幕張メッセにて9月17日から20日にかけて開催された「東京ゲームショウ2026」。「アストラエ・オラティオ」ブース内で実施した開発者インタビューの内容をお届けする。
インタビューでは、本作のゲームディレクターを務めるLim Jonggyu(イム・ジョンギュ)氏に、TGS2026で初公開となったゲームプレイについての詳細や、世界観のこだわりなど、本作の深い内容を聞くことができた。

開発のキッカケは“対戦格闘ゲーム”
――本作は「魔法」と「行政」という、全く異なる2つの要素がテーマとなっているのが興味深いポイントです。この2つを組み合わせることで、どのようなゲーム体験や世界観を表現したいと考えたのでしょうか。
イム氏:魔法は「決闘裁判」と呼ばれるバトル、行政は長期的に楽しめるコンテンツとして登場します。プレイヤーにはまずバトルを楽しんでもらい、その後に管理系のゲームシステムが特徴となる行政で、長期的に楽しんでもらいたいという狙いがあります。
――魔法と行政という要素は、本作の企画段階から存在していたのですか?
イム氏:一番初めは、対戦アクションをベースにゲームを作るというところから始まりました。そこからアートディレクターが、キャラクターの魅力を高めるために魔法を取り入れようと提案し、「魔法」というキーワードが生まれました。そして、シナリオディレクターがプレイヤーの役割を「公務員」として設定し、行政を行うという要素を加え、そこに新伝奇を組み合わせて、今のゲームの形になっています。
――3つ目のコア要素となる「行政」についてですが、具体的にはどのようなゲームプレイを楽しめるのでしょうか。
イム氏:行政に関しては、CBT以降の正式リリースのタイミングで楽しんでいただければと思います。一言で簡単には説明できない複雑なシステムとなっているのですが、CBTなどではその一端を体験できるようになっています。

――本作のゲームプレイはターン制バトルらしさがありつつも、短時間でアクションや次の一手を決めていくテンポの良さが印象的でした。このようなゲーム性は、どのような意図や狙いから生まれたものなのでしょうか。
イム氏:このゲームプレイのアイデアは、昔遊んでいた対戦格闘ゲームをスマホで再現したいというところからスタートしました。そこにキャラクター収集型RPGの要素を組み合わせて、戦略性を高めるためにラウンド制やAP(アクションポイント)などを取り入れたのです。
――対戦格闘ゲームが出発点になっていたというのはかなり驚きです。
イム氏:対戦格闘ゲームについては、ゲームプレイそのものはもちろん、その中のキャラクターも非常に人気があります。「ドラゴンボール」関連のタイトルや、「ギルティギア」シリーズ、「ストリートファイター」シリーズなどは、キャラクターそのものが大きな特徴となっています。こうしたことから、対戦格闘ゲームとキャラクターゲームは親和性が高いと思っています。
特に影響を受けた作品は「ストリートファイター2」と「鉄拳タッグトーナメント」です。

――ゲームの目指す方向性としては、格闘ゲームが近いということでしょうか?
イム氏:格闘ゲームそのものを再現しているわけではないのですが、目指している楽しさは同じようなものになっています。格闘ゲームはキャラクターゲームとしてもいいものだと感じているので、方向性としてはそういったところを目指しています。
――格闘ゲームの要素が強いと聞くと、プレイヤー同士の対戦も相性がいいように感じます。そういった要素はアイデアとしてあったりしますか?
イム氏:今のところ計画にそういったものは存在しないのですが、特定のイベントで限定実装したり、運営をしていく中でもしかしたら実装される可能性もあるかもしれません。

――格闘ゲームからかなり影響を受けているとのことですが、バトルシステムを制作するうえで特に重要視した要素はありますか?
イム氏:一番重要視したのは、スマホで100%楽しめるようにすることです。そのために、格闘ゲームの要素を一度すべて分解して、組み立てていきました。
――開発中に試行錯誤した部分や、当初のビルドから大きく変更された部分などはありますか?
イム氏:バトルのコアとなる仕組み自体は当初から変わっていません。しかし、情報をユーザーが理解しやすくするためのUI周りは、今も修正し続けています。
ちなみに、最初に作った時はボタンが8個もありました。でもこれは少し微妙だったので、減らしたりといったことはありました。

