2022年1月21日よりSteamで配信中の「Expeditions: Rome」。共和制時代のローマを舞台に、プレイヤーが父を殺した政敵を討つための戦いに身を投じるストラテジーゲームだ。本稿では、本作を最後まで遊んだうえでのレビューをお届けしよう。

目次
  1. ローマの軍団長として、共和国を栄光に導く
  2. 親衛隊と軍団を指揮して各地を探索するストラテジーパート
  3. 団員たちを直接指揮して戦うシミュレーションパート
  4. 重大な決断を積み重ね、ローマの歴史を作っていく

ローマの軍団長として、共和国を栄光に導く

本作の舞台は紀元前1世紀ごろ。主人公(プレイヤー)はローマ共和国の軍団長となって各地の征服戦争に出向きつつ、かつて政争によって殺された父の敵を討つため、当時の関係者を探っていく。

序盤の展開なので言ってしまうが、プレイヤーが軍団に入って早々、カエサルが戦死してしまう。カエサルはローマの領土拡大に貢献した軍人で、晩年には“終身独裁官”という最高権力を持つ役職につき、ローマを意のままに操った政治家でもある。“来た、見た、勝った”、“賽は投げられた”は彼の言葉で、彼の名前はドイツ語で言う皇帝の語源にもなった。

カエサルこと、ガイウス・ユリウス・カエサル。
短い付き合いだが、選択肢によってはプレイヤーと親友のような関係になる。

小アジア、アフリカ、ガリアといった地域が本作には登場するが、これらはみなカエサルが出向いた土地でもある。つまり、本作はカエサルの辿った道をプレイヤーが追体験をするという側面もある。

とはいえ、カエサルの道をそのまま辿るかどうかはプレイヤー次第だ。本作には膨大な数の選択肢が存在し、どれもプレイヤーが好きに選べる。征服した土地の頭領を殺すか、奴隷にするか。敵対している両者のうちのどちらを処断するか。和平を申し込んでくる相手を信用するのか。大小の異なるさまざまな選択が物語を分岐させ、やがてプレイヤー自身とローマの未来を決める。

“レトリカル・スタイル”も、その選択に大きく影響する。相手を説得する際の話術を指し、“エートス”、“ロゴス”、“パトス”の3種がある。ゲーム開始直後にプレイヤーが自身のアバターを作成する際、いっしょに選ぶことになるものだ。自分の権威や権力を利用して自身の主張を押し通すのがエートス。ロゴスは論理的な主張を武器にするタイプで、パトスは刺激的な言動で人心を掌握するという特性を持つ。

なかには、該当するレトリカル・スタイルがなければ選べない選択肢もある。エンディングまで遊んだ限りでは、そうした特別な選択は数こそ少ないが、その分物語の行方を大きく左右するものもあった。条件は不明だが、物語の進め方によってはふたつ目のレトリカル・スタイルも入手できるようなので、セーブデータを分けてストーリーの分岐を調べたい人などは狙ってみるといいかもしれない。

本作には主人公を守るための親衛隊がいるのだが、彼らの忠誠心はプレイヤーの選択によって変化するのも悩ましい。プレイヤーの選択肢によっては、メンバーの忠誠度が上がったり下がったりする。あまりに忠誠度が下がった隊員は部隊から離脱してしまうが、後述する自身の拠点で風呂に入れれば、ある程度は忠誠心を回復させられる。とはいえ、クリアするまでの45時間、隊員が離脱することはなかったので、忠誠心はあまり気にする必要はないかもしれない。なお、ストーリー上で仲間になる親衛隊員は絶対に離脱しないので、そこは安心だ。

本作では主人公は戦場とローマを行き来するのだが、それぞれで物語性が大きく異なる点も特徴だ。血なまぐさい戦場と異なり、ローマ市内では政治・外交の話が進んでいく。自分に不利にならないような答弁しろと言われたり、政敵の罪を追求するために必要な証拠の有無やその有効性について話し合ったり、話の内容がそのまま現代にも通用しそうな点には大いに驚いた。

