近未来の火星を舞台にしたSFスリラー「フォートソリス」のPS5版が、本日9月7日に発売される。いったいどのようなゲームになっているのか、気になる内容を紹介していこう。
本作「フォートソリス」は、三人称視点で展開されるホラーアドベンチャーだ。舞台となるのは西暦2080年の火星。鉱山技師のジャックとジェシカが、鉱山基地フォート・ソリスからの警報を受信するところから物語は始まる。警報は手動で発せられたものだが、フォート・ソリスに連絡を入れても応答はない。ジャックは調査のため、巨大な嵐が迫りくる中、単身フォート・ソリスに向かうことになる。
閉鎖空間を舞台に緊迫感のあるストーリーが展開
フォート・ソリス内では、ジャックを操作して基地内を移動。画面に表示される目標地点に向かい、通路のドアを開けたり端末を操作したりして、基地内に残されたさまざまな手掛かりやゲームを進めるためのキーアイテムなどを入手していく。腕の端末に表示されるマップで現在地、次にすべきこと、向かうべき場所などを確認することが可能になっており、詰まったりすることはほとんどない。アクションの要素もわずかで、極めてシンプルなストーリードリブンのアドベンチャーゲームと言えよう。
注意すべきは要所で発生するQTEで、入力に失敗するとジャックが痛い目を見たり攻撃をかわされたりと展開が多少変化する。何の前触れもなく唐突に発生することがあり、入力時間がかなり短いものもあるため、すべて一発で成功させるのはかなり難しいだろう。ただ、QTEによってストーリー自体が大きく変化するわけではない。失敗による影響はほとんどないため、成否による主人公のリアクションの違いを楽しめばいい。
ゲームは5つのチャプターで構成されていて、すべてのシーンがシームレスで進行。ゲームオーバーはなく、どのように進めていっても必ずエンディングに到達できる。ボリュームもコンパクトで、初心者でも4~5時間くらいでクリアできるはず。全5話の海外ドラマを見る感覚で気軽に楽しめるだろう。
とはいえ、フォート・ソリス内にはピリピリとした緊張感が漂う。基地には隊員の家族の写真や暇つぶし用のアイテムなど、つい最近まで人々が生活していたことを感じさせるものがいくつも残されているのだが、なぜか人の気配はまったくない。まるで隊員たちだけが消失してしまったような状態になっているのだ。
さらに調査を進めていくと、血の付いた作業着や血痕が見つかるなど、どんどん不穏さが増していく。しかも、フォート・ソリスは嵐によって周囲と隔絶されていて、いわば巨大な閉鎖空間となっているのだ。この先には何が潜んでいるのか……緊迫感の中を手探りで進んでいくスリルは格別で、深まる謎に好奇心が刺激されると同時にコントローラーを握る手にジワリと汗が滲むことだろう。
一方で、こうした緊張を緩和してくれる仕掛けも用意されている。それが各所に挟まれるジャックとジェシカの通信でのやり取りだ。互いにジョークを飛ばし合ったり、憎まれ口を叩いたりするので、緊迫した状況ながら思わずクスっとしてしまう。こうした主人公コンビの軽妙な会話がいい意味でのスパイスになっており、同時にふたりの個性をうかがい知ることができる。
しかし、ゲーム後半では、とある事件が起きてふたりの会話は失われてしまう。一気に孤独感が増すわけで、こうした演出もサスペンス性を高めるのに一役買っている。
集めた証拠から浮き彫りになっていく事件の様相
ストーリーテリングの手法も面白いと感じた要素のひとつだ。本作では登場人物が直接真相を語ったりする場面はほとんどなく、さまざまな場所に残されているテキスト、音声、映像記録などを集めることによって、フォート・ソリスで起きた出来事が浮き彫りになるという仕組みになっている。
つまり、入手した手掛かりの数や種類によって、事件の様相が異なって見える場合があるのだ。実際、筆者は1回目のプレイはクリア優先でしっかり探索しなかったため、かなり隅々まで探索した2回目のプレイの後、基地内で起きた出来事について少し見方が変わった。真相をより深く知るには、ひとつでも多くの手掛かりを入手する必要があるわけで、なかなか上手い仕掛けと言えるだろう。
フォート・ソリス内の描写をはじめとするビジュアルのクオリティも非常に高い。荒涼とした火星の地表、SF感あふれる基地内の構造、通信機器や情報端末などの未来的なガジェットの数々……いずれも古今の名作SF映画を彷彿とさせるもので、この手の作品が好きな人にはたまらないだろう。
また、キャラクターたちの仕草や表情の動きもかなりリアル。声の演技も実にしっかりしていて、英語はほとんど聞き取れないという人でも声優陣の上手さを実感できるはず。こうしたキャラクターの描写の数々も物語のリアリティを高めているのだ。
難点もいくつかあるがポテンシャルは高い
このように評価すべき点の多い本作だが、改善してほしい部分もいくつかあった。最大の難点と思われるのがキャラクターの移動の遅さだ。フォート・ソリスはかなり広大で、長い距離を移動しなければならない場面が多く、なかなか目的地に着かないことから「走らせてくれ!」と何度も思わされた。
確かに、動きにくい宇宙服を着てダッシュし続けたりするのは、本作のような作品ではリアリティに欠ける。歩行中心の移動になるのは理解できるのだが、たとえば基地を出て地表を移動する場面では簡易な乗り物を利用可能にするなど、もう少し配慮が欲しかったところだ。
ストーリーを進めたりイベントが発生したりするとオートセーブされてしまい、直前からプレイし直すことができないのも残念だった。1回のプレイがさほど長くはないとはいえ、せめて各章の頭から再開できるようにしておいてほしかったと思う。
難点もいろいろある本作だが、それでも筆者は「フォートソリス」のストーリーや世界観にかなり引き込まれた。さまざまな物語の断片を集めることで全体像が見えてくるというストーリー構造はゲームならではのもので、そこにはジワジワと恐怖感が迫ってくるような他のホラーゲームとはひと味違った感覚があった。願わくば本作のストーリーやシステムをベースに、さらにボリュームアップしたバージョンをプレイしてみたい、そう思わせてくれる秀作である。
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