定観念にとらわれず、作家の個性とアーティストの魅力が最も噛み合う組み合わせを模索したという。

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セッション内では実際の楽曲とともに、具体的なディレクション例も紹介。まず作家性を分かりやすく前面に出すアプローチとして、過去シリーズの定石だった「明確なジャンル感のある音」を意図的に排除した。そして14年の間に音楽の聴取環境が激変したからこそ、一つひとつの音を確かな意図を持って選ぶことを徹底。作家それぞれの“好き”が最も輝くポイントを見極め、組み合わせる相手や使う音に丁寧に向き合う――それこそが、今作ならではのサウンドを生み出すポイントだったと総括する。

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「素敵ソングの深淵に迫る」というテーマでは、2曲をピックアップ。「ええじゃええじゃないか(こっちのけんと)」では、普段キャッチーで強いメロディの曲を歌っているアーティストであることから、盆踊りのような民謡的楽曲と好相性だと推測。そこで「ムカシニホン」のステージに合わせ、楽曲の方向性を「踊って憂いを吹き飛ばす令和版ええじゃないかダンス」と定めた。

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「彗星日和(塊魂 feat. suis from ヨルシカ)」のテーマは「宇宙スケールの圧倒的な愛!愛!愛!」とし、遠く離れた誰かとの再会を描いた。テーマのスケールがあまりにも巨大なため、歌詞や音色だけでなく音楽構造そのものからのアプローチを試みたという。そこで使われた技法が「繰り返される増4度、または減5度の転調」というもの。これらの要素を活用しながら圧倒的な距離感やスケール感を表現し、サビの後半の一節をピックアップしてピアノの実演を交えながら説明していった。

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素敵ソングを作るために必要なこと――それはクリエイターそれぞれの考え方は違っていても、20年以上変わらず愛のあるモノのづくりを継承していく姿勢そのものであると語られ、本セッションは幕を閉じた。

なお、各講演は8月4日(月)10時までタイムシフト配信での受講も可能だ。詳細は公式サイトで確認してほしい。

CEDEC2026公式サイト
https://cedec.cesa.or.jp/2026/

趣味のゲーム系をはじめ、IT/ビジネス系などWeb媒体を中心に活動。AAAタイトルから乙女ゲーム、インディーズまで何でも遊ぶ雑食ゲーマー。あらゆる次元のアイドルと映画も愛してます。 https://contacos.hatenadiary.jp/

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