ゲームである以上、多少なりとも脚色はしているだろうが、当時のローマ共和国には弁護士や議員がすでにいたわけで、こうした光景には説得力がある。議員たちが元老院に集まって議論するシーンは、現代の裁判を傍聴しているかのようだった。

一方で、肝心の翻訳がつたないのは惜しいところ。現状、45時間遊んで気になったのはここだった。典型的な直訳風で、キャラクター同士の会話がまるで公文書の書面のように回りくどい。本作のストーリーには外交・政治の要素が多く、一言一句の意味や文脈をしっかり理解することが重要になる。キャラクターによっては口調も統一されていなかった。ストーリーや戦闘の完成度が高いだけに、かえって翻訳の粗が目立ってしまっているようにも感じた。

親衛隊と軍団を指揮して各地を探索するストラテジーパート

物語の目的のひとつは、世界各地の平定だ。プレイヤーは司令官として自身の軍団を指揮し、どの土地をどのように占領していくかを決める。

軍団には“糧食”と“水分”があり、移動、あるいは時間経過とともに徐々に減っていく。底をつくとメンバーに悪影響を及ぼし、糧食がなくなれば最大HPが半分に、水分がなくなると移動力が下がる。とくに水分は重要で、放っておくと親衛隊の誰かが死んでしまう。それが主要人物であれば即ゲームオーバーになるので、残量には気を配りたい。幸い、自軍の拠点に立ち寄るだけで補充されるため、水分不足になることはほぼないだろう。

糧食は商人から買うか、各地にある“軍団ミッション”や“狩り場”を利用して手に入れる。商人から買うのは楽だがお金がかかるので、軍団ミッションと狩り場を使うのがオススメだ。こちらも忘れず活用すれば、水分と同様不足することはまずない。

各地にはさまざまな施設があり、軍団が占領した場所からは資材が手に入る。採石場、農場など種類があり、それぞれで入手可能な資材も異なる。これらは自軍の拠点のアップグレードに必要なので、施設は可能な限り攻め落としていこう。

各地を巡っているとサブクエストが発生することも。
物語に影響を及ぼしたり、報酬をもらえることもあるので、なるべくこなしたい。

小さな拠点であれば派遣した軍団が勝手に攻め落としてくれるが、規模が大きい場合は、個別で戦闘が発生する。とはいえ、実際の戦闘は軍団がこなしてくれるので、プレイヤーは要請があったときだけ戦い方を指示し、それが以外のときは眺めているだけでいい。スキップすることもできるため、テンポも良好だ。

団員たちを直接指揮して戦うシミュレーションパート

敵軍がいた拠点を占領すると、つぎに各地の残存部隊を倒すクエストが発生。このクエストを達成すれば、該当する地域は平定され、ローマの勢力圏になる。

軍団同士の大規模な戦闘とは打って変わり、こちらのクエストでは自分を含めた最大6人ほどの隊員を指揮して戦う。フィールドは“へクス”というマスに区切られているほか、バトルシステムはこちらと敵が交互に動くターン制になっている。

とくに重要なのは“アクションポイント”。攻撃スキルを使う際に必要で、基本的に1ターンにつき1度しか使えない。さらに、攻撃だけでなく移動にも割くことができる。キャラクターが移動できるマスの数は“移動力”によって決まるが、アクションポイントを使えば移動力をリセットし、もう一度動ける。敵の攻撃範囲から逃れたり、味方と合流する際にはとくに役立つ。ただし、アクションポイントを消費するわけだから、当然そのターンは攻撃できない。攻撃か移動か、どちらに使うかが重要だ。

なかには“未訓練”というステータスを持った敵もおり、倒すとこちらのアクションポイントが回復する。要は倒した分だけ再行動できるので、未訓練の敵は積極的に倒すのがオススメ。ただし、各種攻撃スキルにはクールダウンがあり、1ターンにつき1回しか使えないものがほとんどという点も注意したい。アクションポイントを手に入れたところで、肝心の攻撃スキルが使えなければ意味がない。無駄にならないよう、仲間のスキルの状況は忘れず確認しておこう。