――本作は限られた時間の中で次の行動を判断することが重要になると感じました。プレイヤーにはどのような判断や駆け引きを楽しんでもらいたいと考えていますか。
イム氏:どうしたら効率よく相手と戦えるか、どのような判断をしたら効率を最大化できるのか、という部分を体験してもらいたいです。具体的には、敵の行動を見て、どのキャラクターを出すか、どのスキルを使うのか、どのタイミングで敵をブレイクさせるか、領地宣言をいつ使うのか、といった判断ですね。
――リアルタイム要素のあるターン制バトルということで、慣れていないユーザーにとっては難しく感じる部分もあると思います。遊びやすさの面では、どのような工夫をされていますか。
イム氏:究極的な解決方法として、オート機能も実装しました。あとはチュートリアルやUI・UX周りを改善して、直感的に遊べるようなものを目指しています。そういったサポート面を手厚くして、ユーザーが自ら判断してプレイできるようになるまで、学習できるようにしようと思っています。
こういった部分は我々も懸念している部分でもあるので、アイデア段階ですが、ワンボタンでプレイできる要素も導入しようかと検討しています。最近は「ストリートファイター6」でも初心者向けの操作方法があったので、それを参考にしています。

――本作を企画するうえで「これだけは絶対に実現したい」と考えていた要素はありますか。
イム氏:領地宣言をすると3Dのフィールドが変化する、この要素だけは絶対に入れたいと考えていました。バトルの中で空間自体が変化する要素を取り入れたゲーム自体は存在するのですが、本作ではその部分を本格的に表現したいと思っています。
――領地宣言についてはまだ情報があまり出ていませんが、具体的にはどういった要素なのでしょうか。
イム氏:ゲームプレイの観点から見ても、領地宣言は最後に体験できる要素となるので、今回のTGSで披露した試遊では体験することが難しいです。それでも、領地宣言のカッコよさは見せたかったので、部分的に体験できるようにしました。
――まだまだ表に出せない情報も多いと思いますが、ユーザーに向けて領地宣言を説明するなら、どのように解説しますか。
イム氏:設定上の領地宣言については、ゲーム上のストーリーで語られていきます。バトル内については、フィーバーシステムのような存在となっていて、クールタイムやAPがリセットされるなど、戦闘の効率が最大限引き出されるような仕組みとなっています。

――開発を進める中で特に苦労した部分や、実現するまでに時間がかかった部分はありますか。
イム氏:まさに領地宣言がとても苦労しました。それ以外だと、UI・UX周りで、現在も改善を重ねている最中です。
あとはスマホ向けのゲームですので、最適化など技術的な部分も工夫しています。
――イム氏が特に気に入っているゲームシステムはありますか。
イム氏:ゲームシステムに関しては、キャラクターのスイッチとコンボが意図したとおりに機能していて気に入っています。
――TGS2026は世界初となるプレイアブル出展の機会となっていますが、プレイしているユーザーの反応はどうでしたか。
イム氏:TGS期間中はインタビュー詰めで、ずっとブース内の部屋にいるのですが、合間を見て隙間から見ています。見るたびにたくさんの方たちが遊んでくれているのを見て、少しほっとしています(笑)。

ビジュアル面や音楽面でも'89年らしさを感じるものに
――本作のキャラクターたちは、どこか懐かしさを感じさせるデザインが印象的です。'89年という舞台設定も含めて、キャラクタービジュアルは当時の流行や文化などを取り入れたのでしょうか。
イム氏:当時のものをそのまま再現したわけではなく、当時流行っていて、なおかつ自分たちが好きだった作品の良さを取り入れ、新たに解釈したものをデザインに取り入れています。
例えば、キャラクターの大げさなアホ毛やシルエット、目の中の大きなハイライト、小物だったらカセットプレーヤーや昔ながらのブラウン管テレビなど、当時の流行や象徴的なものを部分的に取り入れています。

――カセットプレーヤーといった少し前の時代の製品が登場するとのことですが、本作の世界における科学技術の発展度合いは、具体的にどのような設定になっているのでしょうか。
イム氏:現実の'89年そのままを再現しているわけではなく、その時に良かったと思う要素を取り入れています。
――となると、一部には現代らしいアイテムも登場するということですか?
イム氏:PVの一部にはスマホもチラッと映っているのですが、ここで明かしてしまうとネタバレになってしまうので、ここで詳細を語るのは控えます(笑)。