ほかにも、“チャンスアタック”は非常に重要な要素となる。隣接するマスを味方や敵が通ると発生する、カウンターのような攻撃だ。移動力は攻撃後も残るため、まだ動けるならその場から離脱することもできる。つまり誰もが一撃離脱をできるわけだが、このチャンスアタックがあるために反撃を受けるリスクがある。敵の密集する地帯を抜けようとしたら袋叩きにされて戦闘不能、という事態は本作ではよくあるので、2マス以上離れた場所から攻撃したり、あるいは一撃で倒せるような状況を作ってから近づくなど、なにかしらの対処が必須となる。

HPがゼロになった仲間は倒れ、出血状態になる。
放置していると死んでしまうので、その前に“エイド”などのスキルで回復させよう。

剣や短剣、杖など、本作にはキャラクターの兵科によって使えるさまざまな武器があるが、なかでも弓は非常に強い。弓兵限定の装備だが、射程が非常に長く、命中率は基本100%。厄介なチャンスアタックも無視して一方的に敵を攻撃できる。対象が遠いほど攻撃力は下がってしまうが、高所から低地に向かって使うことで精度が上がり、ダメージの減少を防ぐことができる。スキルによっては、継続してダメージを与える毒や炎上といった状態異常が付くタイプもあり、非常に強力だ。筆者の場合、ほとんどの戦闘で弓兵をふたり以上連れていった。

だが、弓兵はチャンスアタックが使えず、さらに攻撃は盾によって弾かれる。弓兵の強みは、盾を持たない敵の相手や、高所からの攻撃であり、長所と短所がしっかり用意されている。味方の強化や敵の弱体化が可能な支援兵、多彩な攻撃スキルで敵を攻撃する軽装兵といった、弓兵以外の兵科も強みが際立っていて、足手まといになるメンバーは最後までいなかった。

たいまつや投げ槍の“ピルム”など、一部の装備は“タクティカル”に分類される。
タクティカルを使ってもアクションポイントは消費しないため、
通常の攻撃とこのタクティカルをどう併用するかも重要になる。

個人的な印象では、本作のシミュレーションパートは最初から最後まで難しい。戦力が充実していく中盤以降は安定したが、物語の序盤はかなり厳しく、何度かやり直すことも多かった。ちなみに、メニュー画面の“難易度”でいつでも難しさを調整できるので、必要に応じて適宜変えていくといいだろう。

重大な決断を積み重ね、ローマの歴史を作っていく

“ルビコン川を渡る”という故事成語は、後戻りのできない重大な決断をするときなどに使われる。ルビコン川はイタリアの北に流れる小さな川で、歴史上、カエサルは配下の1個軍団を連れてここを渡った。軍団を連れてローマに入ることは当時重罪だったので、決断の重さがうかがえる。現在で使われているルビコン川の意味は、それになぞらえてのことだろう。

物語後半のガリア編。融和のためにと相手を懸命に信じてきた筆者だが、その善意はことごとく踏みにじられた。

冒頭でも書いたように、本作のストーリー中には膨大な数の選択肢が現れる。解放してやった敵が悪事を重ねたり、プレイヤーの厚意が味方を追い詰めたり、目的のために誰かを犠牲にしたりと、そのほとんどは必ず代償がともなう。ルビコン川を渡るほどのことではないかもしれないが、プレイヤーにのしかかる責任は相当のものだ。ちなみに、エンディングに到達した時点で、筆者はストーリーの主要なキャラクターをふたり失った。

最初から最後まで重い決断を求められるわけだが、だからこそ、個人的にはセーブデータを遡ってのやり直しなどはオススメしない。先が分からない状態で選んだ選択肢のほうが信頼できるし、なにより作品に感情移入しやすい。本作を始めた直後には、手動セーブ禁止(オートセーブのみ)になる“鉄人”というモードを選べるので、物語をより楽しむならこちらを利用してもいいかもしれない。

ちなみに、選択肢によっては本当に“ルビコン川を渡る”こともできる。カエサルになりきってローマの行く末を再現するのか、それともプレイヤーの手で新しいローマを作るのか。その決断もまた、本作の魅力だろう。

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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