――本作には個性的なキャラクターが多く登場します。特にキャラごとに使う武器が全く異なる点が面白いと思いました。キャラの個性をゲームに落とし込むうえで、意識したことはありますか。
イム氏:本作の開発においては、キャラクターを作る原画段階で、戦闘スタイルも一緒に決めています。見た目だけでなく、バトルの中でどう動くかも考えて設計しているため、ゲーム中はそのキャラクターらしい戦闘スタイルがきちんと再現されています。
武器に関しても、特定の種類に固定するのではなく、キャラクターごとの個性に合う武器や道具を選んでいます。
TGSのビルドにも、映写機やラムネ瓶で戦うキャラクターなど、バリエーションに富んだ武器を使うキャラクターたちが登場しています。
――イム氏は先日のメディアセッションで、百杏が一番好きなキャラクターだと仰っていましたね。
イム氏:百杏は、今公開されている部分だけでなく、公開されていない部分のギャップが非常に魅力的なんです。ぜひリリース後を楽しみにしていてください。


――本作のキービジュアルなどでは東京タワーが象徴的な描かれ方をしているように感じます。東京タワーを本作の象徴的な存在として描いている意図を教えてください。
イム氏:新伝奇といえば東京、東京といえば東京タワーだからです。実際に現地の取材にも行ってみて、より象徴的に描きたいという思いが強くなりました。
「カードキャプターさくら」でも登場したことが印象的で、私が外国人だからかもしれませんが、東京を象徴するものといったら、やはり東京タワーが思い浮かびます。
また、本作では東京タワーの“塔”という部分がゲーム内でも重要なキーワードとして登場します。物語に深く関わる要素ですので、ぜひ楽しみにしていてください。
――世界観のこだわりやディティール面で、プレイヤーに注目してほしい部分を教えてください。
イム氏:主人公の卓上にある一つ一つの小物であったり、東京タワーが映る背景、そして裏世界に入ったときの背景などは特にこだわっています。背景アートチームが情熱を注いで制作しているので、よく目を凝らすとさまざまな発見があると思います。ぜひ注目してみてください。

――本作のBGMは、当時らしい曲の雰囲気やジャンルなどを意識しているのでしょうか。
イム氏:シティポップや当時流行ったジャンル、CMなどで使われていた音楽などは意識しています。
開発のメンバーの中にもそういったジャンルが好きな人は多いので、昔からアイデア自体は存在しました。本作はまさにぴったりな世界観ですので、音楽もかなり作り込んでいます。
あとはサラウンドなどの音響づくりもこだわっているので、ぜひ注目してください。

――本作はどういったプレイヤーに楽しんでもらえる作品だと考えていますか。
イム氏:物語とキャラクターに興味があって、その中でも戦闘重視のゲームプレイが好きな人はきっと楽しんでいただけるはずです。
あとは可愛いキャラクターがたくさんいるので、少しでも気になったらぜひプレイしてみてください(笑)。そして楽しいと感じていただけたら、さらに広がっていく本作を体験してほしいです。
――最後に気になっているユーザーに向けてメッセージをお願いします。
イム氏:早く皆様に本作をお届けできるように、頑張って制作しています。TGSからCBT、そしてリリース後も興味を持ってもらえるようなゲームを目指していますので、ぜひご期待ください。

対戦格闘ゲームの面白さをベースにした独自のバトルと、魔法・行政・新伝奇の要素を盛り込んだ世界観が魅力の「アストラエ・オラティオ」。一見すると異色にも思える要素の数々だが、それぞれがバトル、ストーリー、長期的なゲームプレイへとつながり、独自のゲーム体験を生み出している。
東京ゲームショウ2026の試遊では、その一端となるストーリーとバトルを体験することができたが、まだ「行政」や「領地宣言」をはじめ、明かされていない要素も多い。イム氏が語ったように、今後のCBTや正式リリースに向けてどのようにゲームが広がっていくのか、今後の続報にも注目したい。
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※画面は開発中のものです。
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